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【書籍】王貞治監督のもとで磨かれたプロ精神: 小久保裕紀のキャリア変革

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)のp203「6月18日:王貞治監督から学んだプロのあり方
(小久保裕紀 元福岡ソフトバンクホークス選手)」を取り上げたいと思います。

 小久保氏が語る王監督との出会いは、彼のプロ野球選手としてのキャリアにおいて、非常に重要な転機となりました。小久保氏は、プロでの成功の最大の要因は、まさに王貞治監督との出会いにあるとのことを語っています。彼がプロの世界に足を踏み入れた二年目に、王監督がダイエーホークス(当時)の指揮官に就任し、それ以降15年間にわたり、王監督のもとでプレーした経験は、小久保氏にとって計り知れない価値があったといえるでしょう。

 王監督から学んだ数々の教えの中でも、「楽をするな」という一見シンプルながらも深いメッセージは、小久保氏の心に強く残っています。練習では、一般的にはセンター返しを基本としている中、王監督は常にその枠を超えることを求め、「ボールを遠くに飛ばせ」という指示のもと、体を120%使い切ることを強調しました。これは、試合で100%の力を出し切るためには、練習からその限界を超えることが必要であるという、王監督の哲学を示しています。

 また、小久保氏の記憶に深く刻まれているのは、1996年5月の日生球場での出来事です。チームが連敗を重ねた末に、怒ったファンが選手たちの乗るバスに卵を投げつけたという、非常に厳しい状況でした。この時、王監督は動じることなく、その場に立ち向かいました。そして、チームミーティングで「真のファンはそうやって怒ってくれる。我々の仕事はそうした人々を喜ばせることにある」と選手たちに語りかけ、プロフェッショナルとしての姿勢を改めて強調しました。
 このエピソードからも、王監督がただの野球の名選手・名監督であるだけでなく、どんな状況でもブレることのない強靭な精神力と、選手たちを導くための深い洞察力を持っていたことが伺えます。小久保氏が、このような状況でも責任を逃れず、ファンの怒りを真摯に受け止める王監督の姿勢から学び、大きな影響を受けたのは自然なことかもしれません。

 小久保氏は、王監督から受け継いだ価値観と教えを、自身のプロとしての生き方に活かしてきました。王監督のもとでの経験は、彼にとって単なる野球の技術を超えた、人生を豊かにする哲学を提供してくれたと言えるでしょう。このような師弟関係は、スポーツの世界だけでなく、あらゆる分野でその価値が認められるべきものであり、小久保氏の言葉からは、王監督への深い尊敬と感謝の念が伝わってきます。

僕はまだ人間が小さいですから 「あんなやつらに」とついつい思っていたのですが、それだけに絶対に言い訳をしようとしない監督の姿には学ばされました。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)p203

人事としてどう考えるか

 小久保が王貞治監督から学んだプロのあり方は、スポーツの世界を超えてビジネス、人事の分野においても貴重な教訓を提供します。王監督のリーダーシップ、厳しい練習への取り組み、チームワークとファンへの姿勢は、労働者の育成、モチベーションの維持、そして組織全体の成長への道を照らします。

リーダーシップとその影響力

 王監督が示した冷静さと揺るぎない姿勢は、リーダーが直面する挑戦に対する理想的な対応を示しています。ビジネスの世界においても、リーダーは絶えず変化する環境、時には予期せぬ危機に対処しなければなりません。ここでの教訓は、リーダーが持つべき精神的な強さと、チームを安定させ、方向性を示す能力の重要性です。人事の観点からは、このようなリーダーシップスキルを持った人材を育成し、適切なポジションに配置することが組織の成功に不可欠です。

厳しい練習と個人の成長

 「練習の時に楽をするな」という王監督の教えは、ビジネスにおいても、日々の業務に全力を尽くすことの重要性を物語っています。人事管理においては、従業員がスキルと能力を最大限に発揮できるように、適切なトレーニングと継続的な学習の機会を提供することが求められます。また、個人の成長を支援することで、従業員が自己実現を達成し、組織に対してより大きな価値を提供できるようになります。

チームワークの促進

 王監督の下での経験から学ぶチームワークの価値は、ビジネス環境においても同様に重要です。チームとして一丸となり、共通の目標に向かって努力することで、個々の能力を超えた成果を達成することができます。人事管理では、チームビルディングの活動やプロジェクトを通じて、従業員間の協力と相互理解を促進することが重要です。また、多様性を尊重し、異なるバックグラウンドを持つ人々が互いの強みを活かせるような環境を作ることも、チームワークを促進する上で欠かせません。

顧客満足度の向上

 「ああいうふうに怒ってくれるのが本当のファンだ」という王監督の言葉は、顧客の不満や批判を改善の機会として捉えるべきだと教えてくれます。ビジネスにおいても、顧客の声に耳を傾け、そのフィードバックを製品やサービスの改善に活かすことが、長期的な成功につながります。人事の立場からは、顧客サービススキルや顧客中心の思考を持った従業員を育成し、顧客満足度の向上に貢献することが目標となります。

組織文化の構築

 王監督と小久保氏の関係からは、尊敬と信頼を基盤とした組織文化の重要性が浮かび上がります。組織内でリーダーと従業員が相互に尊重し合い、開かれたコミュニケーションを促進する文化は、イノベーションと成長を後押しします。人事は、このような文化を育むために、適切なコミュニケーションツールの導入、フィードバックの機会の提供、そして公正な評価システムの構築を行う必要があります。

まとめ

王貞治監督から学んだプロのあり方は、スポーツの枠を超えて、ビジネスと人事管理における多くの重要な教訓を提供します。リーダーシップ、個人の成長、チームワーク、顧客満足度の向上、そして健全な組織文化の構築は、どの組織においいても成功の鍵となります。これらの要素は相互に関連し合い、組織の目標達成に向けて重要な役割を果たします。


プロ野球選手としてのキャリアにおいて重要な転機を迎えた瞬間を、暖かく柔らかい画風で描いています。選手と伝説的な監督との深い会話が、日没時の野球場で描かれており、その場の重要性と二人の関係の温かさが、日没の金色の光によって反映されています。選手は監督からの知恵と励ましを伝えるジェスチャーに熱心に耳を傾けており、周りの静けさがこの師弟関係の焦点を強調しています。背景には、二人が共に直面する挑戦と公の期待を象徴するスタジアムと影に隠れたファンのヒントが含まれています。


1日1話、「生き方」のバイブルとなるような滋味に富む感動実話を中心に365篇収録されています。素晴らしい書籍です。




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