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【書籍】理想を失うことの危険性ー企業文化と人事戦略への影響ー中條高德氏

 『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)のp166「5月13日:民族滅亡の三原則(中條高德 アサヒビール名誉顧問)」を取り上げたいと思います。

 ここでは、民族の存続と独立の重要性について強調しています。特に、ローマ帝国時代のカルタゴ、バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)の歴史を例に挙げ、これらの地域が直面した困難と抑圧、そしてそれに対する抵抗の形を通じて、民族のアイデンティティ、自由、独立の価値を説いています。中條氏は、民族が滅亡する原因として、理想(夢)の喪失、物質的価値の優先、自国の歴史の忘却を挙げています。これらの点は、現代の日本人、さらには世界中の人々にとっても、自己反省と未来への指針となるものです。

迷える日本人よ。世界の歴史が説く民族滅亡の三原則を心して聞けと叫びたい。
一、理想(夢)を喪った民族
一、すべての価値をもので捉え、心の価値を見失った民族
一、自国の歴史を忘れた民族

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)p166より引用


カルタゴとローマの戦争(ポエニ戦争)

 カルタゴは貿易で栄えた国であり、ローマとの三度にわたる戦争で最終的に滅ぼされました。この歴史的出来事は、強大な敵に対抗する際の困難さと、敗北が民族全体の消滅につながる可能性を示しています。

バルト三国の歴史
 バルト三国は度重なる外国からの侵略を経験しましたが、ソビエト連邦の崩壊後に独立を回復しました。特に、人間の鎖や十字架の丘など、抵抗と団結の象徴は、抑圧された状況下でも民族のアイデンティティを保持し続けることの重要性を強調しています。

民族滅亡の三原則
 理想の喪失、物質的価値の優先、自国の歴史の忘却は、民族や文化の存続にとって致命的です。これらの原則は、個人や社会が直面する可能性のある危機に対する警鐘となります。

 ここでは、過去の歴史から学び、現在と未来のためにそれをどのように生かすかという問いを投げかけています。それは単に国家や民族に限らず、個々人のアイデンティティや価値観を維持し、発展させることの大切さをも示唆しています。

人事としてどう考えるか

 中條氏が述べる「民族滅亡の三原則」とは、深く歴史から学ぶべき教訓があります。単に過去の出来事を振り返るだけでなく、現代の社会や個人の生活においても重要な意味を持ちます。理想を失い、物質的価値のみを追求し、自国の歴史を忘れることは、個人や集団、さらには国家レベルでのアイデンティティの喪失につながります。これらの原則を現代の人事管理の観点から考察してみます。

理想(夢)を喪った民族

 企業において、組織のビジョンやミッションは、社員が共有すべき理想です。この理想が明確であればあるほど、社員は自分の仕事に対して意義を感じ、より高いモチベーションで業務に取り組むことができます。反対に、組織が理想を失った場合、社員は目標を見失い、仕事に対する情熱を失います。人事としても、社員に組織のビジョンを常に伝え、理想に向かって一丸となって取り組む文化を育成することが重要です。

すべての価値をもので捉え、心の価値を見失った民族

 現代社会は物質的豊かさを重視する傾向にありますが、これが過度になると、人間関係や精神的な満足感といった「心の価値」を見失いかねません。企業においても、給与や福利厚生といった物質的報酬の提供は重要ですが、それだけでは社員のモチベーションを持続的に高めることはできません。社員一人ひとりの成長や働く意義を重視し、職場内での人間関係やチームワークの向上に努めることが必要です。

自国の歴史を忘れた民族

 歴史を忘れることは、過去の教訓から学ばないことを意味します。企業においても、過去の成功や失敗から学ぶことは経営戦略を練る上で非常に重要です。また、企業文化や創業者の精神といった「企業の歴史」を大切にすることで、社員が組織の一員としての誇りや帰属意識を持つようになります。人事領域でも、新入社員教育や継続的なコミュニケーションを通じて、企業の歴史や文化を伝え続けることが重要です。

まとめ

 「民族滅亡の三原則」は、過去の歴史における教訓を現代にも適用することで、組織や社会が直面する様々な課題への対処法を考える手がかりを与えてくれます。人事の立場からも、これらの原則を踏まえ、社員が理想を共有し、物質的な報酬だけでなく精神的な満足を重視し、そして組織の歴史を尊重する文化を育むことが、持続可能な組織成長の鍵となります。

「民族滅亡の三原則」を現代の人事の観点から考察したテーマを視覚的に表現しています。理想を失った組織の風景、物質主義に支配された社会の断面、そして自国の歴史を忘れ去った状態をそれぞれ描いています。画風は柔らかく、反省的な雰囲気を醸し出しており、これらの原則が現代社会や組織に与える影響を深く考えさせます。ビジョンの共有、精神的価値の重視、そして歴史への敬意が、持続可能な成長のためにいかに重要かが伝わるでしょう。


1日1話、読めば思わず目頭が熱くなる感動ストーリーが、365篇収録されています。仕事にはもちろんですが、人生にもいろいろな気づきを与えてくれます。素晴らしい書籍です。




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