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【書籍】青春の証ー北方謙三氏の若き日々ー男は十年

 『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)のp232「7月15日:男は十年だ(北方謙三 作家)」を取り上げたいと思います。

 北方氏の言葉は、小説家としての彼の旅路と、その過程で得た洞察について深く語っています。彼は、小説を書くことにおける体験の価値が全体の約10%を占め、残りは願望や想像力が加わって作品が形成されると考えています。この見解は、創作の本質が単なる経験の蓄積ではなく、その経験に対する個人の反応と解釈によって大きく左右されることを示しています。

 北方氏の若年期、特に彼の20代は、肉体労働をしながら小説を書き続けるという挑戦的な日々でした。この期間に彼が書いたボツ原稿の量は、背丈を超えるほどになります。このエピソードは、北方が小説家としての技術を磨き、自身の声を見つけるためにどれだけの時間と労力を費やしたかを物語っています。彼にとって、この十年間は単なる時間の経過ではなく、自己発見と成長の過程だったのです。

 北方氏はこの期間を振り返り、青春とは成果を出すことではなく、どれだけ純粋で一途になれたかにあると考えます。彼にとって、背丈を超えるボツ原稿の山は、時間の無駄ではなく、青春の証としての価値があると見なしています。これは、目標に向かって一生懸命に努力すること自体が、成功を測る唯一の尺度ではないという彼の哲学を反映しています。

あの十年間はいったい何だったのかとよく考えるんです。そしてあれは青春だったと思います。青春というのは意味のあることを成し遂げることじゃないんです。 どれだけ馬鹿になれたか。どれだけ純粋で一途になれたか。それがあの背丈を越えるボツ原稿だとしたら、捨てたもんじゃないと思いますね。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)p232より引用

 北方氏の旅は、周囲の人々からの圧力と疑念に満ちていました。彼の父親は、小説家を「人間のクズ」と見なしていましたが、それでも北方氏は自分の道を追求し続けました。彼の同窓会での体験は、成功の伝統的な尺度に挑戦し、自分の情熱に忠実であることの複雑さを浮き彫りにします。彼の仲間が一流会社で働く中、北方は小説を書き続けることを選択し、それに対して侮蔑と哀れみが混じった賞賛を受けました。

 父親からの唯一の助言、「男は十年だ」という言葉は、北方氏にとって特別な意味を持つようになります。これは、長期間にわたる努力と忍耐が最終的には報われるという信念を示しています。父が亡くなった時、北方氏はすでに自分のキャリアで成功を収めていましたが、父の言葉の真価を理解し、受け入れることはもはや不可能でした。

その親父が、私がみんなからやめろ、やめろとめった打ちにされている頃、ひと言だけ言ってくれたことがあるんです。「男は十年だ」と。十年同じ場所で頑張っていると、見えるものは見えてくるし、できることはできるようになると。その時は、何言ってやがるんだと思いましたけど。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)p232より引用

 北方氏の話は、夢を追求する過程の苦悩と喜び、そして自己実現の旅を描いています。彼の経験は、創造的な努力が直面する障壁と、個人が自分自身とその目標に忠実でい続けることの重要性を強調しています。北方氏の物語は、挑戦に直面し、それを乗り越えることでのみ、真の成長と満足が得られるという普遍的なメッセージを私たちに提供しています。

人事として考えられること

 北方氏の「十年間」に対する考察は、人事管理における深い洞察を提供します。彼の経験は、持続的な努力、失敗からの学習、内発的モチベーション、そして長期的なキャリア開発の重要性を浮き彫りにします。これらのポイントを拡張し、人事管理の各分野にどのように適用できるかを詳細に探ります。

持続的な努力と人材開発

 「男は十年」という言葉は、個人の成長と専門性を深めるためには、長期間の取り組みが必要であることを示しています。人事の立場からこの原則を適用するには、従業員が自らの能力を最大限に発揮できるよう支援する体系的な人材開発プログラムの設計が不可欠です。個別のキャリアパスの計画、継続的なスキルアップトレーニング、およびメンタリングとコーチングの提供が含まれます。企業は従業員が自らのキャリアを長期的に見据え、スキルセットを拡大し、新しい挑戦に自信を持って取り組めるよう支援する責任があります。

失敗からの学習とイノベーション

 北方氏の「背丈を越えるボツ原稿」のエピソードは、失敗から学ぶことの価値を教えてくれます。企業がイノベーションを推進し、競争力を維持するためには、失敗を恐れずに挑戦する文化を育むことが重要です。人事部門は、失敗を許容し、その経験から学びを得ることを奨励するポリシーを策定し、実施することで、この文化を強化できます。例えば、失敗からの学習を共有するためのフォーラムの設置、失敗を経験した従業員を支援するメンタルヘルスリソースの提供、失敗を貴重な学習機会として捉えるためのリーダーシップトレーニングが考えられます。

内発的モチベーションとエンゲージメント

 北方氏が示すように、内発的モチベーションは驚異的な成果を生み出す力を持っています。従業員が仕事に情熱を感じ、自らの役割に意味を見出すことができれば、そのエンゲージメントと生産性は大きく向上します。人事部門は、従業員が自らの仕事に対して強い内発的モチベーションを持てるような環境を作り出すことを目指すべきです。これには、従業員が自らの価値観と一致するプロジェクトに取り組む機会を提供すること、個人の貢献を認識し価値を認めること、そして自律性と創造性を促進する職場環境の構築が含まれます。

長期的なキャリア開発と自己実現

 北方氏の経験からは、自己実現の追求がいかに重要であるかがわかります。人事管理では、従業員が自らのポテンシャルを最大限に発揮し、キャリアを通じて自己実現を果たせるようなサポートが必要です。これを実現するためには、従業員のキャリア目標を理解し、それに沿った成長機会を提供することが重要です。また、従業員が新しい役割やプロジェクトに挑戦し、その過程で必要なスキルや知識を習得できるような機会を創出することも、この目標を達成する上で欠かせません。

 北方氏の「十年間」に込められた教訓は、人事管理の実践において深く反映されるべきものです。持続的な努力、失敗からの学習、内発的モチベーションの重要性、そして長期的なキャリア開発への注力は、組織と従業員双方にとって価値ある成果を生み出すための鍵です。これらの原則を組織文化に組み込むことで、人事部門は従業員の満足度を高め、また、それにより持続できる企業となることができるでしょう。

若き小説家の10年間の旅を象徴しており、彼の専念と直面した課題を反映しています。背丈を超えるボツ原稿に囲まれながらも、若者は情熱を持って筆を進めます。一つのランプが温かな光を投げかける部屋の中で、外の月は希望と持続力の象徴として輝いています。この画像は、夢への不屈の姿勢と自己発見への道のりを視覚的に語っています。柔らかく温かみのある画風は、若者の旅への共感と賞賛を誘います。


1日1話、読めば思わず目頭が熱くなる感動ストーリーが、365篇収録されています。仕事にはもちろんですが、人生にもいろいろな気づきを与えてくれます。素晴らしい書籍です。

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