見出し画像

月明かりのセンターライン【前編】

広島の大学生が、免許とったら行く場所。
それは…山賊!!

広島市内から1時間以上かけて、
夜中に鶏を食べに行く。

現地は今でこそアミューズメント色が濃厚だが、
当時は真っ暗な2号線の中に突如現れる
“祭り”のイメージ。

そんな山賊で体験した話をしよう。

セルが回らない

山賊焼き、山賊むすび、
ヤマメの刺身、山賊うどん等々を堪能し、
野郎4人で車に乗り込んだ。

ハンドルを握る僕は
「こいつら帰りは爆睡だな」
と思いキーをひねる。

「…」

無音。
キュルキュルどころか、
何も音がしない。

僕の焦りをよそに、友人は
「おもろない小芝居はいいから、
 早よ帰ろうで」
と言う。

「…いや、マジにエンジンかからん」

真夏の車内が凍りつく。

困った我らに一つの知恵が降りてきた。

「バイクに“押しがけ”ってあるじゃろ?
 それをやってみよう」

友人3人は車外へ出てスタンバイ。
僕はサイドブレーキを慎重に解除。

すると車はゆっくりと…

「え?下がってる?」

車は前進どころか後ろに下がっているのだ。

外からは
「ブレーキ!ブレーキ!」
との叫び声。

慌ててサイドブレーキを引き車を止めた。

原因は緩やかな勾配。
男3人がかりでも、前進は難しかった。


途方にくれる我らの耳に、救いの音が聞こえてきた。

パァーパパパ、パァーパパパ、ブォーン!

鳴り響くゴッドファーザー。
ぱらりらりらりらりら〜♪

そう、暴走族御一行が現れたのだ。
駐車場を埋め尽くすバイクの群れ。
車に男3人がしがみついているのに気づいた様子で、
1人が話しかけてきた。

「兄ぃちゃんら、どうした?」

僕は恐る恐る説明した。
「エンジンがかからなくて…」
それを聞くや否や、男の目が光った。【後編に続く】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?