見出し画像

展覧会「Trio パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」(於 東京国立近代美術館)

絵画を始め様々なアート作品が東京にやってきて展覧会が催されるけれども、3つの美術館の所蔵展というのは珍しい。さらに、テーマを立てて3館それぞれから1点ずつを出して並べるという。さながら、「アートの対決」である。美術館は、パリ、東京、大阪にあるので、「都市間の対決」とも言える。さあ、この対決、どこが勝つだろうか。

ざっと見てみると、あまりにも作風や対象がかけ離れて、あまり対決が成立していないように見えるテーマもあった。また、最後のコーナーの現代アートでは、ビデオ作品3つが並んでいても、どっちもどっち的な勝敗が決まらない感じもした。しかし、いくつかのテーマはすごくおもしろかった。


1つめのお勧めは、「都市の遊歩者」。モーリス・ユトリロはモンマルトルの裏通り、松本峻介は東京とおぼしき都市の高い壁沿いの通り、佐伯祐三はがらんとしたレストラン。何がおもしろいかというと、どの絵にも小さな黒っぽい人がぽつんと描かれている。どこの都市にも似たような人がいるということか。いやいや、同じ人が3都市に出没したのではないか。


次なるお勧めは、「都市のグラフィティ」。どこの都市にも落書きはあるだろうけど、フランソワ・デュフレーヌは、パリあたりの落書きをちぎって貼り付け、作品にしている。佐伯祐三は、パリの街角に埋め尽くされた落書きを細かく描写している。ジャン=ミシェル・バスキアに至っては、自分で落書きを描いて絵にしてしまっている。落書きに対する態度がまったく違うのだ。


圧巻のお勧めは、「モデルたちのパワー」。アンリ・マティスのトルコ女性らしきオダリスクは、ベッドに横たわってアンニュイに視線を投げかけている一方、萬鉄五郎の女性は同じく視線を投げかけているけど、草の上に横たわり、あまりにも肉感的。アメデオ・モディリアーニの女性は全裸で大きな目で視線を投げかけ、こちらが目のやり場に困る。たしかに女性モデルのパワー炸裂である。

パリ市立近代美術館から絵が来ているせいか、ラウル・デュフィの絵がいくつか見られたのは、とてもうれしい。また、佐伯祐三がかなりの存在感を出していた。藤田嗣治の5人の裸婦も非常によい。私好みの印象派がなくても、十分楽しめるラインアップである。

ご覧になって、どうだっただろうか。どのテーマの「対決」で見応えがあっただろうか。どの美術館の勝利だろうか。どの都市が勝っただろうか。

ちなみに、私は「対決」の勝敗を決めきることができなかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?