地熱貯留層の探査
環太平洋火山帯に位置する日本は,発電ポテンシャルが2300万kW以上と,米国やインドネシアに次ぐ世界3位の地熱資源量を誇ります。このポテンシャルは,一般家庭で4000万世帯分に相当する量になりますが,実際に発電に利用されているのは2%に過ぎません。これは,地熱発電に有望な地域が国立公園内にあることや,付近の温泉地で温泉枯渇の懸念や反対運動などといった様々な課題があったためです。残念なことですが,地熱資源の開発や活用においてはアイスランドやメキシコ,フィリピンといった発電ポテンシャルが低い国々よりも立ち遅れています。
クリーンな純国産の再生可能エネルギーである地熱エネルギーを開発するためには,地熱貯留層の位置や規模を探査によって明らかにする必要があります。地熱の探査では,温泉,噴気,熱変質帯といった地熱徴候がある地域を選定した後に,物理探査が実施されます。物理探査は,地下深部の地質構造を明らかにする手法で,その方法はバラエティに富みます。地熱探査では,地熱貯留層の物理的な性質を利用してその位置や広がりを推定しています。
地熱探査の初期段階では重力探査や磁気探査などによる広域探査(概査)が実施されます。概査で有望地点を絞った後には,比抵抗法,地磁気地電流法(MT法),弾性波探査などによる精密調査(精査)が実施されます。 地熱探査で必ずと言っていいほど使われるのがMT法です。MT法は,自然の電磁場変動を観測することにより地下の比抵抗分布を求めるもので,低比抵抗帯である熱水変質帯の探査に大きく貢献しています。熱水変質帯の下部にある地熱貯留層は,周囲の地層に比べて高温で,割れ目(フラクチャ)が多く,フラクチャに含まれる熱水には多くの化学成分が含まれています。 地熱貯留層探査は地熱井の掘削に比べると経費が少なくて済むので,探査結果の信頼性の向上は地熱開発の経済性の向上に貢献する点が大きく,技術の進歩が切望されています。
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