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遺跡の探査

 考古学の研究には発掘は欠かせませんが,見方を変えれば発掘は遺跡の破壊にもつながります。そこで現在では,遺跡はなるべく発掘せずに保存する方向に進んでいます。遺跡探査は,物理探査学・電子工学・計算機科学を駆使して"遺跡を発掘しないで調査する"非破壊の探査法です。埋蔵文化財の発掘前に遺跡探査を行なうことで,文化財の位置と深さ,大きさ,分布などの情報を提供することができます。遺跡探査には,地中レーダ探査磁気探査電気探査(比抵抗法)などがよく使われています。 

 地中レーダ探査は,アンテナを使って電磁波を地中に向けて送信し,地下の埋蔵物で反射して再び地上に戻ってきた電磁波を受信することで,地下埋蔵物を探査する方法です。地中レーダ探査では,電磁波を送受信しながら地面に沿ってアンテナを移動させることで,擬似的な断面画像を得ることができます。電磁波は,土質の違いにより,反射・屈折・減衰などの度合いが異なるので,地層境界や遺物の存在が推定できます。また,得られた複数の断面から深度毎の平面図を作成することも可能です。 

 磁気探査では,高精度な磁力計を使って地磁気を観測します。地下にある遺構・遺物とその周辺の土とで磁性体の含有量が違えば,誘導磁化の違いから地磁気へ及ぼす影響(磁気異常)が異なります。この非常に僅かな磁気異常の差異から遺構などを推定する方法が磁気探査です。また,窯跡などは熱残留磁化が大きいので磁気探査で比較的容易に探査することが可能です。 

 電気探査(比抵抗法)は,地面に電気を流して見掛比抵抗を測定し,その値から土層判別をして遺構の存在を推定する方法です。一般に濠や溝などは周囲と比較すると水分が多く電気が流れやすいために比抵抗が小さく,石組や砂利などでは電気が流れにくいために比抵抗が大きくなる傾向があります。このような比抵抗の違いにより,自然の堆積層と人工の遺構との違いを判別します。


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