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ミリしら物理探査

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物理探査を1ミリも知らない人に、物理探査に関する専門用語を解説します。
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2022年4月の記事一覧

ミリしら物理探査#25 本質を見抜く力

 ”本質を見抜く力”とは、”目に見えるもの”を手掛かりに、その裏側にある”目に見えないもの”を洞察する力のことを言います。本質を見抜く力を持っている人の特徴は、”目に見えるもの”を手掛かりに”目には見えない、二段目・三段目の奥行き”を見抜ける能力を持っていることです。つまり、最終的に「ああなれば⇒こうなる(こうなりやすい)」という”法則”の発見です。なので、目に見えるものだけで物事を捉えている人には、その法則は決して見通せません。  あなたの周りに、”いち早く仮説が立てられ

ミリしら物理探査#26 二つのマイグレーション

 石油のことを勉強していると、意味が異なる二つのマイグレーション(migration)に出会います。どちらも石油に関係する専門用語ですが、一つは石油の成因に関する地質用語で、もう一つは物理探査のデータ解析に関する用語です。  地質用語のマイグレーションは、石油またはその前駆物質が天然に地下の岩石中を動くことをいいます。もともと、migrationには”移動”という意味があります。この石油の移動は、根源岩(石油が生成した岩石)から貯留岩(石油が貯まった岩石)に達するまでの一次

ミリしら物理探査#28 自発分極と強制分極

 まずは分極の説明をします。電気などの分極とは、正の電荷と負の電荷が、何らかの原因で物質中で偏ることを指します。通常の状態では、物質中では正の電荷と負の電荷が均等に混ざっているので、”電気的に中性”になっています。ただし、この電荷の偏り、つまり分極が生じると電気的に中性ではなくなります。  自発分極(spontaneous polarization)というのは、何も手を加えなくても勝手に分極をしている電気的な状態を指します。身近なもので説明すると、自発分極の代表選手が電池で

ミリしら物理探査#27 琥珀と静電気

 物理探査学の授業で、電気探査の導入として、いつも静電気の話をしています。静電気は、物質の表面に貯まった過剰な電荷によって引き起こされます。夏場はあまり感じませんが、冬場だと毛糸のセーターによるバチバチという静電気や、エレベーターのスイッチを触れた時のちょっとした感電など、割と身近な電気現象です。  この静電気はかなり昔から知られていて、琥珀が小さなホコリやゴミをくっ付ける不思議な現象が観察されていました。琥珀は貴族やお金持ちの衣服のボタンとして使われていたため、このような