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ミリしら物理探査

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物理探査を1ミリも知らない人に、物理探査に関する専門用語を解説します。
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2022年1月の記事一覧

ミリしら物理探査#24 偏微分方程式

 物理探査に限りませんが、物理現象をシミュレートする場合、その物理現象を表わす数学モデルを考える必要があります。複雑な物理現象でも、その基本的な振る舞いは、シンプルな方程式で記述することができます。これらの方程式は、1次元構造などの単純な場合を除けば、偏微分方程式になります。  物理探査の王道である弾性波探査の基礎微分方程式は、波動方程式になります。波動方程式は、波動や振動の現象を表わす方程式で、位相速度s、変位uを使って以下のように表せます。  重力探査、磁気探査、電気

ミリしら物理探査#23 デコンボリューション

 謎の言葉”デコンボリューション”を初めて聞く人には、語感からは全く何も想像できないと思います。音だけなら”デコレーション”に似ていますが、意味は全然違います。  デコンボリューション(deconvolution) の意味を理解する前には、デ(de)を取ったコンボリューション(convolution)を理解する必要があります。コンボリューションは、畳み込みまたは畳み込み積分と呼ばれる数学的な操作です。コンボリューションは、関数 g を平行移動しながら関数 f に重ねて、掛算

ミリしら物理探査#22 誘導磁化と残留磁化

 磁気探査で測定する磁気異常の原因には、2つの磁化機構が考えられます。一つは誘導磁化で、もう一つが残留磁化です。  鉄やニッケルなどの強磁性体の金属は、磁化率が大きいので、外部の磁場によってその磁場と同じ方向に磁化されます。これが誘導磁化です。例えば、鉄釘を磁石にくっつけると、その鉄釘にも別の鉄釘がくっつきます。これは、磁石の強い外部磁場によって鉄釘が磁化し、鉄釘が一時的に磁石と同じ挙動を示すからです。しかし、外部の磁場を取り除く(磁石から釘を離す)と、鉄釘の磁石効果は無く

ミリしら物理探査#21 空中物理探査

 物理探査は通常、地表から実施します。しかし、広い範囲を大まかに探査したい概査では、航空機やヘリコプターを使った空中物理探査が使われます。空中物理探査に対比して、通常の物理探査を地表物理探査という場合もあります。空中物理探査には、空中磁気探査・空中重力探査・空中電磁探査・空中放射能探査などがあります。空中○○探査は、英語のAirborne Geophysicsからエアボーン○○探査と呼ばれたりもします。  空中物理探査の特長は、何といってもその探査範囲の広さです。人間が徒

ミリしら物理探査#20 磁気嵐

 地球全体にわたる激しい地磁気の擾乱現象を磁気嵐と言います。磁気嵐は、太陽から飛来するプラズマ (太陽風 ) によって引き起され、そのプラズマ流が地球の磁気圏を圧縮するために生じると考えられています。プラズマ流の一部は、地球の磁力線に沿って極地方の上空から入り込み、オーロラを引き起こします。  大規模な磁気嵐の多くは、太陽フレアに伴なうコロナ質量放出と呼ばれるプラズマの塊と関係があります。このような磁気嵐は、太陽フレアの発生から1~数日後に観測され、太陽フレアが太陽黒点の活