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ぶったん四方山話

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これまでに経験した物理探査にまつわるエピソードを紹介します。
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#電気探査

電気と動物の関係

電気探査・比抵抗法では、地面に電気を流して測定するので、感電には注意が必要です。電極や電源コネクタを素手で触ることは厳禁ですが、故意ではなくても”うっかりと”触ってしまうことはあります。私も2回の感電経験があります。 この記事を書いているので私自身は生きていますが、場合によっては感電で死んでしまう場合もあります。感電死の研究や実験はおいそれとはできませんが、ネットで検索してみると『各種動物の電撃による間代性痙攣および致死に関する研究』:佐藤栄(日本獣医畜産大学)・渡辺久夫(

電気探査アルアル 感電に注意

電気探査では、トランスミッタと呼ばれる装置で、地中に電流を流します。その時の出力電圧は数百ボルトで、電流も数アンペア、場合によっては10アンペア以上流れることもあります。 市販の電気探査装置が流す電流は、通常は数十ミリアンペア程度なので、感電してもほとんどわかりません。しかし、深部探査を目的とした電気探査の場合には、大型のトランスミッタを使って数アンペアの大電流を大地に流します。そこで、機材に触れたり、電線を間違って触ったりすると感電の危険性があります。 私は電気探査の実

電気探査の必須アイテム#2 ビニールテープ

電気探査に一番大事なのは前回の電線ですが、電線と電線を接続するために必要なのが、ビニールテープです。我々は、よく省略してビニテと呼んでいます。このビニテが、電気探査では大活躍します。 電気探査では、場合によっては数kmの電線を繋ぐ必要があるので、300m巻きの電線が何巻も必要です。また、電線と電線のつなぎ目は、絶縁のためにビニールテープで保護する必要があります。また、電線を引っ張った時に繋ぎ目が外れないようにする重要な役目も持ちます。 ビニテは、電線の回収時にも役に立ちま

電気探査の必須アイテム#1 電線(ビニール線)

電気探査の必須アイテムのNo.1は、何と言っても”電線”です。電気探査では、地面に電気を流したり、地表の電位差を測定したりするので、電線が無ければ探査は出来ません。よく使うのは、ビニール絶縁電線(ヨリ線 2.0㎟)の 300m巻です。現在の価格だと、300m巻き1巻で2-3万円くらいです。 流電電位法や流体流動電位法では、遠方にある基準電極との間の電位差を測定する必要があるので、基準電極から本部までの距離が数kmになることもザラです。通常は3-5kmくらいの遠方に基準電極を

世界”物探”遺産の旅#11 モザンビークのCabora Bassa送電線

モザンビークの南部から南アフリカ共和国の北部にかけて、Cabora Bassa送電線という長い送電線があります。この電線の北端は川の上流部にあるので、たぶん水力発電腫からの電気を送るための送電線だと思われます。この送電線を使った”大規模な電気探査・比抵抗法”が実施されました。 通常の電気探査の電極間隔は、数mから数百mで、長い場合でもせいぜい数kmです。しかし、1973年から1975年にかけて、アフリカ南部(モザンビークから南アフリカ共和国)の送電線を使って電極間隔が30k

ぶったん四方山話#11 電気探査の伝統

伝統とは、ある民族・社会・集団の中で、思想・風俗・習慣・様式・技術・しきたりなど、規範的なものとして古くから受け継がれてきた事柄のことを言います。また、それらを受け継ぎ、伝えることを意味します。伝統を受け継ぎ、長く後世に伝えることは難しいことです。能や狂言、歌舞伎などは発祥当時は最先端の流行芸能でしたが、その技が数百年も受け継がれたことで伝統芸能になりました。 日本の物理探査学の伝統は、ひとりの研究者から始まりました。九州帝國大学工科大学の小田二三男助教授(当時)は、実家が

ぶったん四方山話#4 伊良部島の空洞探査

 伊良部島(いらぶじま)は、人口およそ5,000人ほどののどかな島です。この島は宮古列島の島のひとつで、2005年の市町村合併により、いまは全島が沖縄県宮古島市です。しかし、宮古島市の一部になる前は、西側に隣接する下地島とともに宮古郡伊良部町でした。下地島には、小さな島には似つかわしくない大きな飛行機の滑走路があります。この島の半分を占める下地島空港は、かつて日本で唯一のパイロット訓練用空港として活用されていました。現在は、旅客用空港として整備され那覇便や神戸便など出ているよ

ぶったん四方山話#1 熊本県・旧久木野村の幻の露天風呂

 シリーズ化するかは決めていませんが、色々な場所で物理探査を実施した時のエピソードを紹介します。面白いかどうかは、あなた次第です!!。  現在は平成の大合併で南阿蘇村になっていますが、かつて久木野(くぎの)村というのがありました。久木野村には、久木野温泉センター・木の香湯という温泉施設がありました。大きな露天風呂があることや、村営(第三セクター)で入浴料も安価なことなどから、結構人気がありました。残念ながら、2016年4月の熊本地震で被災(建物は全壊)して、現在は休業してい