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ぶったん四方山話

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これまでに経験した物理探査にまつわるエピソードを紹介します。
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2022年6月の記事一覧

世界”物探”遺産の旅#3 九州大学伊都キャンパス

今回の場所は、私の勤務先でもある九州大学の伊都キャンパスです。九州大学伊都キャンパスは、単独のキャンパスとしては日本一の面積を誇ります。ただし、この面積の広さが世界物探遺産の理由ではありません。 私が伊都キャンパスを世界物探遺産に選んだ理由は、その歴史的な背景です。伊都キャンパス内には、古代からの歴史遺産が数多く残されています。とくに、前方後円墳の数が特徴的で、伊都キャンパス内には5基の前方後円墳が存在しています。 伊都キャンパスの東側から紹介すると、塩除古墳(53.5m

世界”物探”遺産の旅#2 クルスク

磁気異常(magnetic anomaly)は地磁気異常とも呼ばれ、地球上における地磁気の局所的な異常のことを指します。地球はそれ自体が大きな磁石と考えられていますが、その大きな磁石によって生じる地磁気は一様に分布しているわけではありません。規則的な磁場中に存在する不規則な磁場が、局所的な磁気異常/地磁気異常です。 磁気異常の発生機構にはいくつかの要因がありますが、主なものは鉄などの強磁性体が地球磁場によって磁化された誘導磁化です。物理探査の一種である磁気探査は、磁気異常の

世界”物探”遺産の旅#1 ワスカラン山

世界文化遺産や世界歴史遺産など、世の中には様々な世界遺産が存在しています。そこで、いつまで続くかわかりませんが、世界”物探”遺跡を紹介したいと思います。この物探とは、物理探査の省略形です。しばしば、物理探査はブッタンと呼ばれます。このシリーズでは、私が独断と偏見で選んだ世界物探遺産を紹介します。 ワスカラン山は、ペルーの最高峰であり、地球上の熱帯地域での最高峰でもあります。西半球で六番目に高いこの山は、アンデス山脈に位置し、山形はタイトル画のように北峰(標高6,655m)と

ぶったん四方山話#10 福岡と博多と埋立地

”福岡=博多”と認識している人も多いと思いますが、実は福岡と博多は全くの別物です。博多は歴史的にも古い土地の名称ですが、現在の地下鉄の駅名で言えば博多・天神・中洲川端を中心とした商業エリアです。博多は魏志倭人伝には奴国と呼ばれていて、その港が那の津です。 博多はその昔、海外(中国大陸や朝鮮半島)からの侵略も経験しています。それが元寇で、二度の戦いは文永の役と弘安の役と呼ばれています。福岡市には”幻の福岡市歌”と言うのがあって、現在は誰も知りませんが、その歌詞の一番には元寇の

ぶったん四方山話#9 カナダのオイルサンド見学の思い出

 カナダのアサバスカ地方には、広大なオイルサンドの鉱床が広がっています。オイルサンドとは、極めて粘性の高い原油成分を含む砂岩のことです。原油を含んだ砂岩が地表に露出、もしくは地表付近で地下水などと反応し、揮発成分を失ったものと考えられています。オイルサンドの色は黒ずんでいて、石油臭を放つことが特徴です。  地表近くのオイルサンドは、タイトル画のように露天掘りによって採掘されます。しかし、地下深部にあるオイルサンド層は、露天掘りするにはコストがかかり過ぎます。そのため、オイル