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ぶったん箸休め

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物理探査のことを略して、物探(ぶったん)と呼びます。ここでは、物探とチョッとだけ関係ある話題を集めました。智の箸休めです。楽しんで下さい。
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2023年11月の記事一覧

研究室の伝統の継承

学術的な研究は個人が主体(中心)ですが、大学によっては”研究室の伝統”みたいなものはあります。私が所属している九州大学の物理探査学研究室では、その昔から電気探査や電磁探査を得意としています。 もともと、九大の物理探査学研究室は”日本初の物理探査学講座”の流れを汲んでいる経緯があり、その時の初代教授・小田二三男先生が電気探査の研究を開始したのが九大の物理探査学のスタートでした。その後の野口教授、小野寺教授は引き続き電気探査がメインでしたが、乗富教授、牛島教授の時代になると電磁

火の山公園の戦争遺跡

今日は日帰り出張で、下関の『火の山公園』に行ってきました。火の山にはロープウェイが運航していて、火の山の2合目の壇ノ浦駅から9合目の火の山駅を結んでいます。ただし冬はロープウェイのオフシーズンなので、今日はロープウェイは動いていませんでした。山頂の公園からは、下関・門司の街並みを一望することができ、タイトル画のように関門海峡大橋も良く見えました。 関門海峡は、幕末・明治時代以降、軍事的に重要な拠点でした。そのため、下関側の山と北九州側の山には、海峡を通過する戦艦を砲撃するた

日本地熱学会@岐阜#3 三日目(最終日)

今日は地熱学会の最終日です。今日の午前には、「物理探査」のセッションがあり、朝の9時半から3つ続けて研究成果の発表をしました。今回の発表はこれまでに試作した、測定機器を使ったフィールドでのテスト実験の成果です。 最初は、ホームグラウンドである九州大学伊都キャンパスでのテスト実験です。この発表では、伊都キャンパス内にある”生物多様性ゾーン”で測定した結果を示しました。キャンパス内には電気を使う様々な機械が設置されているので、電磁ノイズが多いだろうことは予測していましたが、意外

日本地熱学会@岐阜#2 二日目

今日は二日目、そろそろ講演発表を聞くのに飽きてきました。今日面白かったのは、日本地熱学会賞を受賞した論文の受賞講演でした。この講演は、現在我々が進めているMT法プロジェクトに関する研究でした。 物理探査のデータ解析で、常に問題になるのが”地上の地形”の問題です。物理探査では地下の物性値分布に興味があるのですが、大気(空気)と大地の境界となる地形が、地下の物性値分布を解析する妨げになります。 最近はコンピュータとプログラミング技術の発達で、地表の形状(起伏)を考慮した解析も

日本地熱学会@岐阜#1 一日目

今日は地熱学会の初日です。特に聞きたい講演はありませんでしたが、B会場の『現場情報』を聞くことにしました。ここでは電源開発”J-POWER”が運営している鬼首の講演を聞くことにしました。 鬼首は、大学院生の頃に1か月ほど調査のアルバイトで滞在したことがあるので、懐かしい思いを感じながら聞いていました。鬼首では流電電位法とCSAMT法の調査をサポートしていました。この鬼首地熱発電所は、地熱坑井(生産井および還元井)をすべて堀り直し、さらには地上設備もすべて更新したようでした。

日本地熱学会@岐阜#0 学会前日

日本地熱学会が、明日の11月14日から3日間の予定で開催されます。岐阜県内には地熱発電所はありませんが、現在は奥飛騨温泉郷で地熱開発が進められています。実は知り合いのツテのツテという細~いつながりで、この地熱開発の関連会社から依頼を受け、少しだけ探査に関するアドバイスしたことがありました。内容はヒ・ミ・ツです。 今日は移動日なので、福岡から岐阜に来るだけが仕事でした。福岡から岐阜までの経路は色々ありますが、今回は陸路(新幹線&JR在来線)ではるばる岐阜までやって来ました。以

物理探査の次元について 2次元と3次元

言葉だけで表現するのは難しいですが、次元は空間の広がりを表わす一つの指標です。数学では、線は1次元、平面は2次元、立体は3次元と認識されます。我々が直接認識できる空間は、3次元までです。しかし、物理学では空間に時間軸を含めた4次元も出てきます。さらには、理論物理学などで出てくる超ひも理論では、10次元や11次元が出てきます。 物理探査でも1次元、2次元、3次元と三種類の次元が出てきますが、これまでの次元と少し考え方が異なります。物理探査で扱う地下(場合によっては空中も)は、

時系列データ処理の沼にハマる。

ネットスラングに”沼にはまる”という表現があります。これは「夢中になって抜け出せない」状況を指すようです。この表現は肯定的な場面でも使いますが、自虐的な”否定の意味で”使われているみたいです。 私は今、”時系列データ処理の沼”にハマっています。現在推進中のMT法のプロジェクトでは、自然の電磁場の変動から地下の状態(比抵抗分布)を推定します。このとき、時々刻々と変化する時系列データから、必要な情報を抽出する必要があります。測定機器で観測される電磁場データには、本来の電磁場の他

第三の平均 調和平均

相加平均や相乗平均は、高校数学でもよくでてきますから、正確な意味は知らなくても、見たこと/聞いたことくらいはあるでしょう。相加平均は、我々が普段よく使っている、いわゆる”算術平均”です。相加平均は、全ての値を足し合わせて、データ個数で割れば簡単に計算することができます。ただし、データ数が極端に大きな場合は簡単ではありませんが・・・。 相乗平均は、N個のデータの値を全て掛け合わせ、最後にN乗根を計算すれば求められます。これは、対数空間での算術平均に相当します。ただし、この場合