イカサマに出くわした話

リクエスト記事第一弾です。
先日、ラキラビという雀荘でゲストをした際に、私と同卓してトップを取ったらリクエストしたテーマで記事を書く、という企画をやりました。そのリクエスト記事です。
今回のテーマは実は昔、mixiなどでは友人限定でこれについて書いたことがあるのですが、今回はオープンで書いてみたいと思います。



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麻雀プロになって数年。インターネットでの活動が功を奏して名前が売れてきて、プロとして活動しているという自覚も出てきた。


それでもこの頃はまだ地元の友人たちとするセット麻雀も楽しみの一つで、月に2~3回、週末に声を掛け合ってセットを組み麻雀を楽しんでいた。


セットをする友人の一人にAという奴がいた。
こいつは歳はだいぶ若く、10歳弱ほど下だった。やんちゃで自信家だったが、聡明な奴でもあり、年上の人間に好かれるタイプの奴だった。
こいつが麻雀を覚え始めたときも短期間でぐんぐん上手くなり、それなりの質問もするようになってきたときには私が持っていた『科学する麻雀』を貸してあげたりしていた。そのうちにいつのまにか週末セットの常連になっていて、結果もそれなりに残すようになっていた。
セットでは人を揃えるのも大変だ。なので、セットの候補が増えるのが単純にうれしかったし、加えて、自分が可愛がっていた奴が麻雀上手くなるのもとても嬉しかった。別に先生とか師匠とかそういうのではなかったけど。


ある日のセットの日。
最寄りの雀荘にA、そして友人二人が揃い、麻雀を打ち始める。
その日は巡りがいいのか、Aがたくさんあがりまくる。こっちにも手が入ってくれよ~と思いながら、ふと配牌を取ったあとにAの方をちらっと見たとき、何か不自然な感じがした。

「...???」

一瞬のことだったので気のせいかとも思ったのだが、次の局、じっくり見ることにした。すると、次の局に見えたのはいわゆる「ぶっこぬき」だ。

本来ならこのイカサマは、手積みの麻雀でこそその効力を発揮するものだ。雀荘では自動卓なので、思い通りの牌は積むことはできないからだ。
しかし、それでも長期スパンで見ると、結構有利になるのではないのだろうか。不要牌を一度チェンジできるだけでも数回に一度はかなり早いテンパイを望めるだろう。

他の二人は気付いている様子はない。そもそも地元でそれなりの繋がりがあり、半分遊びではない麻雀なので、そのような真似はまずやらないし、他のメンツがやるとは思っていないだろう。

Aは他のメンツに比べれば、若僧だ。イキリたい年頃だし、勝ちたい気持ちも強いのだろう。でも、自分が見つかったときのことは考えていないのだろうか。二度とこの場には呼んでもらえないし、ある種の制裁を加えられてもおかしくないようなことをしているのに。とどのつまり、舐めているのだろう。


それでも、一回は警告は出したい。
なので、温情として、彼は下家に座っていたので、山を出すときに彼の山にわざと自分の山を近づけて、「ぶっこ抜き」しづらいようにした。これでやめてくれるようなら、あとで酒でも飲みながら𠮟りつけて終わりにしよう、と思ったりもした。

しかし、その願いも空しく、彼は再び「ぶっこ抜き」をしようとする機会を伺っている様子だった。「もうだめだな、あとは腕を掴むしかない」とため息をつきながら考えを巡らせた。彼のことを諦めると、急激に怒りが込み上げてきた。


そして、そのときは来た。

「なにやってんだ、おまえ」


語気を強めに、手を掴みながら言う。
Aの顔は真っ青だ。二人の友人は「え?何?」みたいな顔をしている。

その場で「ぶっこ抜き」のイカサマがあったことを伝え、彼に関する処遇を相談し、その場で支払うべきものは彼が全部負担する、という結果になった。


その後、もちろん彼がセットに誘われることは二度と無かった。
そしてそこから、セット面子が不足気味になり、週末セット麻雀は私が忙しくなってきたのもあり、自然消滅してしまった。


このことで私が彼に感じた怒りは、正義から生じたものではない。
仮にも私が「麻雀プロ」だということを知っていてなお、自分のそのような行為がバレないと思って舐めてイカサマを行った、ということに激しく怒りを感じたのだった。普段はあまり怒ることもないのだけれど、このときは麻雀プロを始めてからプロである自覚のようなものが現れはじめてきたからゆえに、一層許せなかったのかもしれない。私も若かった、ということなのだろうか。


このことを昔SNSに書いたときは、「処遇が甘すぎる」から「それくらい許してあげたら」という意見までいろいろあった。正解は無いのかもしれない。そのときは絶縁する、ということしか思い浮かばなかった。



数年経った現在。
ふとDMを見てみると、なんとAから。
「久しぶり!また麻雀一緒に打ってくれ」という内容。


少考した後、返信はしなかった。
どちらにせよ、もう地元でセット麻雀は打つことはないだろう。
あのときのメンツもみんな地方に飛んだり、家庭を持ったり、麻雀を打つ暇はなさそうだ。
近ごろは麻雀プロのセットにお呼ばれするぐらいで、セット麻雀は全然打っていない。そもそもコロナ禍になってからはなおさらそういう声もかからなくなりつつある。友人が少ないだけなのかもしれないが。


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以上の話がリクエストいただいた「イカサマに出くわした話」です。上記の内容は事実かフィクションかは皆様のご想像にお任せします。



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