秀ちゃん

人間は時として生きる意味を考える。過去にタイムリープしてみれば、そこに生きる意味を求め…

秀ちゃん

人間は時として生きる意味を考える。過去にタイムリープしてみれば、そこに生きる意味を求めた人間を見出すことができる。私は歴史や哲学を教えた教師であり、思春期の子どもや親に話をするプロとして研鑽を積んだ。情報に振り回されている現代人、生きる意味を見失いかけた人に読んでもらいたい。

最近の記事

キング牧師の闘いの始まり

 マーティンの父キングは、勇気と威厳のある牧師でした。マーティンは「この社会で、どれほど長く生きるかなど、どうでもいいことだ。絶対にこのまま差別を認めるつもりはない。死ぬまで闘い続けるよ。」と語った父の言葉を忘れたことはありませんでした。マーティンは普通より3年も早い15歳で大学に入学するほど優秀で、ソローの奴隷廃止論やマハトマ・ガンディーの非暴力の教えに強い影響を受けました。  このマーティンこそが、あのマーティン・ルーサー・キング・ジュニアという名の牧師です。1963年

    • 「イタリア・ルネサンス」二大巨匠の世紀の対決

       「ルネサンス」とは、中世のヨーロッパに広がった、文化・芸術・思想の動きです。14世紀にイタリアで始まり、16世紀まで続きました。「ルネサンス」はフランス語で、「再生」を意味する言葉です。当時のヨーロッで主流だった、キリスト教を中心とする思想から離れ、古代ギリシャや古代ローマ時代のいわゆる「古典文化」を「復興」させるという面があったことに由来します。古代の文化を手がかりに、芸術・建築・文学など各ジャンルで、人間らしさを自由に表現した新しいスタイルの作品が多く生まれました。  

      • アンネ・フランク一家の運命

         1945年1月27日アウシュヴィッツ強制収容所の病棟に臥していたアンネの父オットー・フランクは、ソ連軍によって遂に解放されました。そして、2月23日にはスイスにいる母親に手紙を書くまでに病状は回復します。その手紙の中でオットーは「エーディト(妻)と子どもたちの所在は分かりません。1944年9月5日に別れたきり、わずかにドイツに移送されたという噂を聞くだけです。3人とも無事でいてくれることを願うだけです。」と書いています。  3月になって、フランク一家が最初に収容されたヴェス

        • 「偉大なる魂」マハトマ・ガンディーの闘い

           「マハトマ・ガンディー」という人をどれほど正しく知っていますか。今日はガンディーの生涯を通して、「人間の大きさとは何か」について、考えてみたいと思います。  子ども時代のモハンダス・ガンディ―は、内気で、神経質な面を持っていました。彼は『自伝』に、「かつての私はとても引っ込み思案で、人と親しくつきあうのをさけるような少年だった」と記しています。  若くして結婚したガンディーは、単身ロンドンに留学し、1891年に弁護士資格を得ました。ガンディーは、ヒンドゥー教徒として育てられ

        キング牧師の闘いの始まり

          どんな失敗も新たな一歩となる

          ~発明王エジソン!ネバーギブアップ!!~  発明王エジソンが取得した特許は、1093件にも及びます。その中で三大発明といわれているのは、「蓄音機」「電球」「映写機」です。エジソンは、子どもの頃のしょうこう熱で片耳が不自由でした。  難聴だったエジソンは後に、自伝の中でこう述べています。「私は物音が普通に聞こえる世界から締めだされた。しかし、ばかげた会話や不用な騒音と無縁になったおかげで、実験と読書に集中できるようになった。」  身体も丈夫ではありませんでしたが、好奇心はとて

          どんな失敗も新たな一歩となる

          「怠るな!決して諦めるな!!」➂

          ~細菌学者コッホの飽くなき探究心~ シリーズ❶~❸ ❸「睡眠病」との闘い    1905年にコッホは結核研究でノーベル医学・生理学賞を授与されることとなりました。そして翌1906年、コッホは、当時、「睡眠病」が流行していたドイツ領東アフリカへ派遣されることとなります。    当時既に、多くの研究者が、多額の費用をつぎ込んで、アフリカで多発する「睡眠病」の原因の探求に乗り出していました。「睡眠病」は、発熱、悪寒、頭痛、リンパ節の腫れ、ときに発疹がみられ、やがて眠気や歩行障害

          「怠るな!決して諦めるな!!」➂

          「怠るな!決して諦めるな!!」②

          ~細菌学者コッホの飽くなき探究心~ シリーズ❶~❸ ❷結核菌の発見と「コッホの4原則」  なかでも最も世界を驚かせた発見は「結核菌」の発見でした。大昔から人類は死の病 「結核」に苦しめられてきました。当時、ヨーロッパで病死した人の7人に1人は結核によるものでした。遺伝病かとも思われていた結核を、コッホは感染症だと考え、その原因究明に乗り出しました。  しかし、病原菌といえる「結核菌」は、いくら顕微鏡に目を凝らしても発見することはできませんでした。菌の増殖のスピードがとても

          「怠るな!決して諦めるな!!」②

          「怠るな!決して諦めるな!!」①

          ~細菌学者コッホの飽くなき探究心~ シリーズ❶~❸ ❶炭疽病菌の発見    コッホとパスツールの二人によって、「病気の原因は微生物である」という病原菌説が確立されたことは、人類にとって画期的な出来事でした。肉眼では見ることのできない微生物という未知なるミクロの世界を解明し、恐ろしい伝染病から人類を救ったといっても過言ではありません。  かつては、微生物が空気のない環境でも自然に発生するという「自然発生説」が信じられていましたが、フランスの細菌学者ルイ・パスツール(18

          「怠るな!決して諦めるな!!」①

          六千人の命のビザ➂

          ~杉原千畝とその時代状況~ シリーズ❶~❸ ❸独断でビザを出す  杉原は、幸子夫人に、ビザを出すことを独断で決意すると告げました。すると、夫人は言いました。「あとで、わたしたちはどうなるかわかりませんけれど、そうしてください。」杉原が結論を出す数日前、長男の弘樹も、「助けてあげようね。かわいそうだから…。」と寂しそうにつぶやいていました。家族の気持ちが一つになって、杉原を後押ししました。彼らが生き延びるためには、リトアニアからソ連を通り、日本を通過して第三国へ脱出するしか

          六千人の命のビザ➂

          六千人の命のビザ②

          ~杉原千畝とその時代状況~ シリーズ❶~❸ ➋ユダヤ人問題への日本の対応    1940年7月18日、いつもは静かな住宅街にあるカウナスの日本領事館の玄関に人々が群がっていました。ポーランドから逃げてきたユダヤ人たちでした。  既にポーランド政府は亡命していましたが、決して降伏はしませんでした。最初はフランスのパリに、その後はイギリスのロンドンに移って、抵抗し続けたのです。この後、ポーランド亡命政府は、イギリス軍、フランス軍などの連合国の一員となり、ドイツ軍と戦い続けまし

          六千人の命のビザ②

          六千人の命のビザ①

          ~杉原千畝とその時代状況~ シリーズ➊~➌  ➊カウナス領事館での杉原の使命  第二次世界大戦という過酷な時代状況の中で、ナチスからユダヤ人たちを守るために、命の危険をおかした人もいました。ポーランドのユダヤ人医師で教育者のコルチャック先生は、彼の孤児院の子どもたちがトレブリンカ収容所に移されるとき、子どもたちから離れるのを拒み、自ら先頭に立って、子どもたちと一緒に収容所にむかいました。  オスカー・シンドラーのように、かつてはナチスの党員であったにも拘らず、否、むし

          六千人の命のビザ①

          「ハイリゲンシュタットの遺書」を読み解く」④

          ~甦った大作曲家ベートーヴェン~ シリーズ➊~➍ ➍ベートーヴェンの「革新性」と革命への予感    ベートーヴェンの音楽は、ハイドンやモーツァルトとは違った音楽に対する「革新性」をもっています。特に「ハイリゲンシュタットの遺書」以後には、その「革新性」を際立たせています。   ソナタの楽曲構成の成立と変遷、ソナタ形式の成立と変遷、変奏曲の扱い方、フーガの技法の応用等といった作曲技法や楽曲様式の変遷とともに、ベートーヴェンが成し遂げた飛躍・改革は、知れば知るほど、圧倒される

          「ハイリゲンシュタットの遺書」を読み解く」④

          地球に危機が迫っている~レイチェル・カーソンの真実の訴え~

            「ねえ、レイチェル。金曜の夜、ダンスパーティーがあるわよ。一緒に行かない?」「せっかくだけど行けないわ。その日は、別の約束があるのよ。」にっこり笑って断りましたが、ほんとうは別の約束などありませんでした。彼女はダンスパーティーよりも勉強したり、本を読んだりしたかったのです。それに、新しいドレスを買って出かける余裕など、レイチェルの家にはありませんでした。  このレイチェル・カーソンこそ、後に「歴史を変えた一冊の本」といわれた『沈黙の春』の著者です。カーソンは、アメリカの有

          地球に危機が迫っている~レイチェル・カーソンの真実の訴え~

          人間の尊厳について

          ~アレックス・ヘイリーの『ルーツ』~  アメリカの作家、アレックス・ヘイリーが『ルーツ』(ROOTS)という小説を書いたのは、1976年です。600万部を超える大ベストセラーとなり、ピューリッツァ賞を獲得しました。全米で当時史上最高の平均視聴率44.9%を獲得したこの作品のテレビ・ドラマ(ABC放送で1977年1月23日~30日まで8日連続放送)が日本でも放送され、大きな反響を呼びました。  この作品の題名の『ルーツ』というのは、「根っこ」という意味だそうです。黒人奴隷たち

          人間の尊厳について

          労働者は解放されなかった➂

          ~マルクス主義の史上最大のミスリード~ シリーズ➊~➌ ❸重層防御構造~逃げ延びるマルクス主義~  それもそのはず、『資本論』は、あくまでも資本主義社会の分析をもとに描かれた未来予想図であって、資本主義社会に重要な警鐘を鳴らした名著であることは間違いありませんが、共産主義社会の分析や設計図を示してはいません。  もし、マルクスが生きていれば、成熟した資本主義社会とは程遠かった当時のロシアが戦争継続に反対する国民の不満に乗じて、一国で革命を成し遂げてしまったことに、「えっ、

          労働者は解放されなかった➂

          「ハイリゲンシュタットの遺書」を読み解く➂

          ~甦った大作曲家ベートーヴェン~ シリーズ➊~➍ ➌甦った大作曲家  「遺書」を認(したた)めたベートーヴェンは、この後すぐに分厚いスケッチ帳を抱えてウィーンに戻り、これまでにない充実した筆致で次々と傑作を完成させてゆくのです。  自殺をほのめかす程追い込まれたベートーヴェンが、死の淵から生還し、芸術家としての使命に目覚め、過酷な運命に挑み、演奏家としてではなく作曲家として復活しようという「遺書」の劇的な内容は、翌1803年から1804年にかけて完成される『英雄交響曲』の

          「ハイリゲンシュタットの遺書」を読み解く➂