ディランを見て死ね
目を閉じて聴く。
椅子にかけて体を小さく揺らしながら。
いつのまにか曲が始まって、唐突に終わる。
旋律らしきものよりも、言葉と声がある。
それを乗せる舟のような演奏。
「昔からしゃがれてたから、声が歳とらねえんだな。張りもあるし」
「ボブ・ディランのハーモニカを聴けた。もういつどうなってもいいや」
地球が新型コロナの急拡大に見舞われた2000年春、来日公演がキャンセルされた。
そのときすでに70代も終盤にさしかかっていた。次、来日してくれる日が来るだろうか。
果たして、来てくれた。オン歳81歳。
初めての生ボブディラン。
ピアノを奏で、声を張る。
サポートメンバーはリズムに徹する。
それが心地よい。
これまでの人生でもっともクオリティーの高いライブだったな。たぶん。というか、これまで観てきたポップミュージックとはちがうなにかだから、比べられないし、比べるまでもない。
きっとまた来てくれる。そのときまた来よう。
ディランを見て死ね、だ。
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