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人間力を磨く最高の研修とは

とある企業の管理職の方とひょんなことからご縁ができ、その企業の方々を学校にお招きしての研修を受ける機会に恵まれた。
棚から牡丹餅の幸運であり、勿体無いことなので、学びの備忘録も兼ねてこちらへシェアする。

一つの問いかけや事象に対し、どう対応するべきかという話があった。

例として
「落ちているごみをどう拾うか」
というごく些細な状況を考えてみる。

もし何らかの清掃活動中で、敷地内にごみが落ちていれば、当然拾うだろう。
しかしその時、しゃがんで拾うべきか、そうでないかというのは、考えるべきところである。
もし人混みの中、多方向に人々が行き交うような場所であれば、しゃがむのは得策と言えない。
極端な話、渋谷のスクランブル交差点のど真ん中でしゃがむような状況を考えれば、次のようになる。

しゃがむことで他者の視界から消える
→自分が他者にとっての障害物になる
→危険

こう考えた時、「安全」を最優先するのであれば、しゃがまずに立ったまま拾う手段を講じる必要がある。
柄の長いタイプのちりとりと箒を使うとか、長いトングを使うとか色々ある。
ごみを拾う程度の短い時間ならばまだしも、こぼれたものを拭くなどの少し時間のかかる作業であれば、尚更しゃがまない方がいい。
また、拾うこちら側の腰が悪いという状況があれば、環境がどうであってもしゃがまない手段をとる方がいいだろう。

つまり、正解は、時と場所、自分と相手の関係などの、あらゆる状況によって変化するという。
ここを考えて実行できることが肝である。

「常識」「マニュアル」を基本の拠り所としながらも、そこに状況に応じて必要な変化を加えること、と解釈した。

例えば自分がコンビニの店員だとする。
客がゼリーやプリンを買っていれば、当然「スプーンはお付けしますか」と尋ねるだろう。
これは「常識」「マニュアル」レベルの話である。
基本的にはこれでいい。

しかし一方で、これが常連さんで毎日同じプリンを2つ買ってスプーンを付けると知っているとする。
「スプーンを2つ入れておきます」とこちらから言う手もある。
何も言わずに2つ入れておく手もある。
もうよく知った顔でお喋りが好きそうな相手であれば、笑顔で「これ、美味しいですよね」と一言声をかけることもあり得る。

こういったことはホスピタリティ、おもてなしの精神である。
どれが「正解」かは分からないものの、今までの知識と経験を総動員して、最大限に心と頭を使って配慮し、手を使って実行するのである。

ずっと以前にメルマガで書いたことだが、1リットルの牛乳を(珍しく)コンビニで購入した際に
「ストローをお付けしますか」
ときかれて、びっくりしたという話を書いたことがある。

更にしばらくしてから、またびっくりした。
実際に高校生たちがコンビニの前で1リットル紙パックのコーヒー牛乳その他を、ストローで飲んでいるのを見たからである。

つまりその時は店員の対応を「非常識」だと感じたが、実は配慮だったのかもしれないのである。
(1リットルをストローでいける若者と「同類の健康人」と見なしてもらえたと思えば悪くない。)
ただ、こちらとしてはあまり有難くはなかったので、まあ失敗だったともいえる。
その「失敗」は今後の改善のための材料にしていけばよいのである。

こういった「最適解」を求める一連の作業について、

ためる(知識・経験)→使う(実行)→考える(洞察)

という三角形のサイクル図で示されていた。
心の知能指数(EQ)を高めるサイクルであるという。
これを、日々、常々心がけることが大切だという。
つまりは「日常」こそが、レベルアップのための基本である。

素晴らしい一回の研修で人間が激変するということはない。
それらは一つのきっかけ、入り口に過ぎない。
要は、そこで学んだことを日常のあらゆる場面において、実行し続けられるかどうかにかかっている。

教員研修も同じである。
研修自体に意味はある。
しかし、学んだことを同僚や子どもに対し、実際に実行していくかどうかが全てである。

子どもは日常的に「問」を投げかけてくる。
「先生、○○していいですか」
とか
「どうして〇〇なの?」
とか
「〇〇しようよ」
など、日々判断を迫られる場面には事欠かない。
「今、それかー!」
と心の中で絶叫してしまうような状況に陥ることもしばしばである。

「さあ、あなたはこの状況にどう対応する?」
と問い続けられている日々ともいえる。
日常が修行の場であり、成長の機会である。

このハードワークに耐えるには、心身の健康がベースである。
心身に余裕のない状況で問われれば、とんでもない反応をしてしまいかねない。
パフォーマンス面を考えても、心身の健康は最優先事項であるといえる。

またこれは、自分最優先でいいという話ではない。
同僚とのコミュニケーションが円滑であれば、心身両面に大きなプラスになる。
休みたいタイミングで気兼ねなく、気持ちよく休みをとれるのも、同僚との普段の関係性が大きい。
子どもだけでなく同僚に対してもホスピタリティを互いに発揮できれば、みんなが幸せに働けるというより良い結果がついてくる。

この企業では、社員同士にも
「ありがとうカード」
を贈り合う習慣があるという。
かつて自分の学級でも「にっちもさっちもいかない状況」から出たアイデアで実行したことがあるが、劇的な変化があった。
企業でも実行されるほど効果があるということである。

人間関係の向上も仕事のスキルアップも、日常から。
人間力を磨く最高の研修の場は、日常にこそある。
日常に出会う人々を大切にし、日々研鑽を積むことの大切さを学ばせていただいた貴重な時間だった。

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