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バド・ストーリー (四天王編Ⅱ) (7)

医療ライターの三浦秀一郎です。バドミントンが好きで、小説を書きました。前回の四天王編に続き、四天王編Ⅱを連載します。お読み頂ければ、光栄です。


バド・ストーリー (四天王編Ⅱ) (7)

 マネージャー・島田の決意は固いものであった。その理由は言わずもがな、皆に迷惑をかけたことに対しての責任を全うしたいという強い決意があったからである。

 部長の志保は、辛い決断をした。顧問の川島と相談し、退部届を受理したのである。志保は、別れ際に島田に言った。

「いつでも帰っておいでね。皆が待ってるよ―」

 島田の目頭には今にも溢れそうな涙が盛り上がっている。そして「さよなら―」と言って島田は去って行った。

 島田の補充は、どういう訳か、一年生の二人がかって出た。知美が戦略的に動いたようである。マネージャーの人選に関しては特にクラブ会則に規定はない。慣例として、上位の学年二名で構成するという慣わしがあった。しかし、知美は、二年生を飛び越えて、一年生に白羽の矢を立てたのである。勿論、その理由はプロジェクト・チームの皆に説明され、承諾の下で進められていた。

 ところで、考えてみると、教科書にはマネージャーの重要性とその役割の記載がほとんど見あたらない。また具体的な指標も示されていない。最強のチームづくりには、このマネージャーの役割が不可欠と言っていい。

 高校総体まで残り二週間となった。「S・C」と「G・G」作戦のプログラムは、この一週間を最大の山場と位置づけている。それは、強化選手の完成度を皆で確認し合い、DVDに記録しようとする企画である。そして、残りの一週間で休養をとり、同時にイメージトレーニングに入っていくのである。

「ねー、きらら、バックからのスマッシュとドロップなんだけど、もう少し工夫が必要なんじゃなあーい。ほら、ここの所、ドロップを打つのが見え見えだもん。右肩をもう少し後ろに引かないとスマッシュは飛んでこないと見破られてしまうんじゃなあーい……」

 と百花がスクリーンをレーザーポインターで指し示した。部長の志保は、なるほど、彼女の指摘の通りであると感嘆の声をあげた。きららの癖が強化プログラムに入ってから、副作用的に表れたものと考えられる。速いプレイを意識するあまり、強打のスマッシュを打つように十分に右肩を引かずに手打ちの傾向が出ていたのだ。百花の分析力は大したものである。

 その週の土、日でプロジェクト・チームは最終確認の目的から『シミュレーション大会』を企画した。冒頭、部長の志保から説明があった。

「この二日間で競合校のプレイパターンのシミュレーションを完璧に習得してください。相手を知り尽くしたというところまでチェックをお願いします。また、マネージャーは戦略資料をいつでも提供できるよう、強化選手のフォローをしてください―」

「はい、了解しました―」

 と体育館には力強い叫び声が木霊した。ところが、これで終了かと思われたが、部長・志保の説明はさらに続いた。

「ところで、皆さーん、今日は面白いビデオを上映します。しっかり見て、覚悟するのよ。資料提供は、映像解析担当のジージーです……」

 と言いながら、デッキのスイッチをスタートさせた。なんと、字幕タイトルは『癖、なー』であった。皆は、頭を傾げた。よく意味が分からない。しかし、この後、大爆笑事件が発生したのである。          つづく