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バド・ストーリー (四天王編Ⅱ) (5)

医療ライターの三浦秀一郎です。バドミントンが好きで、小説を書きました。前回の四天王編に続き、四天王編Ⅱを連載します。お読み頂ければ、光栄です。


バド・ストーリー (四天王編Ⅱ) (5)

 志保はあまりのショックで、ファミレスからどのように帰ったのかその記憶がはっきりしない。クラブの部長として今までくじけずに一生懸命やってきた。その自信はある……。そして、クラブ員全員からも、高い信頼を得ていると思っている。それ以上に志保は、皆を深く愛していた。情報のリークなど絶対あり得ないことだ。原因はどこか別のところにある。いや、絶対にそうだ……と確信をした。

 志保は、翌日プロジェクト・チームに緊急の集合をかけた。事は穏便に、しかし、早急な対策は必須と判断したのだ。練習時間終了後、関係者はそれぞれバラバラに校長室となりの会議室に集まった。この会議室であれば会議内容が外に漏れることの心配はない。

 メンバーのジージーは外部から電話回線で会議に参加してもらった。冒頭、部長の志保から前置きの説明があった。そして、「知美、今までの分かっている情報を皆に説明してくれない―」と言って主役を譲った。

「了解!」

 といって副部長の知美が事件の概要を説明し始めた。二日前、練習を終えての帰宅途中、JR市川駅で西武台東高校の副部長から突然呼び止められ「G・G作戦とか練習をやっているそうじゃない。一人ひとりの欠点を見つけて、シミュレーションやったって私たちは負けないわよ―」と挑戦状を叩きつけられたというのだ。

 しーんと冷気が流れた。皆は同じキーワードに注目をした。一つは「G・G作戦」であり、もう一つが「シミュレーション」であった。挑戦状の内容から考えると、あまりにも具体的すぎる。誰が?どこから洩れたの?

 沈黙の時間が静かに流れてゆく。

「きらら、お願いがあるんだけど、この対策のリーダーになってくれない……」

 志保の突然の指名に皆は目をパチクリさせ驚いたが、当のきららは全く躊躇せず、あっさりと言い放った。

「了解、犯人を見つけてとっちめてやりましょう。皆さんも協力してください―」

 ときららが、鬼の形相でその決意を披露した。しかし、事件の解決策はそう易々と出てきそうにない。そして確実に難事件になりそうだと皆は予想した。

 結局、会議では打開策は見つからず、情報交換のレベルであっさりと終了することになった。すると突然、例のジージーが電話の向こうから初めて発言をした。

「川島先生、後ほど携帯にお電話を頂けないでしょうか……」

「ああ―、いいですよ。了解しました……」

 その会話の意味は不明だが、それを合図に散会となった。きららは下校時、部長の志保に声をかけた。帰宅方向が一緒だったことも幸いしている。商店街を抜けると空は眩いばかりの星屑が、今にも降ってきそうである。しかし、今の二人の心はどんよりとした黒雲で悲しく覆われている。

「志保、詳細な情報が流れていたと仮定すると、その分析情報はレポートのような紙ベースじゃないかしら?でも、データはマネージャーが厳しく管理してるし……。部員のメモが流れたとしても、意図的に流す部員は絶対いないしね!……なんか、偶然、知らない間に見られたという推理が成り立つんだけど……」

 なんと、きららの分析は驚愕するほど事件の核心にせまるものであったのだ。                             つづく