バドストーリー02

バド・ストーリー(四天王編) あとがき

医療ライターの三浦秀一郎です。バドミントンが好きで、10回連載の小説を書きました。あとがきです。


〇 あとがき

 2020年のオリンピック開催が東京に決まり、バドミントン界も選手を含めて、業界全体が動き出しているという印象を受けます。また現役選手の海外における素晴らしい活躍もありますが、マスコミの報道の通り、若い選手が多く育ってきていることは非常に喜ばしく、大いに期待するところです。

 我々、学生時代からプレイを楽しんでいる一般のプレイヤーも、バドミントン競技の知名度が益々アップしていくことを切に願いながら、身近なところで何ができるかを考え、少しでも競技の発展に貢献していくことが必要であると感じています。

「バド・ストーリー(四天王編)」は、実在した四人の高校生がモデルです。(1)で述べている登場人物の各々の進路目標の記述は、彼女等の実際の進路そのものになっています。一人は医師となり、二人目は千葉大を卒業して教師となり、三人目は天文学者となり、さらに最後の一人は放射線技師となって、現在は医療機関に勤務しています。

 彼女等は、一流大学を目指す進学校の生徒であったのですが、小さい頃にバドミントンに出会い、そしてその成長過程で様々なドラマに巻き込まれていきます。そしてそのはまってゆく姿は、一言で言えない凄まじい物語があったのです。その点にヒントを得て、四天王という彼女等が登場人物となっています。さらに、彼女等は戦略的にいろいろな情報を集め、最先端の理論を取り入れながら、着々と強化を図ってゆくところに面白さがあります。

 ストーリーを展開していく中で、実際に彼女等が集めていった資料の収集が必要であり、各出版物を調査し、時間軸で歴史を紐解くことが必要となりました。その組立にたいへん苦労したことを覚えています。

 全国的に強豪と言われる学校は、以前、バドミントン・マガジンでも紹介されましたが、伝統を基盤にしてトレーニング方法を確立しながら、日々アップデートして上を目指すシステムを構築しています。

 県立船橋中央高校は、そういう意味のノウハウが確立されていない中に、『四天王』が登場し、数々の試合で打ち勝つ様を表現しました。自画自賛になりますが、そこにストーリーの面白さがあります。

 また、奇遇なことに四天王の彼女等は、小学生の頃、社会人クラブでバドミントンに出会い、中学生のときにクラブ活動に入って、各々の大会に出て戦った関係にあります。そして、偶然同じ高校に入り、新入部員説明会で再会するという運命をたどっています。しかし、そこには、入部したクラブの成績は長年地区大会で一回戦負けが続いていて、県で上位の進学校であるにも関わらず、愛好会的部活動を続けていたという環境があったわけです。

 ストーリーは、軟弱な部活動の中で短期間に理論的な練習内容を取入れ、バドミントンプレイヤーが身に付けるべき、技術・戦術・体力・気力の重要性を確認しながら、プレイヤーの目線で展開していきます。これ以上「楽しむこと」は、経験できないという究極の領域に迫っていきます。そして、そこで試合の中で考えることの重要性といかに基礎を応用するかの大切さに気付きながら、予想もつかない流れで展開していきます。

 結局、県立船橋中央高校は準優勝に終わるのですが、この短期間で積み上げたノウハウは次のステップに生かされ、次の「楽しむこと」のストーリーに引き継がれてゆきます。つまり『バド・ストーリー(四天王編)』で終わることなく『バド・ストーリー(四天王編Ⅱ)』への進展となる訳です。ぜひ、『バド・ストーリー(四天王編Ⅱ)』も読んで頂きたいと思います。

 少し年代の上のバドミントン経験者が、学生時代の先輩・後輩の上下関係を振り返って最近の「暴力・いじめ」を見るときに、一部は同等かそれ以上の厳しい環境であったと言います。一例ですが、うまい一年生が入部すると一種の「いじめ」が横行するケースもあったようです。その意味では『バド・ストーリー』に登場する高校の環境は「実力を認めて、皆がレベルアップする……」というポジティブな環境下にありました。また、登場してくる「ジージー」も外部の経験者であるのですが、顧問の川島から「コーチ」の依頼を受けて正式に指導するという立場の設定になっています。

 最後に、この小説を連載するにあたり、多くの取材を行いましたが、いくつかの問題点にも気がつきました。キーワードで言うと ①各クラブと各大会の会計報告は? ②シャトルの行方は? ③審判育成のマニュアルは? 等です。キーワードのみ紹介させて頂きますが、またの機会があれば何らかの方法で一緒に考えてみたいと思います。

 公益財団法人 日本バドミントン協会の平成26年度事業報告によれば、その会員登録数は約26万人となっています。しかし、登録外で各地区の一般のクラブ数、小中高のクラブ数、大学の愛好会を含めた部数を考えると、プレイヤーはその倍、5倍、10倍以上を想定できます。そうした環境を喜びながらも、一人のプレイヤーとして少しでも上記の問題点を自覚し、その改善と、更なるバドミントン競技人口の拡大という目標意識も2020年に向かって、必要ではないかと考える次第です。

 今回、以前からあたためていた『バド・ストーリー(四天王編)』を発表する機会があり、思い切って連載することに決めました。このようなチャンスを与えてくださった「株式会社ピースオブケイク」様には、心より感謝と御礼を申し上げます。また、所属しております「ライターズ・ネットワーク」の関係者にも、厚く御礼を申し上げます。


【参考資料】

1. バドミントン 競技規則  公益財団法人 日本バドミントン協会

2. バドミントン教本 基礎編 公益財団法人 日本バドミントン協会

3. バドミントン教本 応用編 公益財団法人 日本バドミントン協会

4. バドミントン教本 ジュニア 公益財団法人 日本バドミントン協会

5. バドミントン教本 Q&A 公益財団法人 日本バドミントン協会

6. バドミントン100問集 日本教職員バドミントン連盟 ㈱有興企画

7. バドミントン B.B.MOOK545 スポーツシリーズ No.419 

8. バドミントン ダブルス編 B.B.MOOK686 スポーツシリーズ No.557

9. 中学バドミントン B.B.MOOK819 スポーツシリーズ No.689

10.目でみるバドミントンの技術とトレーニング ㈱大修館書店

11.基本レッスン バドミントン ㈱大修館書店

12.バドミントン上達テクニック 実業之日本社

13.基本・バドミントン 成美堂出版

14.コーチングforバドミントン ㈱ベースボール・マガジン社

15.DVDでよくわかる!バドミントン ㈱西東社

16.見てわかるバドミントン ㈱西東社 

17.バドミントン教室  ㈱大修館書店

18.陣内貴美子バドミントン入門 ㈱大泉書店

19.バドミントンのすすめ 基本を学ぶために ㈱ベースボール・マガジン社

20.確実に上達するバドミントン 実業之日本社

21.バドミントン ㈱西東社  著者 銭谷欽治

22.うまくなる!バドミントン ㈱西東社 

23.Do Sports Series バドミントン 一橋出版株式会社

24.シャトルに訊け! ㈱ベースボール・マガジン社

25.バドミントンパーフェクトマスター 株式会社新星出版社

26.シャトル博士のバドミントン教室 ㈱ベースボール・マガジン社

27.公益財団法人 日本バドミントン協会 ホームページ

28.各バドミントンクラブ・ホームページ           以上