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バド・ストーリー (四天王編Ⅱ) (6)

医療ライターの三浦秀一郎です。バドミントンが好きで、小説を書きました。前回の四天王編に続き、四天王編Ⅱを連載します。お読み頂ければ、光栄です。


バド・ストーリー (四天王編Ⅱ) (6)

 緊急会議の後、例のジージーは川島先生と情報交換をしている。それは個人情報に絡む機事であったことから、生徒の前で行う戦略披露は危険と考えた。しかし、後々分かったことだが、きららの分析とジージーの対策の核心部分は、ほぼ一致していたのである。

 県船女子バドミントンクラブの専門鍛錬期の強化選手は、順調に力をつけていった。しかし、例の未解決事件の行方は一向に糸口さえも見つからない。大会まで残り四週間となった。すると事件はその解決へと急展開を見せ始めたのである。

 部長の志保と副部長の知美が顧問の川島に呼ばれた。例の校長室となりの会議室である。部屋に入ると、何故かマネージャーの島田が目を真っ赤に腫らしてボタボタと大粒の涙を流しながら、椅子にうずくまっていたのである。二人には皆目見当がつかない。

「島田さん、いったいどうしたの……」

 と知美が心配そうな顔つきで声をかけた。それに反応して、会議室の地べたに島田は土下座を始めた。

「部長、副部長、本当にごめんなさい……」

 と言い、さらに号泣状態となった。少し、間を置くことにした。

「実は、島田の妹さんらしいんだ。問い詰めると、情報を漏らしたことを認めたそうだ。島田は、『G・G作戦』のメモの整理を家でやってたそうなんだ。そして妹さんが偶然、机の上の整理ノートを見てしまった。実は島田の妹さんは、西武台東の一年生なんだよ……」

 と顧問の川島は、淡々と二人に辛い事実を一方的に語った。志保と知美は、最初その事実を聞いて唖然としたが、もうすでに頭の中には改善策が浮かんでいた。

「島田さん、ありがとう。よく教えてくれました。あなたは立派よ。それでこそ私たちの仲間だわ。今回のことは無かったことにしましょう。それでいいわね……」

 と部長の志保が周りを確認しながら、提案すると、顧問の川島は一人納得しながら「うん、うん、それがいい。それがいい。それでいこう……」とあっさり、片付けてしまった。

 島田は、ガックリと肩を落として「申し訳ありませんでした」と会議室から俯いたままで出て行った。その後ろ姿は、いつも体育館で大声を張上げているパワフルな島田とは別人のように見えた。

 翌日、プロジェクト・チームから集合の指示が出た。部長の藤井志保から「G・G作戦Ⅱ」の連絡である。戦略の漏えいを前提とした対抗策の連絡である。想定される競合選手の対策に対して、更なる対抗案を立案するというミッションである。緊急集合の指示を受けた強化選手たちは、以外にも冷静であった。理由が何かを訊ねる者もいない。知美は「いつもあんなに、なぜ、なぜと煩く問い詰めてくる連中なのに……」と不思議な違和感を持った。

 指示が終わると、すぐさまプレイの流れは、家系図に似たチャートに置き換えられた。メンバーの顔つきは、まるでこの作業を精一杯楽しんでいるようにも見える。

 数日後、マネージャーの島田が退部届を出してきた。顧問の川島と部長の志保は、全く予想していなかった訳ではない。今回の件では、ただ一人の脱落者も出したくないという気持が本音である。二人は、島田に対して強く退部を慰留したが、彼女の意志は固いものであった。                   つづく