女性アスリートのエネルギー欠乏

今回の記事は、パーソナルトレーナーやコーチを目指す人なら必ず頭に入れておかなければならない女性アスリートのエネルギー不足(RED-S)について書いてみたい。

以前までは一部のアスリートで観察されていたRED-Sが、近年のトレーニング・運動志向の高まりにより一般的になりつつある。

すでに知識と知っている人もいると思うが、RED-Sによる体調不良を経験する女性アスリートの割合が増えこそすれ減少しない以上、指導者側の知識のブラッシュアップは必須だろう。

RED-Sは2014年に国際オリンピック委員会(IOC)がカロリー摂取不足および/またはエネルギー消費量の過多として指定し、低エネルギー利用能(LEA)が健康およびパフォーマンスに及ぼす影響を説明するもの。

エネルギー利用能(EA)は、身体活動によるエネルギー消費量を差し引いた後の生理機能維持のために利用できる食事エネルギー量、または、個人の除脂肪体重も考慮したエネルギー摂取量(EI)と運動中のエネルギー消費量(EEE)の差として定義されている。
RED-Sの背後にあるメカニズムがLEAである。
最近の研究では、女性のレクリエーション運動者の45%がLEAリスクを有することが示され、男女のエリートユースアスリートの両方にLEAの高有病率(男性:56%、女性:51%)が確認されている。

LEAは特に持久系女性アスリートでよく観察され、身体的、心理的、精神的能力の早すぎる低下につながることが報告されている。
これは、女性アスリートのエネルギー摂取量が、必要量(マクロ栄養素と微量栄養素の両方)を満たすには不十分なことが多事に起因している。
体脂肪を極端に落とす競技の人気上昇など、競技趣向の多様化もLEAの流行に拍車をかけている。

中長期的にアスリートの健康状態を悪化させる主な病因の一つとしてLEAは大きく関与し、不可逆的なダメージを与える可能性がある。
LEAは持久系女性アスリートの安静時代謝率(RMR)の低下と相関があり、アスリートのトレーニング負荷の増加によってRMRは著しく低下する。

さらに、LEAは呼吸器感染症への感受性を促進し、血中脂質レベルに悪影響を及ぼす可能性がある。
長期にわたる食事制限は、グリコーゲン貯蔵量の枯渇、タンパク質合成の阻害、また質の高いトレーニングの阻害を通じて運動能力に悪影響を及ぼす。

心理学的要因がRED-Sに先行することもあるが、LEAは重大な心理的苦痛をもたらすこともある。

LEAに加えて、内分泌および代謝反応における性差の観点から、男性よりも女性においてLEA脆弱性が示されていることから、今回の記事は女性アスリートとLEAについてデータを元に考察していきたい。

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