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#黒毛和牛 ~歴史から学び、私のこれから~

こんにちは。
今日は黒毛和牛の歴史を勉強する上でとても重要な『前田周助さん』に関する本を読んで感動をしております。、
『牛飼い小僧・周助の決断~君は世界を変えられるのか~』(著者:香川宣子氏)

『前田周助さん』が兵庫県の小さな小代村を牛の産地にして、村の人々の生活を豊かにしたいとの純粋な想いを諦めず持ち続た結果、究極の雌牛に出会い、但馬牛(たじまうし)のルーツが出来ました。そこまでたどり着くのに15年もの歳月がかかりましたが、無名の人物が自らの意志で村を変え、理解者の輪を広げた行動力。その想いと情熱、行動力から『諦めず地道に進めば必ず道は開けてくること』を教えて頂いた気がします。

ということで現時点において、私が何を今後目指しているのか、どんなことをやりたいと考えているのかを書いていこうと思います。

〇黒毛和種の歴史について

 まずは、黒毛和種の歴史をまずは説明したいと思います。

 和牛≠黒毛和牛ではありません。和牛には4品種(黒毛和種、無角和種、短角和種、褐毛和種)あります。
 国内での生産されている殆どが黒毛和種であり、私もこの黒毛和種(黒毛和牛)の魅力を国内外に広めていきたいと思っております。

 江戸時代、明治時代は農耕用として、多くの農家が1頭牛を飼育しておりました。兵庫県美方郡小代村という小さな村に、『前田周助』という幼少期から大の牛好きで、牛を見る確かな目を持っていた人がいます。その前田さんが村中の牛を全頭調べ、15年の歳月を経て隣村にいた優秀な雌牛に出会い現在の但馬牛の前身となる『小代牛』の血統を確立させました。
 遺伝子工学などの学問が普及していない時代において、良質な雌牛から良い血統の子牛が生まれることを気がつき調べ上げたことになるので、凄いことです。
 その後、『前田周助さん』の死後30年が経ち、大きな体格にしようと外来種との交配を試みるも、日本の地形に合わず、牛の気性も荒くなるなど失敗に終わりました。そのことに気が付いた頃には周助さんが確立した血統が殆ど残っておらず、危機を迎えます。しかし、もう一度血統を取り戻そうと戦後から本格的な取り組みが行われ、人里離れた場所に周助さんが残した血統の4頭が奇跡的に残っており新しい血統を形成出来たのです。
 そして、小代村の『田尻松蔵さん』宅で『田尻号』という雄牛が誕生し、これが現在の但馬牛のみならず全国のブランド牛といわれる祖先になっております。
 牛飼い(生産者)の方であれば、この『田尻号』の名前を知らない方はいないと思います。(生産者の方、私の浅い知識で間違いなどあればご教示いただけますと幸いです。)

〇現在の黒毛和種における生産の流れについて

 次にどのような流れで消費者までお肉が届けられるのかを説明したいと思います。

流通の説明

 簡単に流れを記載すると上記の図になります。現在では、繫殖と肥育を一貫して行う農家さんも増えてきています。

 ここで、私が強調したいことは『命のバトンリレー』です。
各プロフェッショナルの方々が牛という命を頂いて仕事をしており、その命のバトンリレーで消費者まで届いているということを知って頂きたいと思います。

〇格付けについて

 焼肉屋さん、お肉屋さんなど多くの場所で『A5等級』などの表記を目にすることが多いと思います。
 本来は生産者さんの評価付けであったり、枝肉の取引市場において全国統一した規格で取引できるように定められた格付けであります。その格付けが、マスメディアなどを通じて消費者の方々まで知るようになったという経緯があります。

 まず、A・B・Cは『歩留り(ぶどまり)等級』という評価で、Aが最もよい評価ランクになります。ここでの歩留りは枝肉からどれだけのお肉が取れるかということを示しています。そして、決められた箇所の測定値を計算式に当てはめ算出した数値からA・B・Cのランクが確定します。

 つぎに、1~5は『肉質等級』という評価で、5が最も良い評価ランクとなります。肉質等級には「脂肪交雑(霜降りの度合い)」「肉の色沢」「肉の締まり及びきめ」「脂肪の色沢と質」の4項目を評価し、最も低いランクを肉質等級に決定しています。
 ここで、さらに難しい部分は脂肪交雑にはビーフ・マーブリング・スタンダード(B.M.S)という1~12まで霜降りの度合いを判定する軸があります。

 専門的な部分でもあるため、この辺は『へぇー、そうなんだ』程度に流して読んで頂ければと思います。

私が考える現時点での黒毛和種(黒毛和牛)における課題 
  

消費者が求めるニーズと生産のギャップ
 30年前オレンジと牛肉の貿易自由化に伴い、黒毛和牛の『霜降り』で外国産牛肉と差別化を図っていこうとなり品種改良を行ってきました。その結果、現時点でどのように肥育しても霜降りが入るレベルに到達しました。そして、多くの生産者の方々は、生産コストなどもあるため市場で高く競り落とされる『A5等級』を目指して生産を行われます。
 しかし、現在の消費者のニーズは赤身嗜好が強く、バシバシに霜降りが入ったお肉を好まない傾向が強く、ギャップがあるように感じています。

格付けの限界
 
昭和50年に設立された格付け協会によってこれまで牛肉は流通を行ってきました。
 しかしながら、多くの消費者にも知れ渡たり、格付けの定義など細かな部分を知らず『A5等級』という言葉だけが独り歩き、肉の良し悪しを決められているように感じています。
 また、格付けの評価ではあまり評価されないが、良質な味があるお肉も生産者の努力によって出来てきております。
 『霜降りという見た目(肩の切開面)だけの判断には限界が見えてきたように感じます。 

お肉を切るカットマンの不足
 町のお肉屋さんが少なくなり(高齢化や跡継ぎ問題など)、スーパーにパック詰めされたお肉が並ぶことが多くなっていると思います。
 パック詰めもセントラルキッチンなどで、流れ作業のように行うことも多く、1頭1頭違う肉質を見極めてカットする職人が減っているのが現状です。それは、お肉を切る仕事の魅力が広まっていないこともあるかもしれません。


課題を踏まえて私がこれから取り組みたいこと

繫殖農家に至るすべての農家さんとの連携して新しい黒毛和牛の創造
 
私が精肉店で働いていた時、部分肉が入荷してお肉を切り販売という流れがもっと生産者と繋がれば、フィードバックが出来てより黒毛和牛のレベルを向上できると感じていました。
 『三つ子の魂百まで』というように、牛においても子牛を育てる繫殖農家さんがとても重要だと思います。なぜなら、お肉にするまでの20カ月間を育てるには子牛の時に、どれだけ丈夫な胃袋や骨格を形成しておく必要があるからです。
 また、もし仮に外国へ和牛の種を持ち出し、生産しても日本の黒毛和牛と同じ品質レベルには絶対ならないと言われております。
 それだけ、日本の生産者さんがプロフェッショナルであり、誇れる財産だと思います。
 その先代の財産を受け継ぎ、新しい風を取り込みこれからの黒毛和牛について議論したいです。

 そして、『霜降り』だけの評価ではなく、『味』『肉質』『モノ不飽和脂肪酸』など新しい黒毛和牛の評価を構築できればと思います。
 
 ②食育、カットマンや黒毛和牛生産の担い手の普及
 
今、農業大学校などで将来牛飼いを目指す学生さんが増えていることも聞いています。
 情報化技術などの進歩に伴い、3Kと呼ばれてきた畜産業も大きく変わってきました。
 これまで、『井の中の蛙』としてクローズになってきた(私が個人的に感じているだけかもしれませんが・・)生産の流れなどを、私はお肉を切るということを通じて国内外の多くの方へ発信していきたいと考えています。
 それは、『命を頂く』という食育にも通じ、さらには未来の担い手育成にもなるのではないかと感じています。

総じて、何がしたいんじゃ!と言われたら、

世界に誇る『黒毛和牛』の国内外へ魅力を発信し、先代の歴史に学びこれからの時代に相応しい新しい『黒毛和牛』を、多くの諸先輩方と新しい担い手と共に創造していきたいです!

今回もとてつもなく長くなってしまいました。
語りたい想いの一端を書けたかなぁと思っています。これからも多くの方と出会い、勉強させて頂き『前田周助さん』のように諦めず無名の1人でも熱い情熱があれば変えられるとの想いを胸に日々1歩1歩自分のペースで歩んでいきます。

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