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いつか記憶からこぼれおちるとしても

きのうの夜、露天風呂のへりに腰掛けて、これからの生活について考えて、それから髪を乾かして、アイスクリームを食べて帰った。
これからなんだってできる(それは、なにもしないことだってできる)し、どこへだって行けるけれど、いつまでもひとりでいることについて考えた時、少しだけ途方に暮れそうになった。
みんな、どんなことを考えながら生きてるのかな…

普段、脳のすみに潜んでいる記憶は、日常のふと目に入ってきたほんの些細な景色や情報で蘇ってしまう。
叔母の実家にある叔母の部屋の壁紙は空柄で、出窓があったこと。そしてあの家で唯一ベッドがあったこと。
それから、父の部屋は廊下を挟んで反対側にあって、昔、父が部屋で煙草を吸うようになった時、祖父が部屋に換気扇を取り付けた話を聞いたこと。
わざわざ違うところに住んでまで、こんなことを思い出したりしてつくづく人間って不思議だ。

生活に慣れると読書が滞る。続きが読みたいけれど、眠気やごろごろしたい気持ちに負けてつい本は閉じられたまま机の上で眠り続けてしまう。本当はすぐにでも羊をめぐる冒険の続きに出たいのだけれど。

小説家はすごい。
あまりにも日常すぎて言葉にもしないようなことを文章にしてしまえて、私たちはそれに気づいてか気づかずか束の間その日常の中に浸ることができるのだから。

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