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夏の間のこと、きらきらひかる水辺と降り止まない雨

アメリカにいたとき、日本に帰ったらどこかへ飛び込んで生活をしてみたい、なんてことを漠然と考えていた。
どうせ住むなら海や自然がたくさんあるところがいい、そう思って選んだ場所が今回の海辺の町だった。

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そこでは、わたしは週に3、4回の割合でプール掃除をして、会員のほとんどが地元のおじいさん・おばあさんのトレーニングルームで受付のようなことをして、たまに中居の仕事をした。

知り合いひとりいない土地で、ひとりまたひとりと知り合って、会えば世間話をして、仕事終わりにラーメンを食べに行ったり、眠い目を擦りながら早朝の勤務を一緒にこなしたり、近所のたこ焼き屋さんを冷やかしたり、時には仕事上での不甲斐ない思いを共感しあったり。毎日会っていれば人間関係ってこんなにもはやくできるものなんだと知った。

最寄駅まで徒歩1時間弱。車の運転ができないわたしの移動手段はいつだって徒歩で、スーパーまで、コンビニまで、コインランドリーまで、カメラ屋さんまで、海まで、どんな時もひとりで歩いた。途中すれ違う人たちと挨拶をしたり、ねこと友達になったり、近くに住むおばあさんに町の昔の話を聞いたり。働く以外の用事が特にない場所で暮らすということはこんなにものんびりしていて心穏やかな気持ちで生きていられることをみんなに教えてあげたくなった。

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3ヶ月半の契約期間を終えて、大阪に帰ってきた今、何もかも置いてひとりきりでやってきたこの町での記憶を書き留めておこうと思う。大きな事件も大きな変化も特にはないけれど、わたしがひっそりと大切だと思った景色や感情が詰まった夏の思い出だ。


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