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夢からはみ出した耳と角

銀色の日

よく曇った日で、銀色だと思ったのはその空のことだったか、いただいたロールケーキに添えられたフォークだったか、それは詩を書き出したノートの鉛筆だったか、もうわからないけれど、あの日は銀色だったと、後になってそう思う。

四月の初め、星丘へ行ってきた。
入り口から一歩踏み込めば、そこからいっぱいの緑で、どちらへ進めばいいのかわからずに、奥の草原へ進んでいくと、ウクレレの音がしてきて、音のする方へ進んでいくと、木の机を囲んでウクレレ教室が開催されていて、とても自由な場所だと思った。自由でいられる場所だ、と。

きょうのおやつはロールケーキやって、と竹田さんが聞いてきてくださって、いただくことにする。今まで食べたロールケーキの中でいちばんおいしかった。おかわりしたかった。

詩が生まれるところを見た

詩人の小鳩さんが詩を考えている、ぐるぐる歩きながら、時々座って、見えないところへ行って帰ってきて、できました、と
大きく広い空に朗読が静かに響く。草を伝って、風に乗って、詩が体に沁み込んでいく気がした
ノートには、言葉、ことば、浮かんで繋ぎとめて
本当は草はらに寝転んでしまいたかった 寝転んでしまえばよかったな

ここへ、お花を持ってきますと言ってくださらなければ、私はこの場所へ辿り着けなかった。
だから、本当にうれしい

壁には野の花で編んだ輪がかけてあって、私は輪っかの編み方も知らない 草の踏み方も知らない 草原へ寝転ぶ術も 知らないのじゃなくて、すっかり忘れ去ってしまっているような気がした
あの入り口に足を踏み入れた瞬間から、この場所へ来たかった、と思った。

あれから少し経って、あの日のことを思い出していた。そうしたら、髪を乾かす時に、少しだけ、明日の朝を清々しく過ごせる予感がした。

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