海辺を歩く、渡り蟹はどこまで行くんだろう
例えば、友達に言えない、あんまり話したくない恋愛ごとの話とか、帰り道にもし襲われたら、こう回し蹴りしてやるんだとシミュレーションする度に武術を習おうか迷うこととか、誰かの不幸が少し面白かったりだとか、そういう人に話さないようなどうってことないこと。
閉まる電車の扉に挟まって、振り返ってホームにいる知らない人にへらへらと笑いかける若い男の人とか、数年ぶりに返ってきた貸していたCDがやっぱりとっても良かったりだとか、見たかった映画の公開日が会社の飲み会なんだとか、つまらない毎日でも出来事も決め事もたくさん増えていく。
テレビのニュースで見たひどい事件は、気付けば1年2年って過ぎていて、他人事だけど、やっぱりどこまでも他人事で、今日もみんな無茶苦茶な思考を持ったままあちこちへ出掛ける。
マニキュア屋さんをしようと思いつく。
家にいつのまにかたくさん集まっていたマニキュア、一人きりじゃ一生かかっても塗りきれないから、友達や……友達に、いつも自分がしている手順で、仕上げにはスペシャルなトップコートを塗ってあげたい。映画でも見ながら。
一本の傘を3人でさしている大人や全身黒ずくめのおしゃれなカップル、忘れ物はまた明日取りに来ればいい。
あぁ美味しいタイ料理が食べたいな。
雨の東京駅。
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