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遠くの雷、真夏の毛布

本、読んでも読んでもきりの良いところまで行かなくて結局読み切ってしまった午前4時。外はまだ全然明るくなくて、隣家のトタンに止みかけの雨が落ちる音がする。

いつまでも能天気でいるので、わたしだけ現実じゃないのかもしれないと時々錯覚する。
むかしすきだった人は結婚をしてもう子どももいるのかもしれなかった。
そういう、みんなの現実を、半透明のうすい膜の外からいつも眺めているような、そう思うときがある。
いつまでもひとりきりでいるので、このままずっとずっと遠くまで行ってしまえるんじゃないかと深刻な表情で夢の話の続きをしている。

よく陽の当たるベランダだとか、混み合うスーパーだとか、冷蔵庫のカルピスだとか、かかとの踏みつぶされた靴だとか、近所の子どもの泣き声もどこか私からは遠い別の場所で、きょうも輝いている。

目の周りがしわしわとしてきて眠くなってきた気がするのに一向に眠れない真っ暗闇の中、つま先でふとんを撫でてため息をつく。

奈良で見た池のことを思い出していた。今度また、奈良へ行きたいな。

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