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いつか科学館の屋上で望遠鏡を通して見た月の表面、灰色の雲

海辺へ来る前に、旅行へ行きたいと言っていたあの女の子は、重い腰をあげて無事に旅行へ行けたのだろうか。
もし次会うことがあれば、聞いてみたいな。

ここに来て1ヶ月が経った。
ふと前までの生活が思い出せなくなる。梅雨の湿気と浅い眠りのせいでぐったりしていた午後、手帳に書き留めた予定や、思い立ったときに書いた日記を眺めてみると、少し元気が出た。

新しい場所で、新しく出会った人たちと一緒にご飯を食べたり、出かけたり、働いたり。期間が決まっているからこそ、うんとたくさんの時間を一緒に過ごしたいし、ばかみたいにはしゃぎたい。二度と戻れない夏ってもう分かり切ってるなんて今年の夏は親切だ。

秋からはなにをしよう。
旅行をすることも出来るし、英語を学ぶことも出来るし、料理研究家にだってなれるし、写真をたくさん撮って写真家になることも(きっと)できるし、車も練習すれば運転できるようになれるし、お金は働けば稼げるし、知らない人だって話しかければ、友達になれる(かもしれない)。ウルトラマンにはなれないけれど、友だちを少し助けてあげることならできる。
なんでもできるし、なんにでもなれるし、ひとりでどこへでも行けると知った瞬間から、わたしはわたしで良かったな、と思えるようになった。
だから、これ以上、永久就職先を探さないとね、ってわたしに言わないでね。
を、笑顔の裏に潜めて、今日もわたしは働く。

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