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短命 音楽メイキング

はじめに

この曲は文化祭のフォーク部のステージで披露する用に書き下ろしたものです
デモテープよりも本番のバージョンの方がより改善されていますが、この記事ではデモテープを解説していきます

表記法

基本的にはディグリー表記(キーのルート音から何音上か)です
コードはローマ数字表記、メロディやコード構成音などはアラビア数字表記を用いています
小節については右矢印(→)で区切れます

デモテープ音源

コード進行・キーボード

通して同じコード進行になっています
転調もありません①ⅣM7→Ⅲ7(♭9)→Ⅵm7→Ⅴm7→
ⅣM7→Ⅶ♭7→Ⅵm7→Ⅰ7
(key:E maj)

この進行は基本的には4361のよくあるものですが、様々な要素を足してこの形になっています
(9/18追記 曲を通して同じコード進行を使うというのはよくやります ループミュージックを作るので)
コードのみを担当する楽器はキーボードだけなので、コードに加えてキーボードの音も解説します


キーボード構成音は左手でオクターブ3、右手で5♯,2,4です
テンションコードを使うときはなるべく音数を減らすようにしています
今回でいうと7(Ⅲにとって5度の音)を省いています
そうすると結構綺麗に響きます
Ⅲ7(♭9)はⅤ♯dim7/Ⅲと書くこともでき、セブンス系のフラットナインスはコスパよく美しい響きを生み出せます

③④
ありがちな進行です 61と進むより65と進んだ方が次の4に流れで繋げることができます
6→51という流れが多いですしセカンダリーのツーファイブワンが完成されていて美しいですが51の部分が2拍2拍でコテンコテンと変わってしまう感じ(表現し難い!)が合わないと思ったので小節内でコードは変えないことにしました


このコードが1番の見せ所です
いわゆる裏コードで、今年の6月ごろにこれに絡めたツイートをしています
このツイートに繋がってるスレッドにある通り、この⑤〜⑧のコード進行はkiki vivi lilyさんのBlue in Greenで使われているコード進行と似たものになっています ずっと使いたいと思っていたので使えてよかったです
いわゆる裏コードというのはたぶん定義が色々曖昧なのですが、僕は「本来使いたいコードの増4度4音半上(半音6個分)(5度圏での反対側)のセブンス(あるいはメジャー)コード」だと認識しています
なぜ関係ないはずの5度圏反対のコードが…みたいな話はググってみてくださいたぶん半音隣の解決感をもたらす音が共通で入ってるとかなんとか
あるいは裏コードというよりは⑤⑥が完全4度上行なのが良いのではみたいな見方もできます
そして、ここでのキーボード構成音は左手2、右手5♯,2,4です
これの何がすごいかと言いますと②と右手を同じくしているというところです
②の項でも書きましたが②のコードはⅤ♯dim7にルート付加、つまりⅡdim7,Ⅳdim7,Ⅶdim7とも通じるということです
そしてⅦdim7/Ⅶ♭はテンションを抜けば⑥のⅦ♭7です
これは偶然でもなんでもなく、dim7が1音半で積み重なっていくことを考えると当たり前のことですが、全く反対側のコードを同じ構成音で表現できることが演奏の負荷としても美しさとしてもとてもうまくできたなと思います(たぶんこういう点が裏コードと言われる所以です)

全体を通して、奇数番目のコードが偶数番目よりも澄んだものにするようにしてあります
特にそれが感じられるのは②→③で、テンションが思いっきりかかっているところから安定の代理トニックに戻ってきます
また、①→②は左手が低く右手が高く進行するようになっていて対位法的な感じで美しいです
対位法については勉強したいなと思って図書館で本を借りたことがあるのですが、ガチガチに理論的だったので理解できずそれっきりです

イントロ

落ち着いた雰囲気から始めようとなんとなく思っていてこうなりました
(9/29追記 その意識の奥底にあったのはこの曲です PSYQUI - ヒカリの方へ(feat.Such) この曲のイントロがカッコよすぎるので参考にしました ピアノの白玉の響きと落ち着いた雰囲気がたまりません)
はじめのギターの単音の3はⅣM7の中のメジャーセブンスの音で、それが本当に美しくて好きなので王道進行系ではメロディのはじめの音を3にしがちです
Aメロのメロディもサビのメロディもはじめの音は3です
他の楽器にもなるべく動きを持たせないようにしました

Aメロ

ここは完全に後からの思いつきです
サビを作り終えてから「さて…どうすっかなぁ〜」と考えながら適当に音をいじっていたところ4分音符スタッカート(ドラムは4つ打ち裏ハイハットクローズ)がめちゃくちゃ良くハマってメリハリもつくということでこうなりました

サビ

この曲はサビから作り始めました
まず考えていたのはおしゃれな曲を作るということで、これより前に没になった曲が一曲あります(東京事変を意識した曲を作ったのですが、あまりに群青日和に似過ぎているのとサビ以外にどうしても広がらないというので没にしました)
この曲でもまだ東京事変っぽいのを作りたいという気持ちがありましたが、同時に意識した曲がひとつあります
ケイエヌさんのホワイトリリーという曲で、サビのドラムのリズムとかピアノとかはこの曲に大きく影響を受けています

サビのベースは特に作るのが難しかったです
僕自身ドラムとギターとキーボードはある程度触るのでどんな感じがいいか分かるのですがベースは8分音符でルート弾きしか知らないものでどうしても不自然なものになってしまいます
その上、他の楽器に動きが少ない以上ベースには動いてもらう必要があったのでたぶん難しめな譜面になってしまったと思います(本番完璧に弾いてくれた彼には頭が上がらない)
ベースはバスドラムのリズムとタイミングを合わせると低音同士すこぶる相性がいいので、とにかくそのタイミングを合わせることと経過音の半音を使うタイミングに気をつけて作りました

2番の落ちメロと間奏

2回目のAメロを終えて入る落ちメロと間奏です
こういう、サビに入るところで肩すかしという構成の仕方はよくあります
刺繍音の連続というのがそれまでの上下するメロディとメリハリがつくとか短音の連打でメリハリがつくとか思っていました

間奏についてもまたベースソロなどというものをお願いしてしまいました
ギターとキーボードには同じフレーズを繰り返してもらうことに専念してもらったので動けるのがベースしかいませんでした
結果的にとても良い間奏になりました
フレーズ作成については理論的なところはほぼなくスケールを外れない、不自然な動きをしない、などを意識して耳とマウスだけで作りました

アウトロ

ほぼサビと同じですが、歌詞の入ったボーカルがない分の薄さをスキャットやギターのオクターブ奏法で埋めています
その分ドラムも多少派手にやらなくては薄くなるので、リズム全体で3拍3拍2拍のキメと付点8分×5のキメを持たせました
最後の終わり方ですが、僕の曲のうち4361進行系の曲の場合は最後の小節のひとつ前にⅥmで終わるという曲が多いようで(1番すんなりカッコよく終われる)、この曲でもそのようになっています

歌詞

歌詞については文面では見てほしくないので載せないのですが、意識したのは英単語を使わないことです
意識していた東京事変、椎名林檎さん、あるいは藤井風さんの何なんwなどのリズム合わせに英単語を使わないのにかっこいい曲を聞いてそうしようと思いました
そう思う以前の考えではサビの1小節ごとにyで終わる英単語がくる案もありました
結果的にかっこいい歌詞になってよかったです


おわりに

随分と長々と書きたいことばかり書いてしまったなあという感じがします
流石にここまで読んだ方は少ないのではないかと思いますが念のためあとがきとして記しておきます
自分でも、書いていて自分の当時のアイデアが整理されて勉強になるということが多く、さまざまな気づきを得ました
最も大きな気づきというのは「コードと楽器構成を決めたらあとは隙間を埋めるための作業と化している」ということです
今回はバンド演奏用の書き下ろし曲ということで、楽器構成がはじめから決まっていたのでうまくいきました
しかしもっとひとつひとつの音に意味を持たせてこれからもっといい曲を作っていけたらいいと思います
読んでいただきありがとうございました

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