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Darling Darling

まだ彼が子供の頃
彼には僕が見えていたんだ

僕はまだ小さくて
自分の姿を消す魔法をうまく使えなかったし

子供には妖精さえ見えるっていうものね


僕は彼を少しだけ幸せにする魔法を使える

その頃
彼は
僕に直接望みを伝えてくれていた

たとえば
近所の子犬と仲良くなりたいとか

僕はすぐにそいつに
彼と仲良くしてくれって言いに行って
彼には美味しいおやつを持って行ってあげるといいよと
教えてあげた

そうしたら彼と子犬は仲良しになれて
彼は僕の頭を撫でてくれたんだ

そんな風に
彼の望みが叶うよう
ちょっとだけ魔法を使うと
彼はとても喜んでくれて
僕もとても嬉しい気持ちになった


時が経って
彼はとってもイケてる男性になった

僕が見ても
胸がキュンとするくらい

素敵な彼を
僕は密かにダーリンと呼んでいる


僕の魔法の力は
相変らず小さいものだったけれど
ダーリンに姿を見られない魔法は
上手に使えるようになっていたし

もう子供じゃないダーリンには
僕の姿は見えなくなっていた

知り合いの魔法使いに教えてもらった話だと
大人に姿を見られると
僕は消えちゃって
もうダーリンの傍にはいられないらしい

だからもう
頭を撫でてもらう事はできなくて
淋しいけど
僕の魔法でダーリンが
幸せそうに微笑んでくれればそれでいい

そうすると
僕もとても幸せな気持ちになれるんだ


ダーリンの願いを直接聴けなくなった今は
魔法の電話がそれを知らせてくれる

僕はできる限りたくさんの電話を準備してるんだ
いつでも
どれだけでも
ダーリンの願いを聴けるように


ある日
電話が鳴った

今日はどんな望みだろう
この間
ちょっと元気が無くなってた
サンセベリアを元気にしてあげる事かな?

それとも・・・



電話が知らせてくれた
ダーリンの望み

僕は受話器を置くのも忘れて

バカみたいに
突っ立っていた


「彼女と仲良くなりたい」


最近
ダーリンが
ある女性と
とても仲良しだって事を
僕は知っていた

そして彼女は
とても素敵な女性だった


もう仲良しなのに
仲良くなりたいと願う意味を
僕は直ぐに理解できたのに
魔法を使う気持ちにはなれなかった

悲しくて
悲しくて
受話器を持ったまま
泣いてしまった


それっきり
僕の電話は鳴らなくなった


待っても
待っても
電話は
うんともすんとも言わない

あの願いを思い出すと辛いのに
ダーリンのために魔法を使う事を
拒んだのに



ダーリンからの電話が鳴らない事が
悲しくて仕方がない


随分長い事
時が経ち


いつものように
鳴らない電話の前で
しょげた顔で
座っていると


一つの電話が鳴った

「SUGAR」

ダーリンの望みは
お砂糖だった


カフェのテラスにいるダーリンは
ティーカップを手に
待ち遠しそうな顔をしている


僕は仲間を総動員して
大急ぎで
お砂糖を作る

久しぶりに
ダーリンのために
魔法が使える事に
僕はウキウキしている

ダーリンを
幸せにするために
ありとあらゆるものを使って
力の限りの魔法を使って

僕は一粒のお砂糖を作る

砂時計が
全部零れ落ちるまでに
大急ぎで


お砂糖は完成した
飛び切りの
絶対にダーリンを幸せにする事ができる一粒

僕はそれを
ピンク色の紙で包む

ピンクの紙には
間違いなく
ダーリンに届くように
緑色の「D」


ダーリンは
ピンクの包み紙を剥がして
ちょうど飲み頃になった
紅茶に
お砂糖をポトリと落とした


ダーリンを必ず幸せにするお砂糖が
溶けだした紅茶を
ダーリンは一口
口に含む


ダーリンは幸せそうに
微笑んで
僕はホッとする


カップを置くと
微笑んだダーリンは
一層幸せそうな笑顔になった


ダーリンの前に
息を切らして
あの女性が
駆け寄ってきた


ダーリンと
彼女は
向かい合って座り
見つめ合う


彼女のオーダーを
済ませると

ダーリンは
胸ポケットから取り出した
ジュエリーボックスの蓋を開け
彼女に差し出す

紅茶色の宝石が光ってる指輪を
彼女は幸せそうに
受け取った



ダーリンの二つの望み
僕の魔法が役に立ったのかな


僕は
悲しいけれど
幸せだった


だって
僕は
ダーリンが大好きだから


*Darling Darling*


歌*チャン・グンソク
作詞*Mari Oda
作曲*Shinya Tada.

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アップテンポで明るい恋愛あるあるな曲
それがMVを見た途端に別世界が広がりました
一粒の角砂糖になれたトラブルメーカ
ダーリンの中に溶け込む事で
彼の願いは叶ったのでしょうか
可愛らしくもちょっと切ない物語
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