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水中写真と構図について考える⑥ ~用途によって構図は変えるべきか~

こんにちは、上出です。
今日は構図コラムの第6回です。
ちょうど折り返して、今日から後半戦という感じですかね。

今回は、「写真の用途によって構図は変えるべきなのか?」というテーマについて一緒に考えていきましょう。

■どんな用途が考えられるか?

まず、水中写真にはどんな用途があるのかについて考えてみましょう。
撮影した写真を最終的にどうするのかって話ですね。

時代的には、SNSにアップするというのが一番多いのかもしれません。
SNSにも色々ありますが、Instagramとfacebook、Twitterを使っている方が多いですかね?

それから当然、フォトコンテストに出すという方もいるでしょう。
あるいは、昨年僕が開催したような合同写真展や、ご自身の個展で水中写真をプリントして飾るということもありますね。

あと、忘れがちかもしれませんが、なんだかんだで「家でPCかスマホ・タブレットで自分の撮った水中写真を見ている時間が幸せ」という方も多いと思います。用途としては、自己鑑賞用とでも言いましょうか。

他にもあるかもしれませんが、とりあえず、今あげた4つに分けて見てみましょう。


■SNS

Instagramを使う前提で話を進めましょう。
やっていない方はfacebookかTwitterを想定してもらっても構いません。

「SNS=いいねの数とり合戦」ではないのですが、ひとつの判断材料として今回はいいねの数をサンプルにします。
もちろん、「大事な人だけに最新の写真を届ける場」とか「人の評価とは関係なく自己表現し続ける場」とか、それぞれSNSの捉え方は違っていてもいいと思っています。

というわけで、2020年にInstagramにアップした写真を全て見返してみました。

ここで「2020いいねトップ5」を一挙に紹介します(一番上が1位です)。

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うーん、ワイドも頑張って撮ったんですけどねー。笑

フォローしてくれている方の属性も偏っているはずなので、僕の結果を見ただけでははっきりしたことは言えません。ぜひ、ご自身のSNSにはどんな傾向があるのか、見てみてください。

それでは、5枚の写真からどんなことが言えるのか、第5回までの復習を兼ねて考えてみましょう。

まず、どれもそんなに「オッ!」となるような構図じゃないですよね。
日の丸構図が多いし、複雑な構図の写真と言うのはなさそうです。

特別奥行きが強調された写真もなさそうです。
構造線は、まあ引けるでしょうが、特に5枚の共通点は見つかりません。
リーディングラインに関しては、ナカモトイロワケハゼの写真は親から卵への視線に沿って線が引けそうですが、他の4枚は曖昧です。

つまり…
これまで学んだ知識を総動員しても、SNSの前では無力だったのです。
残念。笑

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(↑ワイドで唯一TOP10入りした写真)

では、「構図」という切り口で、5枚の共通点とは何でしょうか?
思いついたものを3つ挙げてみます。

①見た瞬間に主役がなんだかわかる
②無駄な空間がない(少ない)
③生き物の目線に意図がある

それぞれ見ていく前に、SNSの特性を押さえておきましょう。
SNSは、PCで見る方ももちろんいますが、基本的にはスマホでスクロールしながら見るのが前提です。
つまり、「小さい画面」で「一瞬しか見られない」というのがSNSの特徴だと言えます。

それを踏まえて…

①は、皆さんの想像通りですよね?
SNSでは、わかりやすい写真の方がいいねがつきやすい傾向があります。
端っこに主役がちょこんと写っている写真や、模様だけの抽象画のような写真は目に留まりにくいようです。
乱暴な言い方をするなら「主役がでかいほうがいい」とも言えるかもしれません。

②に関しては、今5枚を見ていて気が付きました。
主役の大きさとも関係しますが、それだけではなく、画面全体の中で無駄なスペースがないように感じます。主役以外の場所がより主役を引き立てる働きをしている、というイメージでしょうか。
意図的に余白を作るよりも、意図的に余白を埋める方がSNSではウケがいいのかもしれませんね。

③は、SNSでどうこうって話なのかわかりません。
僕たちの視線は、自然と生き物の目にいくようにできています。
なので、主役の目がどのように表現されているかによって、写真の印象は大きく変わります。
5枚とも、生き物の目を見た時に、海の中でのストーリーや自分と生き物との関係性など、何かしら感じませんか?

実際には、SNSで目に留まるか、いいねがつくか、は構図以外の要素も大きく関わってきます。
暗いよりは明るい方がいいとか、地味よりは派手がいいとか、みんなが抱いている撮り手のイメージに合った写真の方がいいとか。
なのでまあ、色々研究が必要ですね。


■写真展

SNSとの比較で考えてみましょうか。
写真展の特徴として、以下の3つがあげられそうです。

①大き目のサイズで見られる
②長く見てもらえる
③画面ではなく印刷物として見られる

①のサイズに関しては、SNSではスルーされていた、余白が広くて主役がちょこんといるような写真も、大きめのサイズで見ると意外と良い感じだったりします。
例えば下の写真は、SNSでは魅力が半減しそうな気がしたので、昨年写真展で初めて公開しました。

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マクロでも、主役が極端に小さい写真はSNSでは映えませんが、写真展では生きると思っています。

SNSでいいねがたくさんつくわかりやすい写真が、大きいサイズの展示に適さないというわけじゃないんです。でも、そういう写真ばかりが展示してあるとちょっと疲れちゃうんですよね。個人的には。

なので、例えば下のような写真もありかなという感じです。

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(水中写真じゃないけど。笑)

②は時間の長さもですが、写真を見てくれる人の態度とも言えますかね。 写真展というのは、鑑賞者がある程度能動的に作品を見てくれます。
ですので、いくつかの構図を組み合わせたような複雑な構図や、複雑に引いたリーディングラインが、しっかり効果を発揮してくれる、のかもしれません。
うまく言葉にできないのですが、「構図そのものを楽しんでもらえる」というイメージでしょうか。

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③のモニターかプリントかは、構図とはあんまり関係ないんじゃないかと思います。
色とか明るさに関しては、それによって仕上げ方も変わってくると思いますが。


■フォトコンテスト

そもそも僕は、「写真ってそんなに競わなくてもいいんじゃない?」と思ってる節があるので、フォトコンテストにあまり明るくありません。
(嫌いなわけではないです。ひとつのモチベーションになると思っているので。)

なので、フォトコンテストには構図のこういうところを気を付けましょう、という話もできません。
が、何かしら書いておきましょう。

フォトコンテストには、以下のような要素が関わってくると思います。

①誰が審査するのか
②どんな媒体で審査されるのか(A3プリントなのか、スマホ画面なのか、等)
③どんなテーマなのか


特定の誰かが審査するなら、その審査員の好みに合わせるのが、フォトコンで入賞するには手っ取り早いでしょう。
とは言っても、写真家の○○さんは△△構図が好きだよねーというのは、あまり聞かない気もします。笑
個人的には、「フォトコンだから構図はこうしよう」というのはないのかなという印象です。

まあでも、コンテストで勝つということは頭一つ抜けている必要があるので、「オッ!」と思わせるような構図が作れたらいいですよね。
おそらく、「リーディングラインが…」とか考えながら水中写真を撮っている人はあまりいないので、この連載を読んでいるあなたはすでに一歩リードしています。たぶん。


これは先ほどのSNSと写真展の話と同じです。
見られるサイズや媒体によって、配慮する点は変わってきますね。


例えば「生き物の表情」というテーマのフォトコンだったら、下の写真みたいな感じで、細かい構図のことなんて考えずにオリャーっと撮ればいいでしょう。
これで入賞するのかは知りませんが。笑

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一方、「水中のアート」というテーマだったら、下の写真の方がいいのかもしれません。

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テーマによって、そもそも構図がどれくらい重要なのか、優先順位が変わってくるかもねという話でした。


■自己鑑賞用

自分が見ていて気持ちよければどんな構図でもOKです。以上。

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「水中写真と構図について考える」の第6回は、用途によって構図は変えるべきかについて考えてみました。
軽いテーマだと思っていたら、めちゃ長くなってしまいましたね。ごめんなさい。

次回は、「寄りと引き」について考えていこうと思います。
お楽しみに!


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