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お探し物は図書室まで

好きな人は好き! 本ってそういうもんさ~
活字を読まなくなった人に小難しい本をどうぞ、と渡されてもハードルは高い。「そういえば読書をしている時間って楽しいものだったんだなぁ」と思い出してもらえないと出版界は冷えていくばかりだ。

これから初めて活字を手に取るような若者たちにとって「楽しい・幸せ」と気づけるような一冊になればいいね。そこから活字の深い世界にドップリ浸かるのもよし、現実逃避の時間にするのも自由。

若者たちは決して物語を嫌いなわけではない。映画やドラマは変わらず好調だし。本を読む時間がないわけでもない。テレビを点ければ勝手に映像やセリフが目や耳に入ってくるから読書より労力的に楽なのだろう。

でもね、登場人物の容姿や声色などを自分で妄想するのはいいもんだよ。テレビにはない物語の楽しみ方。まずは楽しめる一冊を!

言葉は世界を変える

最近では鳥取県の米子松蔭高校の野球部主将のツイッターが話題となった。コロナで出場辞退から一転、本日21日に試合が決行予定。いつの時代も世界を変えてきたのは若者たち。

学校に声を上げただけでは事態は変わらなかっただろう。勇気を持って言葉を文字にし、万人の目に留まるようSNSに発信した結果が大人たちの心を動かした。いつまでも大人の都合で自分たちの青春を台無しにされてたまるか!

大人は若者たちに明るい希望を示す役目を全うしないと。“命”を盾にすれば何もできなくなる。そんな口先だけの正義感では人は動かないのだ。若者たちのほうが、よっぽど冷静に現実を直視しているように感じる。


青山美智子さんの『お探し物は図書室まで』

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小さな図書室のレファレンス・コーナーに座っているベイマックスのような風貌の司書さん。「何をお探し?」その司書さんに相談すると意外な一冊と付録がもれなく付いてくる。それをヒントにした主人公たちはどんどん人生が変わる行動を起こしていく。

編集者としてバリバリ働いていた夏美。産後も編集部へ戻る気マンマンで育休を急いで4カ月で終え復帰した夏美に告げられたのは、まさかの資料部への異動。

自分の後から中途採用で入ってきた同い年の社員に席を奪われ嫉妬。せっかく編集者時代にお世話になった作家と会えるチャンスも、保育園から「熱が出ました」の電話で台無しにされ、イライラが募っている。

そんな辛い悩みを作家の先生へつい漏らしてしまう。返ってきたのは面白い喩え話。「ああ、あなたもメリーゴーランドに乗っているとこか」

※「メリーゴーラウンドだよ」とツッコむ人がいるかもしれないが、この際通じればいいのさ。より日常の会話に近いのは“ランド”
論文と違って小説は楽しむもの。

「よくあることよ。独身の人が結婚してる人をいいなあって思って、結婚してる人が子どものいる人をいいなあって思って。そして子どものいる人が、独身の人をいいなあって思うの。ぐるぐる回るメリーゴーランド。おもしろいわよね、それぞれが目の前にいる人のおしりだけ追いかけて、先頭もビリもないの。つまり、幸せに優劣も完成形もないってことよ」

人生は自分の思い通りにならないってこと。結果的に希望通りじゃなくてよかったなんてこともあるよね。計画や予定が狂うことを、不運とか失敗って思わないように…と。


図書館へ足を運んだことのある人には説明不要だが、基本的に司書さんは本書のようなサービスはしない。フィクションにリアルを求めてはいけないのだ。それを踏まえて、人生の岐路に立っている方にはオススメの一冊。


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