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At your disposal

日本の英語の教科書では殆ど目にすることなく、
海外で仕事をしたりする中で初めて触れる
馴染みのない英語表現があります

よく英語文化は、
考えをダイレクトに伝え、
上下関係はフラットだと強調されますが、
そんなに単純ではないよね

ヨーロッパを中心とした階級社会は
英語の中に根強く存在し、
フラットな人間関係からは程遠い言葉も、
また存在します

I'm at your disposal

この言葉は直訳すると「私はあなたの廃棄物」のようなことでしょうか

過剰なほどの謙譲表現で、
日本語にはないタイプのへりくだりかただと思います

初めて香港のクライアントから
この言葉を言われた時は、
実際の意味をあとで辞書で調べるまで、少しドキドキしてしまう
そんな体験でした

実際には、
「あなた(日髙)が香港に滞在中に何か必要なことがあれば、
クライアントの私がいつでも対応しますから、何なりとお申し付けください」
という親切なお申し出でした

香港文化は特に上層部でイギリスの伝統に影響されており
そのクライアントも私よりだいぶ若いのに
運転手付きの高級車に乗っている経営者だったので
こうした表現がサラリと口から出てくるのも少し納得ですが、
その後、気をつけていると、
イギリス映画などにはこの言葉はたまに出てきますね

へりくだって
自分のことを「あなたの廃棄物」のように比喩的に表現する

恐らく下層階級の方が
上層の方へ使っていたことを起源とする言葉か
しかしこれは
いくらなんでも謙りすぎだろうと思うのですが・・

階級社会と使い捨て文化

デッドストックで購入しましたが、もう3年くらい使っています

直接は関係のない話ですが、
写真は4年くらい前から愛用している
アメリカGillet社製の髭剃りAristocratというモデル
70年台くらいのビンテージです

もっと古いモデルも、ネットでそれなりの量、流通しています
みなさん、現役でビンテージシェーバーを使っているのだと思います

商品名にこそ「貴族」という名前が付いていますが、
使い捨てカミソリはもちろん大衆消費社会向けの商品で
使い勝手もコスパも良い優れものです

髭剃りを昔は電気シェーバーでやってました

だけど
朝からあのヴィーンという音と振動が何となく
無粋な気がして嫌になり
あるときからウェットシェーブに変えました

ドラッグストアなどに行くと、
髭剃りは、いろいろあるのですが、
はじめの写真のようなモデルは
どこの店にもまず売ってません

今は、少なくとも二枚刃、よく売れているのが五枚刃
と、過剰なまでにたくさんの細い刃をプラスティックで固めた商品に置き換わっています

ウェットシェーブを始めた当初買った、5枚刃のschick


写真がそれで、私もはじめこれを使っていました

値段も高くて五枚刃のカートリッジは、
5個入りの箱が2,000円もするので、
一つでだいたい400円くらいの計算で、
割高感があります

もちろん、ある程度の長期間、使えるのですが、
捨てる時も分別できないので、まとめて危険ゴミに

ケガの危険性はかなり低いものですが、
その分、剃りは浅めで
僕から見れば、二枚刃よりも三枚刃、
三枚刃よりも五枚刃と、
延々と余計な開発を続けた結果の産物という気がして
どうも好きになれない

この点、最初の写真のような昔のカミソリは、実にシンプルです

替え刃のサイズもだいたい同じ、包装も最低限
コストは一枚あたり20円くらい
2回くらいは使えるので、コスパは最強です

剃るのにコツはいるけど、深剃りできて
慣れればこちらの方が朝が楽しい

実は100枚入りのGillet platinumという替え刃を
買って使ってましたが、
2,000円ちょっとで3年近くも持ちました

しかしとうとう最後の一枚となり
同じ商品を購入しようとみたところ、
これがロシア製で、ウクライナ情勢が変わってから
日本には現在、全く輸入されなくなり、
どこのネットショップでも、現在品切れです

下がGillette Platinum、上がShark

困った挙句、買ったのがエジプト製のsharkという替え刃
同社の製品じゃないけど使えるのか?
と初めは不安でしたが、
剃り心地は少し違うものの、全く問題なく使うことができて一件落着

使い終わった刃は、蓋付きの缶に入れて分別し
資源ごみとして捨てられるのも安心です

階級社会と使い捨て文化

の話に戻ります

市民社会の確立と使い捨て文化の発達は
産業構造の変化としてリンクしています

それまではサーバントが、まさにat your disposalに
かしづいてくれた作業を、
我々市民が自らで行うことになり
剃刀の刃を研ぐなんて手間をかけるのは
余程のもの好きだけになった結果
Gillet社のような新興会社が成立し、巨大化して
今の産業基盤ができた

人が行うat your disposalから、
もののdisplsableへと変わり、
そこではお金持ちが上流階級で、
お金を使ってサービスを消費する

人よりもお金の方が集約的に使えるので
消費社会の過当競争を生み、
五枚刃のような妙な商品開発が行われる

どうやら私はこの仕組みがどうしても好きになれず、
もう少し情緒的に、
使い捨てよりも、古いものを直しながら使ったり、
自分でできることは自分で楽しみながらやるという
生活を志向しているのだという事を、

髭を剃りながら、
ぼんやり考えるのでした

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