『展開』を読む 補遺

素人の分析である。精度、順序など、ご容赦頂きたい。

まっさらでまっしろでまっすぐでまっとうな彼氏が選んだあたし
形容動詞が「ま」で頭韻を踏んでいることはもちろん、「彼氏」「あたし」にも[a]の頭韻がある。さらに形容動詞の三音目が「さ」「し」「す」とサ行で構成されており、「と」も舌頂音で無理矢理グルーピングできなくはない。
当然「で」で脚韻も踏んでおり、五音の区切りと「ま」と「で」がリズムを構成する。そして[e]は「彼氏(karEsi)」「選んだ(Eranda)」にも含まれ、句末よりも段階的に前に来ている。これがスピード感を与え、「彼氏」と「あたし」の韻もあり、軽やかに綺麗に終わせる。
「彼氏が選んだ」には舌背音(k,g)と舌頂音(r,∫,t)の往復があり、ここも音読の心地よさに一役買っている。
[a]の韻、[e]の韻、「し」の脚韻、[e]を用いたスピード感の調節、舌頂音と舌背音。お題を設定して作った方が納得と書いたが逆に知識がほぼなかったとしたらここまでのことができただろうか?
やはり本当に100点の「彼氏」だったか、せいぜい「形容動詞をたくさん使う」程度のテーマで韻律にも気を配った結果ハイレベルなものが生まれた、と解釈するのが自然な気がする。

ともあれ、現時点で私が出会った一番の短歌を選ぶとしたらこれになることは間違いない。

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