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遺志継ぎ「八月の蒼い空」 | 俳優、鈴鹿景子さん一周忌

石巻で戦争童話集の朗読劇

 昨夏逝去した石巻市出身の俳優、鈴鹿景子さん(享年67歳)が生前から続けていた戦争童話集の朗読と音楽イベントが21日、ホテルFUTABAINN=石巻市住吉町=であった。故人と交流のあった読み手やアーティストが遺志を引き継ぐ形で参加。聴衆は童話で戦時下を生きた人々の想いに触れ、音楽で平和の尊さを実感した。

 鈴鹿さんは石巻女子高校(現・石巻好文館高校)を卒業後、アナウンサーを目指して上京するも演劇の道に転向。NHK連続テレビ小説「火の国に」のヒロインとしてデビューし、テレビや映画、舞台で活躍した。ライフワークの一つに「八月の蒼(あお)い空」と名付けた戦争と平和に関連した読み語りや一人芝居の舞台を毎年夏に上演しており、鈴鹿さんにとって夏は特別な季節だったという。

童話朗読で戦争の悲惨さを再認識した

 東日本大震災や新型コロナで自粛を余儀なくされ、ようやく再開できる環境が整ったものの、大腸がんとの闘病の末、昨年7月に逝去。生前、「いずれは石巻に戻り、演劇活動などを手伝いたい」と話しており、鈴鹿さんの事務所プロデューサーの鬼嶋英治さん(80)を中心に今回イベントを企画した。

 この日は、都内を拠点に活動するアーティスト古賀久土さんが「サマータイム」「ダニーボーイ」などを披露。ダニーボーイは元々アイルランド民謡で、わが子が戦地から無事帰還するよう願う歌詞付きで編曲されたという。

 その後、故人と親交のあった俳優の石川久美子さんや杉本朋美さん、朗読ワークショップの教え子が戦争童話集を朗読。戦火から逃げる中、はしかを発症したことで置き去りにされた女の子と狼、国や性別などを問わず平等に照らす太陽、戦時中で菓子を食べる機会さえ得られなかった子どもを思う母親―。胸の張り裂けるような物語にピアノ演奏も加わり、聴衆の多くが涙を拭った。

 東京都の市川正道さん(77)は「6年ほど前に鈴鹿さんと知り合い、これまでお手伝いもさせてもらっていた。今回の音楽と朗読を聞き、その素晴らしさと平和を考えさせられた」と語り、アンコールを求めた。

 鬼嶋さんは「無事開催できほっとしている。本来、地元の若い方に足を運んでもらい、刺激を受けて芝居や読み手に興味を持ってほしかったのも本音。鈴鹿さんの思いに共感し、平和の尊さを発信したり、芝居文化を根付かせるようなきっかけを今後もこの地でつくれたら」と話していた。

 イベントは22日に料理店「春潮楼」=石巻市中央二丁目=でも行われた。【横井康彦】

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