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足取りと人生支える兄弟犬

啓発行事で初の公の場
相棒と新生活スタート

石川さん「デュオ」 / 若山さん「ダンデ」
 視覚障害者の若山崇さん(54)=石巻市桃生町=は、8年間を共にした盲導犬のトラヴィスを仙台訓練センターに返還し、新たな相棒「ダンデ」(2)を借り受けた。ダンデは盲導犬ユーザー、石川順子さん(39)=東松島市赤井=に貸与されている「デュオ」(2)と同じ日に同じ母犬から生まれたラブラドールレトリバー。同じ地域の視覚障害者に同時期に兄弟犬が貸与されるのは全国的にも珍しく、若山さんは「石川さんと力を合わせ、私たちも〝デュオ〟で盲導犬啓発に尽力したい」と話していた。

 2人とも難病の網膜色素変性症で若山さんは全盲、石川さんは五円玉の穴をのぞいている視野感覚という。最初に訓練センターから盲導犬を借り受けたのは若山さん。平成27年からトラヴィスと生活を共にし、10歳を迎えた先月、引退。若山さんは間を空けずダンデとのマッチング期間を経て同21日に貸与された。

若山さんと弟犬のダンデ(左)、石川さんと兄犬のデュオ。大漁旗などをリメイクした服で着飾った

 石川さんは昨年、当時6歳のラズベリーを借り受けたが、10カ月後に病気が発覚し、訓練センターに戻らざるを得なくなった。「ショックで寂しく毎日泣いた。一時的に引きこもりがちな生活に逆戻りした」と石川さん。今年5月、デュオを新たに迎え、前向きな気持ちになれたという。

 盲導犬育成は多額の費用や時間を要し、訓練犬のうち実際に盲導犬になれるのは3割程度。貸与希望者に対して盲導犬が不足している状況だ。ゆえに、同じ地域のユーザーに同時期に兄弟犬が貸与されるのは非常にまれであり、若山さん、石川さんも「偶然」に驚きを隠せない。

 2人は3日、イトーヨーカドー石巻あけぼの店で行われた障害者就労支援啓発イベントのトークショーにダンデとデュオを連れて出演。兄弟犬が公の場にそろって姿を見せたのはこの日が初めて。相棒との生活に触れつつ、盲導犬の役割や視覚障害者とのより良い関わり方を説いた。

 若山さんは「トラヴィスはパピーウォーカー(育ての家族)の元でゆったりと幸せな余生を過ごしている。ダンデはヤンチャで甘えん坊。トラヴィスと違った個性だが、仕事はしっかりこなしてくれる」と期待を込めた。

 石川さんは「外を歩く気持ち良さを再び感じさせてくれたラズベリーに感謝。盲導犬はかけがえのないパートナーであり、デュオとの時間も大切にしながら、ダンデや若山さんと一緒に啓発活動に励みたい。デュオも喜んでいる」と話していた。

 盲導犬は足取りを支えるだけでなく、人生を共に歩くパートナー。ハーネスを握るその横には尾尻を揺らす、ご機嫌なダンデ、デュオがいた。
【山口紘史】

https://note.com/hibishinbun/n/n0756c17484d5

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