「映画大好きポンポさん」を知らずに観れて良かった
※これより先は「映画大好きポンポさん」のネタバレしかない感想文です。まだ観てない、これから観る予定の方は注意して下さい。
一回しか観てないので色々間違ってる可能性が高い、というか確実に間違ってるのですがご了承下さい。
いやすっっっっっっげ〜〜〜面白かったなんだこれ。全然知らない作品だったのでどんな内容なのかも知らずに観たんですけどマジでめちゃめちゃ面白かった。何の前情報も無く観れて良かった〜。
「映画大好きポンポさん」は映画の都・ニャリウッド(ネーミングが可愛過ぎる。この時点で100点)(※ガバガバ判定)で凄腕映画プロデューサーのジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネット、通称ポンポさんとそのポンポさんの下でアシスタントとして働くジーン・フィニをメインに据え置いた「映画制作側の映画」だ。
ちなみに原作漫画もあります。私はこれすら知らなかった。pixivコミックで映画の内容丸々読めました。マジで?
それはそれとして簡単なストーリー紹介を。
幼少の頃から映画に心を奪われ、いつか映画を撮る側になりたい…と思いつつ自分には無理だと卑屈に生きるジーンが、ある日ポンポさんプロデュースの映画の15秒CMを任された事により、制作側の楽しさを知る。やがてポンポさんの次回作「MEISTER」の監督を任されちゃって…!?みたいな内容だ。
ストーリー自体はそこまで目新しいものかと言われると多分そうでもない。なんか見たことあるよね〜と言われたらそっすねとしか言いようがない。
でも映像作品としての観せ方がスゲ〜上手いし何よりこの作品を映画にしようと思った映画制作スタッフの粋っぷりが凄い。というのをつらつら語っていきます。
なんでも7月から上映館増えるらしい。ヤッタァ!!!!!!!!!
ポンポさん独特の映画論
これは映画も原作も共通しているのだがとにかく彼女の映画論が面白い。「いやそれは極論過ぎない!?」と驚くものから「確かに…」と納得出来るものまで、とにかく彼女の話は飛び抜けてて面白い。
ポンポさんが言い放った独特の映画論をざっとまとめると、
「まぁ極論映画って女優を魅力的に撮れればOKでしょ」
「泣かせ映画で感動させるより、おバカ映画で感動させる方がかっこいいでしょ?」
「スタッフの中でジーン君が一番ダントツで目に光が無かったからよ!」
「幸福は創造の敵」
「真面目な話、二時間以上の集中を観客に求めるのは現代の娯楽としてやさしくないわ」
「その人を見た瞬間にその人の物語がどうしようもなく頭に溢れてくる事がごく稀にある」
極論だな本当に…………。
ただ、私が彼女の映画論があながち間違ってないなと特に思ったのが「二時間以上の集中を観客に求めるのは現代の娯楽としてやさしくない」の点だ。
ファスト映画というものをご存知だろうか?YouTubeなどに投稿された、映画の内容を10分ほどでまとめた動画だ。レビューとかならまだしもこのファスト映画、なんと最初から最後までネタバレしてしまっている。極論、二時間の映画を見なくてもこのファスト映画でざっくりとしたあらすじなら10分で履修できてしまう。んなアホな。当然だが問題視され、最近逮捕者が出たので知ってる人も多いかも。
しかしこのファスト映画、私自身も調べて見てみたのだが再生数がもの凄かった。つまり、沢山の人がそれだけその映画に興味を持っていたのだ。なのに映画本編は観ない。なぜ?と思っていたのだが、ポンポさんの言葉で妙に納得した。
現代の娯楽は短時間で終わるものがほとんどで、10分20分、長くても一時間くらいか。そんな中二時間の集中強いる映画は成る程確かに優しくないのかもしれない。映画に見慣れている人間ならまだしも、子供や、普段映画を観てない層は二時間集中するのは大変なのかもしれないと、映画大好きポンポさんを観るまでそう思った事が一度も無かった。
というかそういった事を2017年の時点で見抜いてたポンポさん凄い。私は何も気にせず2019年にも三時間の映画を観てたよ…(エンドゲーム)(「私はアイアンマンだ」)(ヴァッッッッッッッッ)
極論ともいえる映画論、その中に納得せざるを得ないものが混ざっており、彼女の語る映画論は非常に面白い。
そして彼女はこの考えにより「長い映画は好きじゃない」と語るのだが、それが後々物凄い伏線回収になった。とりあえず現時点ではポンポさんは二時間以上の映画は嫌い、これだけ覚えておいて下さい。
「漫画」を「映画」にする上での「新しい見せ方」
ところで私は邦画より洋画が好き!!!!!!!!!!(120db)
最近やっと邦画の面白さに気付きちょこちょこ手を出しているけれど、やっぱり微妙…と思う事が多い。これは私がひとえに悪いのですが。
その中でも特に苦手意識が強いのが漫画やアニメ、ゲームの実写化だ。私は実写化ですごく面白かったと言える映画がぱっと思い付かない。
実際、実写化って物凄く難しいよなとつくづく思う。
原作をそのままなぞるだけなら「じゃあ原作でいいじゃん」となり。
下手な映画オリジナルストーリーやキャラクター入れたら「原作レイプ」となり。
原作の雰囲気を壊さずしかし原作そのままにはせず新規の層を取り入れファンを納得させかつ面白い映画を……ってよく考えるととんでもねえ無理ゲーだな!?匙加減が難し過ぎるんじゃ!!
っていう難しいところを、「映画大好きポンポさん」では全クリしている。
勿論同じ映画でも「実写化」と「アニメ化」は全然違う。それでも映画大好きポンポさんでは「漫画とはまた違った見せ方」を提供してくれる点で物凄く面白かった。映画を観た後に原作を読んだ人間だったのでこの違いがすごく良かった。駄目だ月並みな発言しか出来ないでも本当に凄かったんだってば!
映画の巨匠・ポンポさんの祖父にして元凄腕映画プロデューサーのジョエル・ダヴィドヴィッチ・ペーターゼンというキャラクターがいる。
彼は作中で古い映画フィルムを切って貼って、という作業をするシーンがある。「元」という通り彼は既に映画プロデューサーの座から退いており、彼曰く「老人の趣味」らしい。
さて、映画を観る上で俳優や脚本や監督を気にかけてる人は沢山居るでしょう。でも「編集」を気にかけてる人って早々居ないんじゃないか?少なくとも私は気にかけた事なんて一度も無かった。反省!!
「映画大好きポンポさん」ではこの編集のシーンが凄いのだがそれは後に回しまして。とにかく編集とは「映画を生かすも殺すも編集次第」であり、「編集次第で全く別の映画になる」とあるのだ。
話を戻します。ペーターゼンは映画のフィルムを切って貼って、何をしていたかというと「もしかしたらこういう映画になっていたのかもしれない」と、フィルムの中で世に出した作品とは別の作品を作っていたのだ。彼曰くただの趣味だとしても。
何が言いたいかっつーとね、「映画大好きポンポさん」はかなり大胆に編集されている。原作通りの流れにはなっていない。まるでフィルムを切って貼ったように、全く別の見せ方で、けれど決して作品の雰囲気は壊さずに、最終的に着地するところは一緒のまま。
え、て、天才…………?
映像でしか出来ない観せ方・映画だからこそ出来る独特の編集の仕方・そこで生じるテンポの良さ、原作とは違う面白い観せ方をしてくる。
でも原作の良さが損なわれた訳じゃないしむしろ原作を読んで改めて「成る程なぁ!」と発見出来るシーンがあったりとも〜めっちゃ面白い!!原作片手に映画観たい!!
何より「追加シーン」が良かった!原作には本来無いシーンが映画には追加されていたのですが、なんとそのシーンは「ジーンがどうしても追加で撮りたいシーン」だった!
シーンシーンってシーンって言葉がゲシュタルト崩壊しそう。伝わってる…?日本語分かんない…何も…。
現実と虚構が繋がるというのがもう大好きなので、映画の中で追加シーンを撮るという追加シーンが入っていた事に大喜びしちゃった。そんなのめちゃめちゃ面白いじゃん。
追加シーンで登場した映画オリジナルキャラクター「アラン」がまた良かった。
彼は銀行マンなのですが、同じハイスクールに通っていたジーンとは違い確実な道を選んだにも関わらず「振り返ったら何も無かった」と己の進んだ道を疑問視しています。
そんな中たまたま再会したジーンとアラン。アランとは違い自分の夢見た道を進んだジーンに、アランは「目が輝いてるよ」と言う。
いや、ポンポさんが「(ジーン君はダントツで)目に光が無い」言うてますやん。
実際ジーンの目に光が入る時は無い。ゾーン入ってヤベー事になってる時は目が爛々としてましたがそれはまた違うので。
私はこの時「随分月並みなこと言うな」と思った。映画本編ではなかなかブッ飛んだ発言が飛び交う中、他の映画でも見かけるような台詞だな〜、と。
でもこれ後々アランがブッ飛んだ事をやる前の前フリだったんだなと。いや私がそう思っただけで制作スタッフがそこを意識してたのかは知らん!知らんけど!でもジーンに目が輝いてるという月並みな発言をする時のアランはまだ覚悟完了してなかったじゃん!
ポンポさんの「ようこそ、夢と狂気の世界へ」と手を差し伸べたところからアランの狂気入り(酷い発言)が始まったと考えると、アランもまたクリエイターの一人なんですよ。「映画は一人では作れない」がまた重いボディブローを撃ってきやがるからよォ・・・・・・・・・。
「目が輝いている」と言ったアランはまだ正気。でも映画を作る事に命をかけて「映画を撮るか死ぬかどっちかしかない」とまで言うジーンとそのジーンを肯定するポンポさんという狂気としか言いようがない世界に足を踏み入れたアランもまた映画制作スタッフの一人となった。
上手いんだよな何もかもが…褒めるところありすぎて困る…。
他にもシーンの切り替わりがオシャレ過ぎるとか、たった一瞬の煌めきを表現する為のスローモーションの使い方が天才過ぎるとか、「編集」に重き置いた結果どんなに素晴らしい映像が撮れたとしても容赦なく切って捨てていく編集という仕事の重さと凄さと楽しさとか、もう見せ方が本当に面白くて面白くて目が楽しい。見るセロトニン(幸せホルモン)
どうでもいいんだけどシーンの切り替わりとかスローモーションについてもこれ一つ一つ書いてたんですけどマジで正気じゃねえ文字数になったので全部カットしました。人に読ませる気ゼロ過ぎない?取捨選択出来ねえオタクで申し訳ない。
この映画が「90分で終わる」という事実。
罪深いなもぉ〜〜〜〜〜〜〜って声出た。
原作知らず前情報知らずに観て本当に良かった。神さまありがとうございます。
ポンポさんは「二時間以上の長い映画は嫌い」で、そんなポンポさんとジーンが作ったマイスターという映画は90分で終わり、映画の最後はニャカデミー賞を取ったジーンの「(この映画で一番気に入っているのは)上映時間が90分ってところですね」であり映画大好きポンポさんという映画そのものが90分で終わる!!
そもそもジーンが「一番見てもらい誰か」の為に映画を作れと言われた時、そのフォーカスが絞られた先に居たのはポンポさんなんですよ。ここからしてジーンがポンポさんの為に映画を撮りたいと思っているのは明白。
そんでもってポンポさんは「映画で心の底から感動した事がない。だから映画を撮ろうと思った。でも自分の撮った映画では自分だけは感動する事ができない」と本編中で語っています。だから自分を感動させてくれるものを求めている。
「エンドロールの途中で席を立つ女の子がいた。あの子は、エンドロールが終わるまで席を立つ事すら忘れて映画に酔いしれる事があったのかな」
ジーンの独白大体こんな感じだったんですけど、これが凄く良かったな…。
勿論「映画の中に君は居るのか?」という問い、逃げて逃げて逃げた先に映画があり自分にはもうここしか無いという祈りにも似た狂気、何かを残す為にそれ以外の全てを犠牲にする覚悟、モノ作りをする人間の闇深さとヤバさと何もそこまでせんでいいよ…と止めたくなる程の狂いっぷりなども物凄かったのですが、映画という作品に救われてきたからこそ同じように映画に救われて欲しいしそんな映画を撮りたいという、もうただの子供の我儘みたいなもんです。
でもだからこそ、最後ポンポさんは「この映画が好き」と言ってくれたんだよな〜〜〜〜〜!!この事実、噛み締めてしまう。
ジーンの撮った映画は90分で終わり、「映画大好きポンポさん」という映画も90分で終わる。ポンポさんが大好きな、二時間以内に終わる映画として。こんなたった一人の為の映画なんてそんな…オタク大歓喜ですが…。
あの、ポンポさんとジーンの関係に「プロデューサーとアシスタント」「プロデューサーと監督」以上の関係って無いんですよ。それなのに「この関係が凄い2021」してくるんですよ。なんだこの二人?上半期滑り込んで来やがったな。
おまけに原作三巻だとま〜〜〜た狂って狂って狂って「さぁ次の映画を!」ってやってるんですよこの二人本当に何?一生そのままで居てほしい。同じ方を向いたままずっと走っててくれないか?祈り。
これでも相当端折ったのですがめちゃめちゃな長文になってしまった。いつもの事ながら失礼しました。
なんかもうちょっとこう…文章を簡潔かつ分かりやすくしたいんだけどオタクがクソ早口で延々とろくろ回しながら語ってるような気持ち悪い文生にしかならなくて…もうどうしようもないな……。
まぁそんなん関係ねえや!映画大好きポンポさん、また観に行きたいから上映館増えるのめっちゃ楽しみヤッタ〜!!
まだ一回しか観れてないので次観るときはもっと隅から隅までちゃんと観たいです。逆に一度しか観てないのにこんな″″″理解った″″″風で長文感想書いてるの何?気でも狂ってんのか?
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