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君たちはどう生きるかを観た


宮崎駿監督作品最新作、事前告知が何もなさ過ぎてマジで分からんむしろ人に言われるまで公開日が14日だったのを知らんかったレベルだったのですが公開初日に観に行きました。
早速ネットには様々な感想・考察が溢れてて「面白かった」「つまんなかった」「意味が分からなかった」などなどそれぞれの人の視点で物語を咀嚼しています。私も乗りてえそのビッグウェーブに!!!!!!!!!という訳でnoteを書いてる次第です。
つまりここから先はスタジオジブリ作品「君たちはどう生きるか」のネタバレ有りの感想という事だよ!見てない人はこれ以上読み進めるのをやめましょう。







夢のような映画だった

私がこの映画を観た時、真っ先に思った感想がこれ。夜眠って朝起きた時、フンワリと内容を思い出しながら「いやそんな事ありえねーだろ」と起きてからなら思えるのに夢を見てる時はそう思えず、摩訶不思議が当たり前のように成り立ってしまう、眠る時に見る夢。塔の世界で主人公眞人が経験した不思議な出来事が全て「夢みたいだ」と思ったし、後ほど詳しく後述しますが不思議な国のアリスを連想させるところがあり、わりと途中まで夢オチになるんじゃないか?と思ってました。全然そんな事は無かった。
面白かった、つまんなかったといった内容に関する話ではなく「夢を見ていたようだった」という感想が真っ先に出てくるのはこれまた不思議な感想です。自分の感想なのにね。でも映画見てこういう感想を抱くのもなかなかない経験なので、宮崎駿の作る世界の独特さを体感できた気がして悪い気は全然しないです。


この映画は何を伝えたかったのか?

ネットを見ると結構な人が「何を言いたいのか分からない」と言ってて、言いたい事は分からんでもないなと思ったし、「こういう事だったんじゃないか?」と考察してる人も多くて成る程なと納得もしました。
その上で私がこの映画が伝えたかった事、シンプルに「君たちはどう生きるか?」の一点なんじゃないでしょうか。タイトル回収!難しい事考えんでいい、宮崎駿から視聴者へどう生きるかという問いかけ!
頭お花畑の思考停止か?って思われそう。なんでこう思ったのか一つずつ書いていきます。


・石
・ヒミという存在
・配られた手札でどう生きるか?

とりあえず三つに分けて考えを述べていきますね。


眞人が自傷行為を行った石、石の積み木、宇宙から飛来した謎の石、この物語では沢山の石が出てきます。そして私は「石」は「意志」とも取れるんじゃないかな、と考えました。
そして作中何度も出てくる「悪意」というワード。悪意もまた意志無くして存在しません。石は登場人物達の思考、考えの象徴だったのかなと思います。

眞人は作中で、上流階級の子として登場します。働かないで勉強に集中してていいし、車で学校に行けるし、家にはお手伝いさんが何人もいる。しかし物語の舞台は大戦の最中です。当然眞人を面白くないと思う人間はいる。そしてその「悪意」を眞人はぶつけられてしまう。
しかし眞人にだって事情がある。大事なお母さんを火事で亡くし、お父さんはお母さんの妹(これ結構「マジで!?!?!?!?」ってなりました。エグいて!)と再婚、継母のお腹には弟か妹がいて、彼は内心「このままでは自分は家族から爪弾きにされてしまうのではないか」と怖がってたんじゃないかな、と思ったのです。実際、夏子さんが眞人の手をとって自分のお腹に当てた時、眞人はあからさまに嫌そうな反応を示していました。
そこでぶつけられる他人からの「悪意」、眞人からすればなんで自分ばかり!となるでしょう。
私は、彼が石を使って自傷行為をしたのは父親への当てつけだと思いました。自分がこんなに辛い目にあってるのはあなたのせい、と目に見える形にしたかったんじゃないかな、と。しかしそれが褒められる事では無いのを分ってるから「転んだ」と嘘をつき、けれども父親は「誰にやられた」の一点張りで眞人の肩身の狭い思いを分かってはくれなかった、という「悪意」による負の連鎖。

物語に石が登場する時は大体あまりいい事が起こってないなと思いました。産屋で眞人達を拒絶したのもやっぱり石であり夏子さんの「来ないで」という意志であり、深掘りしていけばうっすら自分を苦手としている甥っ子が疎ましいという「悪意」でしたから。

じゃあその意志・悪意は悪いもんなのか?と言われればそんな事はない、と思う。
人間、24時間365日善人でいる事も悪人でいる事もできません。どんなに善い人でも魔が刺して悪い事をしてしまうし、どんなにどうしようもなく救いようもなくろくでもない人間でも、気まぐれに善行をなすし、それによって救われる人間だってきっとどこかにいるんです。善と悪なんて人の視点で変わる、白黒はっきり分かれてるのではなくマーブルである、と私は考えています。
何が言いたいかっていうとね、「君たちはどう生きるか」は「そういう意志・悪意だって生きていく上では必要だよね」と言いたかったんじゃないかなと思います。
善いも悪いも断言しない、ただ「生きていく上でそれって切っても切り離せないよね」と肯定しているだけ、みたいな。

眞人は夏子さんを苦手としていた。自分が彼女を助けたいのではなく「お父さんが好きな人だから」という思考はある種の義務感、偽善的とも取れるでしょう。それは人によっては悪とも取れる。
夏子もまたおそらく眞人を苦手としていた。自分になんとなく壁を作っている甥っ子、亡き姉の忘れ形見、どう接すればいいのか分からない。やはりこれも人の視点で善とも悪とも取れる。
眞人の父もまたナチュラルに他人を見下しマウントを取り、ぱっと見は「なんだか嫌な人」だけど、息子の為に本気で怒り武器を手に走り出す事を躊躇わない善の部分がある。

そういう白だ黒だとはっきりさせるのではなくただそういうもんだよね、と言いたかったんじゃないかな。だって洗練潔白だけでは生きられないし、悪逆非道でもまた生きられないんだから。
善も悪も常に傍にいる。その上で「自分はどうしたいのか。何を善として何を悪とするのか」を取捨選択する。それが「生きる」という事である、みたいな。


ヒミという存在

物語のキーパーソンですね。眞人の母であり、しかし物語上で登場する時は少女であり、塔の世界が時空が歪んだ不思議な世界である事の象徴であった不思議の国のアリスのような子。
もうめ〜っちゃめちゃ不思議の国のアリスモチーフじゃなかったですかあの子!?あの赤いエプロンドレス、これが青かったらもうアリスですよ。そしてアリスといえば不思議の国に迷い込んで、(夢オチでしたけど)帰ってくる少女。ヒミもまた、幼い頃に塔の世界に迷い込んで一年後何事もなかったかのように戻ってきました。これで不思議の国のアリスイメージしてなかったら嘘だよ…。

そして彼女は眞人が自分の子であり、自分は将来火事で死んでしまう事を知ります。この時、彼女は眞人の言うように「火事で死なない生き方」を選ぶ事ができた。あの沢山の扉の中から、眞人の母親にならない扉を選ぶ事だってできた。
しかし彼女は例え最期火に焼かれて死ぬと分ってても眞人の母親になる扉を笑顔で選びました。
私はこれもまた「どう生きるか」という問いかけだったと思います。ヒミは、そう生きる事を選んだんです。彼女がそうしたいと決めたんです。それが彼女の意志であり、将来息子を悲しませる悪であると分かってても、眞人に出会う為に。
そしてアリスは、絶対に現実に帰る少女ですからね。これ制作側狙ったと思うんだけどどうかな〜!?

配られた手札でどう生きるか?

ここまで散々ぐだぐだ言いましたが、つまり「この世には完全な善人もいなければ悪人もいない」し「全てが満たされてる人間も何も無い人間もいない」し「人それぞれ配られた手札が違う中、その上でどのように生きるかはあなた次第」だって言いたかっただけなんじゃないかな。

青鷺が友達になっていいし。
この世は地獄だと嘆いてもいいし。
インコが人を食べたっていいし。
世界を作り変えちゃってもいいし。
その全部を手放してでも、元の世界に戻っちゃってもいいし。

否定はしない、でも多分肯定もしてくれない。ただ「そう生きたんだね」と見守ってくれる、こちらを看取ってくれるような映画だなと思いました。

これはちょっとディズニーへの悪口みたいになっちゃうのですが、近年のディズニー映画作品は「ありのままに生きよう」がテーマなのかなと思います。何も隠さず自分は自分だと表明しよう、みたいな。別にこれが悪い事だなんて言いません。でも、残念だけど人生ってそれだけで上手くいく訳ないんです。
ありのままでは生きられない。自分を偽って隠して嘘ついて、そうしてやっと社会に溶け込める人がいる。そして多分、現代社会に生きるほとんどの人がそうなんです。
眞人も夏子もヒミも何かを我慢している。ありのままの自分ではきっと受け入れてもらえない。そして作中に登場するすべてのキャラクターが、多分ありのままではないんです。何かを偽って生きている。

この「ありのままでは生きられない」という考え、人によっては冷たいと思われそうなんですけど私は「優しいな」と思いました。
ありのままでは生きられないけど、それでもこれだけは譲れないと思うものは選べる。そういう話がしたかったんじゃないかな。
そしてそんな雰囲気があるから、私はこの映画を観た時に「夢を見ていたようだった」と思ったのかもしれないなと思いました。こちらを看取ってくれるような映画って、多分初めてだったので。



他にも色々言いたい事はあるんだけど私の解釈はこれ!って感じです。
パンフ後日販売らしいので、読んだらまた感想変わるかな。

とにかく人によっては受け取り方が違う映画だと思いました。君たちはこの映画を観てどう思った?



余談なのですが、この映画まーーーーーーじで何の宣伝もなかったのですが、宮崎駿大好きな先輩と「実際この内容で宣伝するにしても何を宣伝すればいいのか分かんないよね…」という話になりました。確かにこれ何を前面的に押し出して広告うてばいいのか分かんない!観終わった後でも分からない!
子供向け感あんまりないしなーかといって大人も楽しめる冒険ファンタジー!だけを前面に押し出すのも違うしなー。じゃあ考えさせられる大人向け作品かと言われるとあの不思議な世界での冒険のワクワク感はそれだけで宣伝するのは勿体ないしな…的な…。
最終的に「何も言わんかったのがかえって良かったかも」となりました。でもこんな宣伝の仕方ジブリしか許されないよ!!!!!!!!!!

そしてエンディングで流れる米津玄師の主題歌。いいですかオタク、もうオタクが「推しの解釈で米津玄師に負けた」なんて言う時代は終わりました。
米津玄師の勢い、留まる事を知らないな…。


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