パンはパンでも食べられないパンはなーんだ。

「パンはパンでも食べられないパンはなーんだ。」

夏の夜風に吹かれながら、僕はただ知ってる街の知ってるアスファルトを踏み呆けていた。
それはそうとプラスチック容器に舐めては入れ舐めては入れを繰り返す海外のあの謎のスティックのあめちゃん。工程としてはありえなく汚いのになんであんなに欲しくなっちゃうんでしょう。
大人になったらああいうのよりルマンドとかホワイトロリータみたいな高貴なお菓子を求めるようになると勝手に思っていたのですが、僕たちは永遠にアレ以外では出会ったことの無い妙な酸っぱさの水をわざわざスプレーに入れて舌にふきかけたり、哺乳瓶を模したあめちゃんに得体の知れない酸っぱい粉をつけて舐めるという謎のシステムに惹かれてしまうのですね。
高貴なお菓子もそれはそれとして食いますよ。それなりの財と自由を手に入れたので。

突然目の前を黒い影が横切り無秩序に投げ捨てられた袋の山にガサガサと突っ込んでいくのが見えた。
猫かな、とも思ったのですが猫とも違うようなフォルムで、もう少し小さくて早かったように思います。ネズミやイタチかなにかでしょうか。
いやいやネズミにしては少しデカすぎやしないでしょうか。
とても気になるので追いかけて確かめてみたいところですがここは大人なのでグッと押えます。

それにしても月がきれいですね。
そういえば月って同じ大きさのはずなのになんでめちゃくちゃ大きい夜があるんでしょう。なんかのギャグかと思うくらいデカい時ありますよね。まあそんなのしったこっちゃないんですけど。
知りたい人は調べてください。yhrtk(ヤフれタコ)

いつもの通り脳を介さず自分自身と脊髄で会話をしていると、気づけば都会に出てきてから馴染みのなくなった舗装されていない土がむき出しの地面を踏みしめていた。

あれ

これって舗装されてないように見えて公園とか中央分離帯と一緒で実は舗装されてる土系舗装って言うんでしたっけ。まあ今どうでもいっか。

本当にどうでもいいので描写するのを辞めてやろうかと思ったが、博識をひけらかしたいので描写した。
どちらにせよ腹立たしい。

慌てて顔を上げると、そこはおおよそ大都会のど真ん中とは思えない荒れた土地で、バスケ選手くらいの高さしかない木造の建物と浮世絵でしか見ないような木造の橋を月明かりだけがほんのり照らしていた。
そこにはもはや懐かしいという感覚は通り越し逆に新鮮な風景が広がっていた。
息を飲むより先に口元が動いたが、すぐに意味をなさないことを悟り吹き出しかけた音は胃の中へと方向を変えた。

こんなにも馬鹿げた非日常がこんなにもぬるくあっさりと訪れるものかと戸惑いつつも、自分の身に起きた誰かとんでもなく暇な療養中バンドマンがnoteに書き殴った雑なネット小説のような展開を飲み込むのにさほど時間はかからなかった。

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