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80s

今では女房子供もち 思えば遠くへ来たもんだ

此の先まだまだ何時までか 生きてゆくであらうけど

生きてゆくのであらうけど

遠く経て来た日や夜の あんまりこんなにこひしゆては

なんだか自信が持てないよ

            「頑是ない歌」中原中也 より一部抜粋


という感じに、ときどき昔がたまらなく恋しくなることがある。
これはたぶん、たとえば二十代半ばの若者が中学生の頃を懐かしむという感覚とは少し異なるように思う。どこがどう異なるのだ? と詰問されても上手く答えられない。いずれわかると思う、と言うしかない。

とはいえ、四半世紀前に戻りたいとか、やり直したいとは思わない。
ただ、ときおり愛おしく思い出すだけなのだ。
いまは音楽も、フラット且つウエットに心から楽しんでいる。
それに、いまのぼくは、たぶん昔のぼくよりも優しくていい奴だと思う。
それがなによりだ。それでじゅうぶんだと思っている。

ちなみに中也の詩は こう続く。


さりとて生きてゆく限り 結局我ン張る僕の性質(さが)

と思えば なんだか我ながら いたわしいものですよ





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