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「最高の友人の話」A面

私には最高の友人Aが居る。名前は秘密だが、心が清らかで少しおっちょこちょい、かつ愛らしい、ふわふわとして肌が白雪姫のように白く、そして慎ましやかであり健気だ。声は小さい。おかしなことに恋人はずっといない。

彼女がある深夜、冬の寒い日だ、めずらしく電話をかけてきて、聞けば涙声なのだ。私は慌てふためき「どうした!?大丈夫!?」と彼女の話を急かした。するとゆっくりと打ち明けられた事実はこうだった。

「出来心でほんのちょっとエッチなサイトを見てしまった」「ほんのちょっとだ」「すると次の日どこからかメッセージが来て、それは有料サイトだったので30万円払えという」「払わないと実家に請求書を送られる」「エッチなサイトを覗いたことが親にバレる」「どうしよう山田」

友人、それは架空請求というやつだよ。払ってはいけないよ。
でも請求書がくるよ、山田!
友人それは詐欺なんだよ、スマホでGoogleを開いて調べてご覧なさい。
でもでも、親にバレるよ山田!

そんなシューベルトの魔王のようなやりとりを深夜幾度もなく繰り返し、遂には友人の友人を召喚してロイヤルホストで2人で説得、なんとか回避できたのだが、最後には3人とも煮込まれすぎたネギのようにくたくたに疲れて家に帰った。

そうしてようやく暖かい布団に入り、胸に込み上げるのは、この、まるで狐と狸の騙し合いのような令和の世に、燦々輝く天使のような彼女の[純粋さ]だ。「エッチなサイトを見たことが親にバレる」て。そんな昭和の漫画みたいな…。

純粋ってすごい。彼女から見た世界に嘘や詐欺はないし、それは彼女が嘘つきや詐欺師ではないから見えている世界なのでして…と思うとどうにも胸がキューンとして、絶滅危惧種みたいな彼女にマンションの一つでも買ってやりたい。

どうか神様永久に彼女がハッピーで最高でありますように。合掌。

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