異世界四天王5本勝負 その3

もう十分だ…もう十分堪能したよ

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いえいえ まだ残っておりますので

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もう十分だろう!(嘆き)

概要

タイトルで全て説明する系の、本屋で売る分にはこういうのがいいんだろうなぁってタイプの作品。アニメ化でもそれを踏まえてサブタイトルがその回を大体説明している。

とにかく超強い主人公が「また俺、何かやっちゃいました?」していく作品であり、インターネット広告のバナーに書いてあることが大体この作品の全てだ。

主人公は力を持っていて、その大きさを自覚していない。ついでに自信もない。周りの人物はそんな主人公のぶっ飛び具合に呆れつつもその人柄に…とった具合。

そこでイキリとは?→周りのキャラについて→主人公の変化→勘違いコメディという順番で各トピックについて感想を述べていく。

また俺何かやっちゃいました?

これ自体は典型的なイキリのタイプ。同じすごいことをするにしても、やってる側がさも簡単そうに余裕ありげにすると実際カッコいいものだ。しかしこれが行きすぎたのか「主人公はそれをやろうとすらしてない」という形で位置エネルギーを稼ごうとするようなのも多々見受けられる。

圧倒的強者が「撫でただけなのだがな」とかいうならまだ分かるが、それはマウントの取り方やそこに至る流れがあるからかっこいいのであって、単に自分の性能イキリをすればいいというものではない。

加えて自分のやってることが分かっていない今作の主人公は端的に言って頭の弱い人である。弱すぎ太郎だって威力は気にしていたが魔法を発動させるという意思がないわけじゃない。行動を意図していないレベルに達すると難聴系主人公みたいな苛立を覚えるのは自分だけだろうか?

イキらないなら主人公が女性で美少女動物園になればまだマシなのだが残念かな周りの女に異性と認識される程度には主人公は男なのだ。

主人公が何も意図していないならどう話を動かすのかというと周りの人間は主人公を適当な言い訳を考えて主人公を操縦する。破軍(甲)と破軍(乙)かな?

一応結の部分では主人公に自我が芽生え始めるが、主人公の手に負えない事態が主人公の活躍はあまり関係なしに収束するので結局締まりが悪いのはそのままだ。イキれない主人公の無様な末路。

周りのキャラ

思いのほか悪くない。金にガメついが常識的な面もあるキャラ、愉快なヤンデレ系、優しいお姉さんタイプ…と主人公を囲むメスはそこそこの人格を持っている。人格虚無のオナホというほどではない。

問題はこいつらが同じことしか言わない点だろうか?全員が己の役割に非常に忠実に添うので場や状況が変わっても同じことしか起こらない。慣れてくると同じやり取りの繰り返しにうんざりしてくる。

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特に一部のキャラはあまり気持ちがいい性格でないのに人の話を聞かず欲望を垂れ流すくせに真っ当なことを言うキャラを足蹴にするのでただただ不快だ。ロリババアとか。

キャラクターが掘り下げられてもそれがそのキャラの変化に繋がることがほとんどないので、未調理の具材が幾つも並んでいるのをただ眺めたり生で食べるハメになる。

唯一呪いのベルトがひっついたキャラ(名前忘れた)だけは主人公を慰めたりそれによって内的な変化を促したり主人公のおかげで自分が変われたと勇気を出して家族との冷え切った関係にも向き合ったりと真っ当な話をしている。主人公は彼女だった?

そういうことをされると目線がウンコを見る目からまともなものを見る目に引き上げられて…ただただ虚しさが増す。味のないガムの癖に食感だけ立派でもただただ噛みにくいだけである。

主人公の内面

力に自覚のないノー○○ンなことはもう気にしないとして、もう一つの面である「自信のなさ」は重要である。

主人公は故郷の村の中では相対的にクソ雑魚なので自分に自信がない。その自信のなさは外に出て色んな騒動を解決しても拭われることはなかった。むしろ外界の他人との相対的な力の差に気づくと自信がないと言い張るのが難しいので意図的に盲目にされているのかもしれない。

そんな中心根はまともな上自分から変わろうともしているので一見ヤバそうな相手にも立ち向かい主人公は心を強くしていくのである───と書くとドラマを感じるが当然これはナーロッパアニメなのでそんなものはない。

主人公がいくら決心しても敵は主人公に比べればクソ雑魚だから勇気を振り絞ったところで何にもならない。精神的なトラウマを乗り越える場合とは訳が違うので主人公が自信をつけるためには試練は強敵でなくてはならない。

黄門様が印籠出せば悪役が負けると結果は分かっていても、毎回適度なギリギリ感を演出したり登場人物に感情移入できるから意味がある。この物語はその手の努力を完全に放棄しており、「ってオイィ!」と突っ込むコメディもどきパート以外本当に何にもない。つまんねーのに早口で捲し立てるのやめろって、底辺ゆっくり実況じゃないんだからさ。

お話の構造も微妙だ。基本的に周りのキャラが話を回していき主人公はその力が必要になったら唐突に出てくる舞台装置としての要素が強い。成長させにくい上に動かしにくいので頭脳と主体性と出番を剥奪された主人公って…何?

更に更にィ、そのサブキャラの動かし方にしたって誰かが成長するわけでもなくぬるま湯のような掛け合い漫才がひたすら続くあるさま。隙を生じぬ三段構えのつまらなさ。どうせなら1話完結型で主人公様にガンガン悪役を倒して欲しいものだ。

前半だけ見るといかに自信が無かろうと主人公は無意識に振るった力だけで事態を解決できるのだから周りの人間が適当に操縦すれば自信なんて必要がないというのはなんとも皮肉な話にさえ見えてきた。でもお話のベクトルとしては主人公は英雄になっていくらしい。

勘違いコメディ

主人公は自分の実力がないと勘違いしているのと、力のない主人公を周りが力があると勘違いすることの何が違うのか?

後者は味方や敵が120%の力を出しいつか主人公自信も成長していくというギャグからシリアスへ滑らかに移行可能な王道パターンが構築されているが前者はイキリの道具が精々である。何かいい調理法が発見されればいいなと感じる次第。

なお、主人公の腰巾着みたいな最初は嫌味ったらしかった男キャラは後者の勘違いコメディ枠のような扱いを受ける───あれ?こいつ主人公でよくない?頑張れ!

総評

なまじ普通の話が展開されるが故に蜘蛛のように鼻ほじりながら見ることもできず結果として苦行度合いが高かった。




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