メタファー 雑感
クリアしたので
やりたかったこと
お題目としては真なる幻想世界を王道で描くということになると思われる。コンセプトビデオではそこら辺を説明している。改めてみると大分こっぱずかしい、正直クセェなこれ。
具体的にどういう手段を取るかを考えてみると、奇をてらわずに、既存のものの範囲で、革新的なことをしつつ、ゲームとしてもちゃんと面白くしたい…というように受け取った。まずはこのお題目が果たされているかどうかを考えてみたい。
①奇をてらわない…実現。基本的には王道ファンタジーの範囲で進行する。
②既存のものの再構成ないし再解釈…ある程度成功。”メタファー”という言葉でゲーム内に盛り込まれた諸要素を見ると出来ているように感じる。しかし、ここを既視感という言葉で実現が出来ていないと判断することをそこまで無茶とも感じないので、人によりけりといったところか。
③革新性…微妙。ファンタジーの再解釈の部分とそれがストーリーに落とし込まれた結果として見たことがないものができたか?と問うとなかなか難しいものがある。ただ、結局はこういう新規性は王道とのトレードオフになるので、両方を高い水準でやれというのも無理かなといったところ。「それができれば苦労はしねェ!」
④ゲームとしての面白さ…うん!君も合格!いい話題作になりなよ♧
総合的にはよくやってると感じた。筆者は大変満足している。
メタファー
コンセプトビデオの所でリンクを開いた方はお気づきかと思うが、初期段階では”プロジェクト:リファンタジー”なのだ。そう、”メタファー”はビジュアルコンセプトか何かが出た段階で急に降って湧いたワードなのだ。正直初報で見た時「これ結局、いつもの感じなのでは…?」と思った記憶がある。そしてこの予感はおおむね当たっていた。ここではそれに言及していく。
辞書的な意味ではメタファーとはそのまま「隠喩」のことで比喩の一形態である。例えば昔話に登場する様々な事象・人物は当時の社会情勢や問題に対応を持っていたりする。これがいわゆるメタファーだ。通俗的な例えを出すと男根のメタファーなどがある。ユングの功罪は最近罪が多いように思えてくる。つまり、上位の構造を下部の構造に落とし込む入れ子的な構造を指す。そこから転じて下部構造が上位構造に対して言及をかけるような逆向きの表現手法を”メタ展開”と言ったりもする。
長ったらしくなったが、メタファー:リファンタジオのメタとはこの両方を含んでいるように思える。全体で”相互言及的”だし、その意味で少々メタ的な展開もある。幻想世界の役割を再解釈して新しい定義を述べる…(相対する概念同士を競わせて、新しい着地点を見ることをジンテーゼというらしい。王道と邪道、現代と異世界を競わせたこの作品もまたジンテーゼなのかもしれない。)というお題目を掲げて実行する上でこうなることは自然なものといえよう。
そしてその流れで「ATLUSがやりそうな」メタ展開をすることも合理性があると感じた。そしてこのある種の「既視感があってもいいか」というのが、ATLUSのRPG群からあまたの要素を抽出して混ぜた構造をもまた正当化している。ファンはスーパーATLUS大戦になっていることを好ましくないとはそうそう思わないし、知らない人は知らないんだからこの点は正当化するまでもなくこちらはそもそも問題ないのだが。これで文句言うやつは期待がデカすぎる。
まとめると、既視感だったり展開の一部がメタ的だったり…と期待感を削ぎがちな要素はそれだけ聞くと悪目立ちして、最初の宣言に反しているようにも見えるが、やりたいことや物語の構造的はちゃんと妥当な地点へ着地できているというのが主張したいところ。
気になった点としては自分たちが邪道の中の王道になったと自覚した上で正統派の王道に向かい合うってのが最初の宣言だった気がするので、このないまぜな感じは少し違う気もする。コンセプトビデオ2を見るに、一回企画がおじゃんというか大きく白紙に戻って既存のパーツでさっさと作る必要性があったのかもしれない。まあ、コンセプトビデオ2の邪道を少々含んでいて見た目は古典的なファンタジーな作品はいつものATLUS感が今より強くなってしまいそうなので、今の形の方ががだいぶよさそうである。
ストーリーの感想
ストーリー中ではけっこうストレートに差別や因習が出てくる。コンプラの時代ではファンタジーや露骨な異人の種族を使わないと難しい領域だと思った。現代とは異なる世界で現代にもある問題を投影するという基本構造を考えるとある種ファンタジーならではの要素といえるだろう。
やること自体やそれを作る流れは非常に王道だし、最後の方でペルソナ5みたいに全員が作品全体での主張を演説してラスボスと対峙するのはまさにという感じ。その意味でおおよその展開は予想がつくが、「この要素・キャラはなんなのか」についての真相の部分には独自設定が絡んでるので、「そういうことだったのか」という新鮮さや驚き自体はちゃんと摂取できた。
個人的には好感触。
既視感
ハッキリ言う。このゲームの大枠はペルソナ5だ。そうでない部分もメガテン、世界樹、アバタール・チューナー…おいおい。
だがこれはそんなに悪いことではない。ペルソナ5のカレンダーシステムでRPGパートとそれ以外のパートをメリハリをもって切り替えつつ、プレスターンバトルを合体スキル込みでプレイしつつ、成長システムは世界樹やアバチュのようなスキルセットを獲得して育てる形式…既存のものをがっつり混ぜて組み合わせるだけで肌触りは未知のものになっている。
それに悪いことだけではない。その要素を入れるうえでのデザインにおけるセオリーは把握されているのでその分難易度調整や、プレイアビリティの向上などにより多くの手間が注がれているといえる。プレイすれば、より広いユーザーに訴求する一般性と難易度を上げた時のコアユーザー向けの調整がうまく両立していると感じることができた。流石に一般性を高める部分が難易度の上限を少し下げてしまっているきらいがあるが、結局は時間を喰うのがATLUSのゲームだし、その中で手触りが良いというのは好印象である。簡単すぎると文句が出るならお手軽要素を片っぱしから縛れ。
ゲーム部分に入ってる既視感は上手く調理されて新鮮さを十分に出せている。にやにやできるネタを見ながら楽しもうよというのが結論である。ヒュルケンベルグで◯◯◯◯マスターのアーキタイプを取得した時のセリフではクスッとした。
大まかな感想、テーマへの言及は以上である。以下では、ゲームへのよかった感想を書き連ねるぞ。内容へのネタバレはほぼない(はずだ)が、システムへの言及は一切躊躇しない。それが気になる人はブラウザバックしてね。
ゲームのいいとこ列挙
①人間ステとコミュコンプが容易。あえてゲーム内の用語は使わない。すべてをコンプすることに綿密なチャートは要らない。そもそも1年かけてやらないしな、生活パートは楽しいけど長すぎても時間喰うし良いと思う。
②アクションパートが便利。使いたくなければ使わない手もあるが、敵をポケモンアルセウスみたいな感じでしばきまくって気絶させるとhpが4割減り、気絶させた状態で戦闘開始。敵に囲まれると非常に狙いづらいなど、毎回都合のいい先行は取れないのもいい塩梅。たまにアホみたいな攻撃範囲の奴がいてイラつくが、△ボタンを押して強制コマンドパート挑むなどしよう。
③アーキタイプがいい塩梅。MAG(名前がそのまんま)を払って購入、レベルをあげることでスキルを覚える。既に覚えた他のアーキのスキルをMAGを払って「継承」させて専用の空き枠(1~4、コミュで増えるぞ)に入れることもでき、一定の汎用性と構築の制限をうまく両立している。このせいで全キャラが複数属性をそろて雑に弱点を突くプレイパターンに収斂しにくい。出てくる敵のパーティから、戦闘前にアーキを付け替えて有利属性で固めることもあるが、強敵以外にはそこまでする必要もない。
④ジンテーゼが面白い。アバチュでも見た合体スキル。これで構築を考える際に持ってるアーキをどう並べるかいろいろ考えることになる。雑魚戦は全体スキルを連打して楽に終わる戦闘はスムーズに終わらせたり、ボス戦では強力な効果を駆使して戦闘を有利に進めたりとプレイの幅が色々増える。アイコンを複数使うので、効果にもいろいろと幅があり、新しいアーキタイプを手に入れた直後から即戦力にできるのも良い点だ。
⑤プレイアビリティ向上の施策。恐ろしく緩い条件(宝箱をあける、アイテムを拾う、ロードが挟まるタイプのマップ移動)でオートセーブされて死ねば自動でそこからやり直せる。どうせセーブ地点をうろつく芋プレイになるしこういうのはいくらでもやればいい。また戦闘もL3でやり直せるので、細かいラッキーを積み重ねたい時に粘ったり、逃走できなければやり直してHPの損失を抑えたりできる。どうせ死ぬときはあっさり死ぬのでしょうもない死は回避できるならしたい。嫌なら押さないようにしよう。
⑥情報屋。ボスの弱点ややってることなどをお金を出して前もって教えてもらえる。死に覚えのフェーズに意味をあまり感じないし、ダンジョン突入で時間が進むのでダンジョンに入ってから対抗策が取れないなどの事態を回避できる点でも必要だし良いと思う。
最後に、ヒュルケンベルグさんかなり好きだけど立ち絵の髪の毛もっさりしすぎだろ。アニメムービーも3dモデルももうちょっとシュッとしてないか?そういうところまで含めて味なのだが。