ソウルハッカーズ2 かんそうぶん

なつやすみの宿題です。

いいところ

ご意見ご感想の方が長くなるんだから先にいいところを上げておこうと思う。

第一にプレイ全体を通して非常にテンポがいい。一回の雑魚戦を取ってみてもそうだし、ストーリーやダンジョンについてもテンポよく進んでいくのは大きな魅力といえる。全体のデザインがテンポを損なわないように統一されている。

第二に、プレイヤー側の強化がかなり気前がいい。SJやSHにあるようなプレイヤー側の機能改善が戦闘・攻略の両面にきっちりと効いてくる。導線もしっかりとしているので主人公たちがメキメキと強くなるのを実感できるのはRPGに大事な要素だ。

第三にキャラクターに好感が持てる。基本的に悪い人がいない話であること、攻略とキャラクターのバックボーン掘り下げが結びついているため素直に好きになれる。ただ、シリーズにいるようなアクの強い登場人物はナリをひそめているのでちょっと品行方正過ぎるかな…といった具合。

第四にサバト、コマンダースキルという戦闘での追加要素はだいぶ出来がいい。プレスは増えた行動が攻撃か補助、回復に使われるので、弱点を突くコマンドに疑似的にこれらの効果を付与し自動化しているのは遊びやすい。サバトは自動で全体攻撃を、サバト時に発動する追撃スキルは補助や回復だけでなく金やアイテムなど多彩な恩恵をもたらす。スタックが増えるのも優位が可視化されて気持ちいい。コマンダースキルは戦闘中に臨機応変に動くことができプレイが進むごとに強いものが増えていくので楽しい。

問題点

とにかくいろいろと言われている本作。文句を言う過程でこそゲームを詳しく説明できてしまう性分なのでどうしても長くなる。でも点数は分量と比例しないことは断っておく。

ストーリーの感想で細かく触れるが、作中でのテーマとして「行き詰り」が提示されている。作中世界では文化も技術も思想も…何もかもが見えない壁にぶち当たりノスタルジックの縮小再生産をしている。それをいつの間にかシンギュラリティを起こしてたAIがエージェントをリアルボディを用意して、打ち砕いていくという話が展開される。

サイバーパンク作れませぇん!と臆面もなく言ってるところはさておき、問題はこの壁が作中に分かりやすい形で出てこないことだ。プレイヤーとしては「アトラス(メガテン、プレスターン、合体、etc…)行き詰ってるよなぁ…」という閉塞感に目が行く。真3で生まれたプレスターンのver1.5みたいなシステムもこれを演出する。2.0が欲しいなあという潜在的な欲望を自分は強く自覚してしまった。全体的に各所にメタ的に存在する「見えない壁」が問題点の源泉だ。

また。テンポの良さとトレードオフになったものも、人によっては問題点になる。このうち、ほめるところがないものだけをあげるとダンジョンが画一的すぎるのはいただけない。廃墟と電脳空間みたいな無機質空間が全体の8割なのはダメだろう。後者はメインキャラの精神構造が反映されたダンジョン…なのに、ギミックも背景もすべてのキャラに共通するのはバカにしてんだろ。

そして最大の問題点はプロモーションの失敗だろう。「ハードボイルド」だの「ペルソナとメガテンを継ぐ」だの有限不実行を尽くしているのは看過できない。まあこれは作り手と発信者が不一致してるんだろうということでなんとか見逃してあげたい。にしたって2つけたやつは本物のバカだから責任とれやボケカス。

あとDLCが本編の分割販売としか言えないものが多々あり、ユーザーをなめ腐っている。フルプライスでこれは決めたやつ〇ねや以外の感想がない。

継げましたか…?

作品を要素で分解する過程で、この継承を見てみよう。

ペルソナっぽい要素

  • UI…戦闘時のUIはもろにペルソナ5だ。それはいいけどもっとデジタル感というか、AR的なデザインにはできなかったのか?

  • ギャルゲシステム…キャラのパーソナリティを開示する過程が攻略にかかわる。ここは成功してんじゃないかな

  • 戦闘…人間4人が悪魔を装備する。デビルサマナー…サマナー?

メガテンっぽい要素

  • 悪魔が出てくる…もっと強くできただろう。ライドウは操作という形でデビルサマナーのフレーバーを非常によく表していたのだが、当作品ではそれが中途半端にだけ出ている。

継いでるか?これ…特に女神転生…。文句としては、そもそもハッカーズがこの二つで分類できない独自路線を構築しているんだからそこを拡張しろというのが一つ、アンケ―トで「メガテンらしさ、ペルソナらしさってなんですか」と聞かれたから答えたのに作り手が全然それを提出できてないのがもう一つ。

自分たちがかんがえる「らしさ」に自信を持つわけでもなく、アンケートで聞いてその反応を見てチューンするって行為がノスタルジーの再生産そのものだ。作り手の視点から「過去の作品が取捨選択したもの」の捨てる側も含めてみて初めてらしさが定義できると思う。

しかもハッカーズ要素はというと、カイジで遠藤が金貸したときの誓約書の隅っこの方にちっちゃく書かれてた利率の注意事項くらいの存在感を放っている。バカにしてんのか?あ?この周辺は完全に擁護不能だ。社内の資料を死ぬほど漁ってこいや、ボケ。

プレイサイクル

ゲームのプレイサイクルを確認しよう。戦闘で得た資源により仲魔、プレイヤーの二つの要素を強化していく。強化された仲魔とプレイヤーでより強い敵やボスをぶちのめしていく。

プレスターンがこのRPG黄金形にもたらした恩恵は次の通り

  • 有利不利が一瞬で変化するのでスピーディかつ緊張感のあるメリハリが戦闘にもたらされる

  • スキルの組み合わせの価値が敵のパターンに応じて大きく変化する。これにより合体に意味が出る。

  • 敵の対策、攻略が分かりやすくなり合体を通して計画を立てて攻略する楽しみが生まれる。

これは真3で生み出されアバチュやペルソナ、ライドウ、デビサバ…と作品ごとに微細だが面白い変化を与えられていった。それぞれのver1.5を見せてくれたわけだ。

プレスをとりまく環境は真4あたりで「継承スキルの任意化」「雑魚敵のhp増量」により不可逆に編成した。スキルの任意化は強いスキルの組み合わせの価値を落とし、雑魚敵が固くなったのはハードコアさ…ではなく任意化と組んでテンポの阻害と作業感を増やした。

任意化は適性システムでうまく切り抜けたが、やはり1.5どまりだと感じた。SH2ではスキル数を絞り、継承できる属性を絞り…雑魚を柔らかくした。これでテンポがよくなるわけだ。ただテンポとのトレードオフで合体の面白さは完全に消え去った、デビサバの合体はよくやってたのにな。ハードコアさもどっか行った。ハードでもゲームオーバーしたの2,3回だぞ。ボス戦のできはサバトやコマンダーを使って上手く戦えるようデザインされておりそこは素直にプラスではあるのだが。

改善点

要はぼくのかんがえたさいきょうのかいぜんあん。分かった上でATLUS側はやってない気もするので読み飛ばしてもらってもいい。

まず必要なのは継承にルールを復活させ代わりにルールや悪魔の覚えられるスキルの可視化などだろう。先を見据えて合体の計画を練っていくのをゲーム内の情報のみで完結させることで合体の楽しみを明瞭にする。

また戦闘システムは弱点を突くか、~をするかという形で選択肢がもう一つあるべきだと思う。弱点を突く行為が分かりやすく推奨されるのはデザイン上いいことだが、それだけだと出る雑魚敵の弱点を覚えたらあとは弱点をつける仲魔つくってひたすらつくことになる。だが、弱点を探るのはつまらないしコンテンツにもしづらい。だからここも可視化すると上の流れが簡単になりすぎる。故に戦闘に別の軸を設けて都度意味のある選択肢が生まれたら弱点探しを消しつつ、より楽しくなるだろうというわけだ。

基本的に弱点を突いてアドバンテージを取るシステム上、弱点コマンドに拮抗する選択肢を戦闘内では作りづらい。ボス戦はここをギミックで、雑魚戦は経験値が増えるとかマクロに攻略にかかわる要素を作るのがいいだろう。アバチュのハントスキルなどが分かりやすい。行動を増やしつつ、主人公たちの強化もできると超気持ちいいぞ。

ストーリーの文句

普段どうでもいいみたいな顔しといてあるんじゃねえか!そりゃあるわよ。

まずテンポ確保のためにキャラ数やメインの文章がかなりシンプルにまとまっている。これに加えて盤外からの追加要素がない。これは後出しじゃんけんがないといえば都合がいいが、実際はストーリーの初期状態でほぼすべての要素が出そろうためそのあとの流れがほぼすべて読めてしまうという大問題を抱えている。宇宙にあるすべての粒子と物理法則とかかる力が分かっているがゆえに未来が過去のように見える。いわゆるラプラスの悪魔状態。

サイバーパンクはできないという話にも詳しく触れる。サイバーパンクの定義としては一歩進んだ技術に対して科学的な興味だけではなく、それのもたらす社会、人間への影響も考える。その過程を通して、問題提起をしていく…という非常に硬派な作風。

サイバーパンクができないというのは、昔のサイバーパンク作品にあったような技術が主に〇国とかで実用化されて現実が追いついてしまい、人間の深い部分に科学が漸近していく様子が想像しにくくなったのだ。ギブスンはあの世で笑ってるのか泣いてるのかどっちなんだろう?

ネタバレになるが、この作品は「シンギュラリティを起こしたAI」と「超光速通信システム」、「人間の魂を定義し変容させる技術」が出てきてラスボスはこれらの組み合わせで世界を…

あるじゃねーか!!人間社会を根本から変容させる超技術!!!

これをテーマや人間の問題にからめるだけでサイバーパンク作れちゃうよ、もう。いやさ、部分的にはやっているし真エンドの語りはそういうことをやっている。問題提起をもっと微細にしておけばよかったのだが、それこそ「見えない壁」に行き詰った登場人物がさ、やればいいんじゃない?

一応形式的には全部あるのだがどれもパンチが弱い。あと超光速通信システムの使い道が「ラグなしであらゆる個所に通信できる」程度なのはカスだ。ここでいうラグがないとはホースに水を流す際に抵抗がなくなることを意味するが、ホースに水を流すポンプとそもそものホースの太さには関与しない。

超光速通信システムのやばさ、現実に実装されない理由としては因果律を破ってしまうことで、端的に言うと過去に情報を送れる点だ。シュタゲとか見てね。もうちょっとSFとか調べてください。SJとかは製作陣の下調べにかなり気合入ってましたよ。下調べというか科学技術にかなり興味がありそれが高じた結果なので、趣味が仕事に活きた風に見えるが。

総評

いい点はあるがトレードオフになったもの、そもそも作り手のビジョンがかけているなどの欠点を埋め切れるほどではない。フルプライスでは買えないゲームという評価。50点とさせていただきまスゥゥゥ…。(基礎点35、フィグ5、マーメイド10)

最後に一言

フィグ可愛すぎだろ!フィグ可愛すぎだろ!フィグ可愛すぎだろ!DLCによるプレイアブル化かフィグ主人公の3待ってます!!

追記:またUnityなので3Dマップの読み込みに微妙にロードが挟まるのはクエスト受注→聞き込み→ダンジョンとかしてるとクッソだるい。Unityやめろや。


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