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滑床・松野の、いやし旅。

―傑作ですね、このポスター。

―出合滑(であいなめ)、きれいだな。

3月から、えひめいやしの南予博2016が開催されます。
出合滑は、滑床渓谷…いや、今となっては南予を代表するヒーリング・スポットですね。  今日は少しだけ、癒しの旅へご案内したいと思います。


夏休み、午前5時20分、日の出時刻まではあと5分ほど。夜明け前のほんの一瞬、滑床キャンプ場に静寂が訪れる。早起きしていた鳥の鳴き声も止み、絶えるはずのない渓流の水音さえも感じない森閑(しんかん)。静けさで目が覚めた。テントから顔を出すと、昨夜の闇は霧へと変っていて、木立の隙間から見える狭い空は青みがかったグレー、辺りは潤いある冷たい空気に満ちている。

隣で眠っている家族を起こさないように、そっとシュラフのジッパーを下げ、靴を履く。枯れ葉や枝は夏の露で柔らかく、踏みしめても高い音を立てる心配はない。アカショウビンが再びキョロロロロ…と歌い始めると、一斉に沈黙が破れた。風が川の音を運び、鳥はさえずり、空の青が鮮やかさを増すと同時に霧が晴れ、視界に緑が広がった。

薪をくべ、火を起こす。焚き木の爆(は)ぜる音で起こしてしまったのか、コーヒーの香りが漂い始めると、「おはよう」の挨拶が後ろから聞こえてきた。


トーストにベーコンエッグとコーヒー。簡単な朝食を済ませ、雪輪の滝への散策に誘ってみたが、もう少しキャンプ場の朝を楽しんでいたいと振られてしまった。残る家族に片付けを任せて、私は渓谷の遊歩道に向かった。


午前8時に差し掛かる頃、右岸ルートで日本の滝百選の名瀑・雪輪の滝を目指して歩き始める。万年橋ですれ違ったグル―プは三本杭を目指すのだろう。 ―いつか家族で鬼ヶ城山系を登りたいなぁ― また一つ、楽しみが増えたのだった。

晴天が続いているからだろう、水面の表情は穏やかで、アマゴの美しい朱点が見えるほど澄んでいる。なめらかな岩肌を水がすべる様子は、滑床の名に相応しい。その反面、勢いのある河鹿の滝や岳見岩の巨石など荒々しい表情もあり、見ていて飽きることが無い。水気を含んだ風が吹き抜け、凛とした森林のにおいを運び、石畳の脇にはイワタバコが薄紫の可愛い花を咲かせている。陽の光が後方から降り注ぎ、前に見える瑞々しい苔に反射してキラキラと輝きはじめていた。

遊仙橋(ゆうせんきょう)から鬼ヶ城山の景観を楽しんだら、ゴールはすぐそこだ。


 午前8時半、山陰に隠れる雪輪の滝にも太陽が昇り始めた。一日に二回も日の出を感じることができるなんて、初めて知った。自然は新しい発見に溢れている。さて、降りて家族に自慢しようかな。


 季節・時刻・天候、滑床渓谷はいつも新鮮な表情で迎えてくれます。いやしの南予博や愛媛にお越しいただく際は、是非とも足を延ばしてください。心までリセットしてくれますよ。

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