薄霧の中で #07心のシャッター

自宅に帰ってきて、10年ぶりに新生児との生活が始まった。
小6さくらと小4まさとは大喜びで甲斐甲斐しくお世話をしてくれる。
夜中の授乳で子どもたちを起こしたくないなぁ、と心配だったが、横にならずに上半身起こした状態での『授乳したまま睡眠法』を会得!(首が座ってからはもちろん添い乳する!)

泣いてても「かわいいねぇ」と思える余裕があるのが、一人目育児とは大違いだなぁと、心から思う。そんな感想を言い合うはずだった夫はまだ目覚めない。

やはり難しいのか。

ケアマネージャーさんがくれた緩和ケア病棟の情報であたりをつけ、申込みを進めなければ。
電話をすると100人待ちという言葉も。入院できる見込みがあるのだろうか。とりあえず面談に来てくださいとのことなので、優先順位的をつけたりするのだろうか。

そんな中、主人の様子を見舞ってくれたお姉さんから連絡がきた。
「今日調子がいいみたい!反応があるよ!」

会いに行こう、みんなで。

晴天の中、新生児はベビーカーにレインカバーをかぶせ、気分だけ無菌室状態に。
子どもたちが学校から帰るや否や、タクシーに飛び乗る。
子どもたちは倒れてから初めての再会である。これまでのパパとは違う姿にショックを受けるかな。反応があるなら、大丈夫かな。
子どもたちの心配もしつつ、もしかしたら話ができるようになったのかと、胸が高まる。

病室に入ると、主人は寝ていた。
お姉さんの話では、こちらの問いかけに頷くような仕草があったという。
がんばって、疲れたのかな。よく眠っている。
「パパ会いにきたよー子どもたちも一緒だよー」

病院着で点滴やらいろんな機器とつながっているパパ。
眠っているとはいえ、様変わりした様子を感じ取ったのだろう。
さくらは無表情で固まっていた。
あの時だと思う、さくらが心のシャッターをおろしたのは。


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