独裁者 小学校編 2話
沈黙を破ったのは担任教師の京子だった。
「世界征服!大きな夢ね!つまり、将来は総理大臣になって日本を変えていくってことなのかな?」
「…………そんな感じです、ふふ!」
「は~い!みんな今日からクラスの一員になる国本制覇くんです!仲良くしてあげて下さいね!じゃ、後ろの方の空いてる席についてくれるかな?制覇君?」
また、返事を返さず頷く。そして空いた席へと歩いていく。
自分の席へと進む制覇を横目に見ながらクラス中でひそひそ話が飛び交う。
「何?世界征服?どういうこと?」
「変なヤツ!」
「ちょっと私怖いかも~~!」
そんなことはまったく気にも止めずに、制覇は空いた席へ着席する。
「は~い!みんな授業に戻るから前向いて!今から今回のテストで難しかった問題の解説をしていくから先生の解説ちゃんと聞くように!」
解説を始めた先生に注目するクラスの中で正義だけは制覇に注目し続け目を離さなかった。テストは満点、問題なんて一つもない。自分の中にある問題は一つ。
そう、この退屈をどうするか!
その答えになるかもしれない。
制覇がこの退屈を解決してくれるかもしれない。
正義はそう考えていた。
「あ~~!退屈!退屈!退屈だ‼クッソ‼」
下校前のホームルーム。
正義の問題は悪化していた。
そう、転校生(制覇)は何も解決してくれなかったのだ。
正義は一日中、制覇を観察していたがついに何も起きることはなくホームルームまで来てしまった。
制覇な授業中はしっかりとノートを取って授業を聞いていた。
一度、先生が制覇に問題を出したがすんなり答えていた。
頭は悪くないようだった。
体育の授業でも特に目立つこともなく中の下という感じの動きで体を動かすのは少し苦手といった感じだった。
昼休みはなどの休み時間は自分の席で本を読んでいた。
本の中身は表紙にカバーがされていたのでわからなかったが特に変わった動きはなかった
平々凡々。見事なまでに期待外れだった。
「朝のあの自己紹介はいったいなんだったんだ!も~~災厄だ!何なんだ、クソ!」
ホームルームが終わり下校が始まる。
「明日からは観察するのやめよう……」
正義の制覇に対する興味は既に無くなりかけていた。
カバンに教科書などを詰める制覇を横目で見る正義。
「正義~!帰りコンビニ一緒に寄ろうぜ!ジャンプ買いに行きたいんだ!」
すると、元木が何も考えずに正義をコンビニへと誘う。
「は~!」
ついため息を出す正義。元木みたいに生きていければと何度思ったことか。元木の単純な性格に憧れていた。元木と仲がいいのはこの憧れが少なからず関係したるんのだと思う。
「なんだ?あんまり乗り気じゃないな!」
そうこうしているうちに荷物をカバンに詰め終わった制覇は席を立ち教室から出て行った。
少し考える正義。そして決断する。
「ごめん、元木!今日用事があって一緒に行けないや!」
「何だ!そうだったのか!じゃ、仕方ないな!またな!」
「ん、また明日!」
元木の誘いを断っり走って教室を出ていく正義。
「何だ正義のヤツ?急ぎの用だったんだな!」
「今日一日は観察するって決めたんだ!下校の様子も観察してやる‼」
結局最後の最後まで制覇の観察を続けることにした。完璧主義。正義の長所であり短所。悪い癖が出ていた。
正義は制覇の下校の様子を観察するために尾行を開始した。
当たり前のことだが一般人が尾行を行う事なんてほとんど無い。正義もそうだ。尾行などしたことは一度もなかった。
しかし、正義は見事に尾行を行っていた。正義に出来ないことは何も無い。それが初めての事だとしてもだ‼
決して気づかれずそして見失わない絶妙な距離をキープしながら制覇の後を追う。
「特に変わった所に寄る様子も無し!は~~やっぱり考え過ぎだったかな。朝の自己紹介は面白かったのにな……」
朝の自己紹介の様子を思い出しながら尾行を続ける。
しかし、この時正義はまだ気づいていなかった。
徐々に周りを歩く人の数が減っていることに……。
そう、人気の少ない道に誘い込まれているということに。
「こんなところに公園なんてあったか?」
それは初めて見る公園だった。
「校区内なら大体の道は頭に入ってるけどこの公園は初めて見たな?自分の家の反対方向だし気づかなかったのかな?この公園を通るのか?」
どうやらこの公園を通り抜けるらしく、公園へと入っていく制覇。
正義も制覇の後を追い、公園へと入っていった。
「……は?」
「どうして!なんで‼」
「いや!ありえない!確かに公園に入っていったはずなのになんで?」
「なんで!なんで!…………いないいんだ‼」
尾行は完璧だった。
しかし、公園に入った途端に消えたのだ。
どこを見渡しても姿が無かった。
正義は制覇を見失っていた……‼
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