もしも私が月に帰れたなら

もしも私が月に帰れたなら

私:もしも私が、月に帰れたなら…
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私:帰れたなら…いや、元々私がどこから来たのかなんて分からない。
私:もしも私が月から来た何かで…
私:もしも、急に帰らなくちゃならなくなって
私:この地球から、旅立たなきゃならなくなって…
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私:急に私がいなくなったら、この世界はどうなるのだろう。
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私:否、どうにもならない。
私:答えはわかってる。
私:私ひとり、居なくなったところで世界は何も変わらない。
私:世界は変わらないかもしれないけど、私の周りの小さな世界は…少しくらいの変化はあるだろうか…
私:居なくなった事でなにか困り事が出てくるだろうか…
私:心配してくれる人はいるだろうか…
私:否、それも時間が経てば薄れるだろう。きっと大きくは変わらない。そういう風にできているんじゃないかと思う。
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私:私は間違いなく両親の子だ。
私:だから、空を飛ぶことも出来なければ、海で生活することも出来ない。
私:どこからも迎えなんて来ない。分かりきっていることだ。
私:嫌なことがあっても、消えることも出来ないし、消すことも出来ない。
私:頭の中で想像することしか出来ない。
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私:満月は綺麗だ…とても綺麗…
私:だからこそ、あまり見るものでは無い…魅入られてはいけない
私:楽しいことよりも不穏な考えが頭の中に浮かぶから
私:綺麗な月明かりは私を照らしてくれるけど
私:綺麗であればあるほど
私:月明かりは、私の心に暗い影を落とすから…
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私:もし私が、月に帰るような何かであれば…
私:すぐにでも旅立って消えてしまいたい。
私:後のことなんてどうでも良くて…
私:とにかく消えてしまい…そんな事を思いながら少し目頭が熱くなる。
私:ジワッと鼻先に込上げる何かを感じながら…
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私:「……ぁ、お腹すいたわ………」
私:空腹が私を月から現実に引き戻す。
私:瞬きをして、込み上げるものを押し込んだら真っ直ぐ前を向く。
私:うん、まだ大丈夫。
私:簡単に引き戻せるうちは、自分の脚でまだ歩ける。
私:「さて…何食べよっかなぁ~」
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私:楽しいことも悲しいことも、辛いことも…
私:心の中では何者にもなれるから
私:今日も私は考える。
私:『もしも、私が……』
私:そして、短い旅が終わると空腹を思い出す。
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私:「さて、今日は何食べよっかな~?」

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