未完成 検査室の友達(仮)

ゆう:「こんにちは。お隣いいかしら?」
楓:「……。」
ゆう:「失礼しまーす。よっと…」
楓:「……。」
0:
0:(少しの間)
楓:私は今、MRI検査の順番待ちをしている。
楓:血液検査を済ませ、地下に降り何度か角を曲がった所にある検査室の前で時間が来るのを待っていた。
楓:着いてすぐに診察券を出し、声がかかるのを待つ。予約時間よりかなりの余裕を持って来たせいか職員すらまだ揃っていないようだった。
楓:(M)気長に待とう、と少しばかり顎を引いて頭を前に傾け目を瞑り少しした頃に…
楓:すぐ傍から、若い女性の声が耳に入る。女性は右から左に移動したようで私のすぐ隣に座ったらしい。
0:
ゆう:「ここは一通り少なくて、機械音がするし、何だか怖いんですよねぇ」
0:
楓:(M)私は目を瞑ったまま沈黙を貫く。
楓:少ししてからゆっくり目を開け、まっすぐ前を向いた。
楓:(M)まっすぐ前を向いたまま、左にその存在を確認する。
ゆう:「ねぇねぇ、あなたはなんの検査??」
楓:(M)この女性が動いても衣擦れの音ひとつしない…声だけが耳に届く。気配がない。つまりは…
ゆう:「ねぇってばぁ〜」
楓:「…」
ゆう:「やっぱり聞こえてないかぁ…つまんないのー…ま、いいや。勝手に話すから!」
楓:(M)そう言いながら私の無反応をお構い無しにベラベラと喋り始めた女性…常にでは無いもののたまに感じるこの感覚、この女性は…この世のものでは無いらしい。
楓:「はぁ…。」
ゆう:「あれ??なになに?どーしたの??ため息なんかついて…って…、つきたくもなるよねぇ。ここで待ってるってことは大きな病気なんでしょ??ねぇ、あなたは何??どこの病気??私はねぇ……私は…」
楓:(M)彼女の話を遮るかのように看護師が私を呼んだ。
楓:「あ、はい。…はい。大丈夫です。よろしくお願いします。」
ゆう:「ねぇねぇ!!私ね!!結構大きな病気してたのよ。手術、何回かしたの。投薬も頑張ったわ!すっっっごく辛かったけど治ると思ってたの!!」
楓:「…(深呼吸する。)」
ゆう:「はーぁ、こんなに若いうちに人生が終わるなんて思いもしなかった…。
ゆう:こんなことになるなら…あの時のイケメン先生押し倒しとけばよかったなぁ…」
楓:「…っゴホッ」
ゆう:「だってさぁ!空いてる病室でナースとも患者とも!取っかえ引っ変えなのよ?!私にだってチャンスあったともわない??」
楓:「いやいや、相手がそいつでいいのかよ…」
ゆう:「ぇ…」
楓:「…あ。」
ゆう:「(満面の笑みを浮かべ)私の声聞こえてるのー???!」
楓:「………あーなんか寒気が…1回戻ろうかな」
ゆう:「まってまって!!いいじゃない!!話そうよ!!何もしないって!!連れてったりしないから!!」
楓:「縁起でもないこと言わないで!…ぁ…」
ゆう:「あんまり大きい声出すと変人だと思われるよ??」
楓:「うるさい…」
ゆう:「うわー!嬉しい!!ここに住み着いてからお話できる人、初めてよ!!」
楓:「住みつくって…こんなとこ、つまんないだろ」
ゆう:「そうよ。そんなに毎日大勢人が来るわけじゃないし…誰も気づいてくれないんだもの。」
楓:「そりゃそーだ。」
ゆう:「だから今日は楽しい!」
楓:「そりゃよかった。心置き無く成仏してくれ」
ゆう:「それは無理よ…」
楓:「……」
ゆう:「なんでここに居るのか私…自分でも分からないの…何となく覚えるのは…この病院の先生でね…闘病中の私の心の支えだったアイドル的な存在のイケメン先生がね!!」
楓:「……」
ゆう:「鼻で笑ったの……自分の容姿考えてみて、って…」
楓:「なんだそいつ…殺すか……?」
ゆう:「いやいやいや、物騒!!」

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