娘氏、生後2か月で鼠径ヘルニアの手術をする②

鼠経ヘルニアの診断から二週間後、検査の日を迎えた。

検査項目は、

  • 小児外科の診察 

  • 採血

  • 入院のオリエンテーション

  • 心電図

  • 胸部レントゲン

  • 麻酔科の診察

の6つ。

お、多い…

診察:ちょこっと触るだけ、心電図:寝るだけ、レントゲン:写真撮るだけ、採血:チクっとするだけ、麻酔科:お話しするだけ……ではあるのだが、0歳児相手にこのフルセットは厳しい。

たった2か月前に、子宮という激狭の世界から下界に出されたばかりの娘には刺激が強すぎるのでは……と心配していたら、案の定、大変でした。

小児外科の診察

経過を観察。病状に特段変わりないことを確認。

本来ならこの後に入院のオリエンテーションだが、娘氏が早くもぐずり出したので、ミルクを飲む前に終わらせなくてはいけない諸々の検査をマッハで済ませることに。
赤ちゃんは息するようにミルクを吐く(言いすぎ)ので、検査に支障が出ないよう、1時間前からは断ミルクなのである。

採血

親は採血室に入れないので看護師さんに娘氏を預ける。数分後、扉の向こうから聞こえるギャン泣き。心が痛むが、本人のためだと思ってぐっとこらえる。

心電図

赤ちゃんの心電図の取り方は、基本的に大人と変わらない。
ただ、冷たいパットを体中に貼りつけられ、数分間あお向けでいるのは0歳児にとって非常に難しい。というか無理である。
身体を押さえつけとけばいいじゃん?赤ちゃんの身体を押さえるのなんて余裕でしょ?と思ったそこのアナタ。
赤ちゃんの危機察知能力は意外と高く、腕など押さえつけようものなら全力で泣き出すので大変なのである。泣いていてまともなデータなど取れるわけがない。

そこでさすがなのが看護師さんの対応。
パッドを付けたら、心電図を計る直前、仰向けになった娘氏の顔の上に音楽が鳴るおもちゃを掲げる。娘氏が気を取られている隙に私がそっと腕に手を置き、ソフトな羽交い絞めをする。その間にさっと看護師さんが心電図の機械をオンに。

鳴り響く森のくまさんと、心電図の機械音。

いい感じにおもちゃを見つめていたが、「くまさんに~出会った~♪」あたりで、娘氏、どうでもよくなってきた模様。4小節しか集中力が持たない女。

それを見た看護師さんはすかさずおもちゃを置いて、手をぱちぱちと娘氏の顔の前でたたいてくれた。満面の笑みで。
あら?とそちらに気を取られる娘氏。わー、赤ちゃん、単純。
検査をしながらも、保育士さんのような対応までできてしまう、看護師さんってすごい……!

胸部レントゲン

赤ちゃんのレントゲンの方法はいろいろあるみたいだが、娘氏の場合は仰向けに寝かせて器具で手足を固定する方法。

器具で……手足を……固定……

どんな反応だったかは説明する必要もないであろう。
いや、ほんと、見てるだけで疲れた。技師さん、笑顔で対応してくれてありがとうございました。

そしてここでようやくミルク!!娘氏、本当にお疲れ様である。
娘氏はミルクを飲んだら即爆睡してくれたので、このまま入院時オリエンテーションへ。

入院時オリエンテーション

入退院の時間、必要な手続き、注意事項等について説明を受ける。
娘氏の入院は二泊三日。手術前日に入院し、2日目の朝に手術、経過を見て3日目に退院をする。

入院の流れは別記事で書くが、このオリエンで正直驚いたのは、付き添い者に対しては食事やお風呂、ベッド等について基本ノーケアであること。
食事は自己調達、お風呂は基本入れない、ベッドは(個室でない限り)子ども用のベッドで添い寝。
旅行で泊まってるわけじゃないし、付き添い者のためにリソースなんてそりゃ割けないわな……とよくわかる。ただ、手術前後の乳児に付きっ切りの中、結構大人のメンタルきつくないだろうか。。

思わず聞いてみる。

「あの、大人用のシャワーは入院病棟にはないんでしょうか。二泊どっちか、15分くらいでも使えたら使いたいんですが」

「うーん、シャワーは基本的に長期入院されているお子さんのご家族のためのものですから。娘ちゃんはたった二泊三日でしょう?入院の前後におうちで入ってきてください」

そうか。
自分の想像力が著しく欠けていたことを実感する。

病院に住むように、長期間入院している子どもたちがいる。
そしてその家族は、同じく病院で暮らすように、付き添いの生活を送る。

子どもも勿論治療などでつらい思いをしているのだろうし、
付き添う大人も、何週間も、何か月も、いやもしかしたら何年も寄り添い続けているのかもしれない。自分の食事やお風呂など、リラックスできる時間を限界まで削って。

子育てという全く新しい経験を通して、私は自分の人生の新しいチャプターを開いたような感覚になっていた。

それは真実だと思う。
生活そのものも、自分の人生における優先事項も大きく変わったのだから。

でも、私の新しいチャプターに書き込まれていたのは、
「うちの子ちょーかわいい」「眠い」「私の時間はどこへ行った」「眠い」「おむつ替えエンドレスすぎる」「授乳痛い」「眠い」「疲れた」「眠い」ばっかりであった。
他の子どもたちやその親御さんがどんな生活を送っているのか、想像し、観察し、自分の頭に書き出すことを、全くできていなかった。

そんなことをストンと実感した時間になった。

……だいぶ脱線してしまったが、
オリエンの最後に部屋タイプの希望を聞かれた。
確か、①4人部屋、②4人部屋(窓側)、③個室の3タイプが選べた。
うちは夜泣きもぜんっぜんあり、他の子たちを全員起こしちゃ誠に申し訳なさすぎるので個室を希望。
料金は3万円/日がプラスされるので、二泊三日だとプラス9万円くらいになる。(ホテルのように泊数でカウントするのではなく、滞在した日数で計算する)安くはないがやむなし。。

部屋は入院当日までわからないとのことだった。

麻酔科

とうとうラストの項目!!
先ほどの採血やレントゲンの結果がもう出ており、まずは結果に異常がないことを確認。

そして娘氏の手術にあたっては全身麻酔が使われるので、その方法やリスク等について麻酔科の先生から説明をしてもらえる。

全身麻酔を使うときは、

  • 数時間前から飲食の制限がある

  • 酸素マスクのようなものを使って麻酔をかける

  • 麻酔をかけると呼吸の機能が弱まる、また筋肉が勝手に動いちゃうことがあるので喉から人工呼吸器を入れる。自力の呼吸はストップさせる

  • 人工呼吸器のセッティング等は麻酔をかけた状態でやるので、赤ちゃんへの負担はない

  • 病院としてもちろん最善を尽くすが、リスクはゼロではないことを理解してほしい。麻酔が原因で亡くなってしまう子どもも、残念ながらいるにはいる(確か0.01%とか)

  • ほんっとにまれだけど、筋肉が融解する(!?どゆこと)副反応を起こす子どももいる

みたいなお話だった。
※以下、日赤のサイトにとてもわかりやすい説明があったので、これからお子さんが手術を受けるときは見てみるといいかもしれないです

硬膜外麻酔とは (jrc.or.jp)

……怖いでしょ。
施術の方法やリスクについて理解をするための場であることはわかっているが、これまでの疲れも相まってか、めちゃめちゃ気持ちが落ち込んでしまう。

「万が一」の「いち」にうちの子が当てはまってしまったら……

冷静に考えれば、んなこと心配したってしょうがないっしょwとはなるのだが、冷静さというのを保つのが我が子のことになると非常に難しい。

最後に「説明について承知したっ!」みたいな書類に何枚かサインをするのだが、ちょっと心の中では躊躇してしまった。

こうして全ての診察が終了。ここまでトータル3時間。
乳児連れで色々動き回るのは大変ではあったけど、
これだけの項目を3時間で終わらせるべく、色んな科の方がスピーディーに対応してくれたことがよくわかった。本当に感謝である。

手術当日まで残り2週間、ヘルニアが急速に悪化しないことを祈って過ごすのみとなった。

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